第四十二話 もう一つの可能性
前回のあらすじ
信用を信用できない。
俺は、叶帆との最低限の付き合い方に切り替えた
さて、絢小町小連の所に行くか
「……」
「……」
沈黙が俺と小連の間を支配する。
ここはいつもの出張診療所。お互いに睨みあって黙りあっている。
いや、どうだろうか。俺を見ているというよりぼーと意識を手放しているだけにも見える。
叶帆がいないと会話もままならないのか。児島先生には悪いがコイツとはもうコミュニケーションは取れないだろう。つまり繋がりは解消だ。
「なあ、小連」
「……」
からからから、と椅子を動かして机の方に向き直ってしまった。
俺はいないと思っているのか、カルテみたいなものを読み始めた。つまり、自分のことをしていた。
頼んだのは俺だ、しかし、呼んだのはお前なんだぞ!
俺は、ペン型携帯のオーロラ仮想液晶画面を横に引っ張って出したりペンに戻したりしている。手持ち無沙汰だから気を紛らしていた。
なんでだろうな。携帯ではコミュニケーション取れていたじゃん。
あぁ、携帯? そうか。
俺は仮想画面に文字を打ち込む、あて先の相手は絶対に読む、だって目の前にいるからな。
送信完了の画面が出た。すると、小連が文字を書いていたペンが震える。
「?」
いいぞ、まずは第一関門突破だ。意識をこっちに向けることが出来た。
ペンを横にしてサブ画面からの着信相手を見る。そしてバッと食いつくように見ていた。
そのまま大事なもののように胸にかき抱いて嬉しそうにしている。
あれ、俺が送ったものだよな。違うのか?
またピロンとなる、そのメールも一緒に見たようだ。しかし。
うわぁ。嫌そう、多分こっちが俺だろうな。そのままペン型携帯を捨てようかガチで迷っていた。
カチカチ、と上の四角形のつまみを回す。見ているからわかるが、書いた言葉を伝えるモードにしたようだ。
カリカリカリカリ。と、沢山書いている?
書いた分だけメッセージを送信するとは限らないが、でも多分俺宛てのメールを書いているはずなのだけど。
そしてサブ画面から送信ボタンを押したようだ。
ぶーぶーと俺の携帯が鳴った。よし、作戦は成功だ。
そして、俺と小連はペン型携帯を使ってお互いの言葉を伝えることになった。
それにしても、衝撃の事実が分かった。俺はまだ来ていないことになっているらしいぞ。
会話文のように話すとすると、
『こんにちは、慎。どうしたの、まだ来ていないけど?』
『そのことはいい。それよりも何が分かった?』
『いいの? どこかに漏れるかもしれないよ?』
『大丈夫だ。あとで知り合いにいたるところに残っているデータを消してもらう』
『分かった。慎の言葉を聞いて自分なりの結論をまとめてみた。でも、これはまだ研究しないといけない分野だと思う。だから、こうじゃないかって半信半疑で聞いてほしい』
『大丈夫だ、お前の好きなように話せ』
『最初、素粒子は一次元だけ広がってヒモ自体は八次元で構成されていると聞いたときからヒモは生まれて初めては何も次元を持っていないと思ったの。だからヒモの素粒子と言われる点、それは次元を超えて力をつけていくと仮説を立てた。素粒子は色々な次元を渡り歩いてそこの次元を少し吸収していく。でも一つの次元しか広がりを持てないから。他の八次元はそれを使って光子などの17種類の素粒子に変わることになると思っていた。でも』
『でも?』
『逆説的に考えてみた、もしかしたら。吸収しているのじゃなく、吸収されたかもしれない』
『つまり九次元だったものが次元を超えたり、何かに奪われたりしたことによって一次元しかなくなったという事か』
『そう。そしてそれは、ある一つの結論が導かれる。次に行く世界は天国、それとも地獄? という論争。一次元が最後にたどり着くのがこの世界なら一の次はゼロということになる。つまり、ゼロ次元、地獄でも何でもないまったくの無の世界に私達は行くのかもしれない』
『吸収されて八つの次元を内包している場合そうなるのか』
『だとしたら、この世界は最後の次元。でも、考えてみてほしい。最後である私達の前の次元があるとしたらその素粒子はどうなっていると思う?」
『どうって、二次元的に広がりを持った素粒子が存在している、のか?』
『≪創造≫は時間などを成分に持つと言われている。そしてこの世界の≪空間≫の成分は縦、横、高さ三つの成分を箱に入れていると思って。つまり時空を肯定するには、単純に増やすなら四つの成分の枠組みを示したり、二次元的に広がった世界とかを作らないといけないかもしれない』
『四つの成分、十二次元か……』
『もっとも、別の答えが出るかもしれないけど。たとえばそう、時間と他の構成次元の関わり合いが違ってきたとしたら。やっぱり、ううん。何でもない』
歯切れが悪いな、ちょっとのことでもいいんだ。時空の本質を知ることが出来ればもしかしたら姉さんを。
も、もうひとつッッッッ!!




