第四十話 提案
前回のあらすじ
俺は出合崎の裏の顔を見ることになる
でも、上手くいきそう。そう言う感じになった所で
一人の男がポケットを探っていた
選考会は午後からなので、午前中は授業に出ることにした。最も、少しだけだ。何でかというとジト目の大学生、絢小町小連がなにかを掴んだらしい。でも、彼女のこと。聞いている分俺の望む答えっぽくなかったし期待半分でいるほうがいいだろう。
だから彼女が使えるかどうかと言えば今のところ使えないと答えるしかない、しかし腕は俺よりあるんだ。経歴から捨てるのは惜しいだろう。
こればかりは、気長に待つしかない。
「矢炭さん、今いいでしょうか?」
おお、珍しい。委員長にすり寄ってこられたようだ。手もみニコニコと、これは何かお願いされるパターンだな。
しかし、俺は忘れない。こいつもいじめに加担していた。証拠がないが確信していた。
さらに言えばこいつ、いじめを黙認するために金を貰ってやがった。
「あんですか、委員長。どうやら嬉しそうですね?」
名前なんて覚えていない。俺は普通を、安定を求めたからこのクラスにいるだけだ。
「そんな構えないでください。矢炭さん。実は私達二年B組クラス運営会は君の功績を評価してこのクラスの在籍料を半額にする特例措置を実行すると決めました」
どや顔である。嬉しいだろう、さあ喜べと言われているみたいだ。
「そりゃどうも」
「さらにさらに、クラスに在籍してくれるのなら他のクラスの授業を受ける講義料も私達クラス会が受け持ちましょう。貴方は私達クラスの誇り、ヒーロー、希望の星です」
読めてしまったよ。世間から評価のためだ。こうして持ち上げて関係各所の交渉を有利に進めると。
もっとも、バカになったつもりでこの提案に乗るつもりでいた。ここ最近、信頼関係が大事だと感じてきていたから。
「そして、君にはこれからも意見を聞きたい。私達のクラスの副学級委員長に任命します。これは君の参加しなかったクラス全員の賛成で決定しました!」
ばっと、九雨を見る。やれやれと言ったように手を挙げていた。
他の生徒は、
「慎、お前についていくぜ!」
「私達、あなたを目指して頑張って死ぬ!」
「おいおい、死んじゃダメだろ」
「当たって砕けるってことです!」
笑い声に包まれるクラス。暖かい、今までとは違ったぬくもりのある関わり合いに俺の冷えた心が、溶けていくように――、
そして、もう二度とこいつらを信用しないで生きようと決めた、言葉を貰った。
「それで、お願いがあるのですが、またあのような敵が来た時私達を守ってくれませんか。あと、叶帆さんの能力は『生成』らしいですね。動画サイト見ましたよ、その力、私達にもこれから貸してくださいね?」
貸せって。その目の奥にあるのは、俺よりも見ている何かがあった。
その目を辿っていく。行きついた先は、必死にノートとにらめっこしている叶帆の姿があった。
その通り、このクラスはこういいたいのだ。
『お前はどうでもいい。武器を貸せ。それで簡単にこの世界で生きていける。今まではその力で無能力でも尊敬されていたんだろ? 俺達にも使わせろ』、と。
気持ち悪いほど、他人から奪うのが様になっている、クラスの笑顔の裏には屈託なく隠した黒さが垣間見えてナイフを向けてられているように感じた。
「布印さん、聞いていましたか?」
「へひぇええ! 聞いていませんでしたぁ」
「叶帆、お前の力を使わせてくれと言われた。それでお金の工面をしてくれるらしいぞ?」
「え、それは……」
顔が引きつった。そうだそのまま断れ。お前達の遊び道具にはならな――、
叶帆はグッと言いたいことを止める。そして、息を吸って彼女の真っすぐな瞳は委員長を見つめていた。
「い、いいです。それがマスターのためになるなら」
俺は、このバカげた提案を否定しようと思った。でもそれが、分からない感情に流されて頭から消えてしまった。
一体どうしたというのだろう。
裏切られたと思った。もういい。次だ。次は上手くやろう。もうコイツに頼らないと決めてしまうほどだった。
それが一番近いと思った。
けど、もっとその答えは違う、シンプルなものにも思えて。
お疲れ様です。申し訳ございません、遅くなりました。
三日目の正直(連続投稿)をやっていくのでお付き合いしていただければよろしくお願いします!




