第三十五話 小学生の行動理由
前回のあらすじ
俺は目立ちたくない
それは変わらないスタンス、なのに。
ちょっと本気を見せてしまった、不味い。
戦いは、無迅先輩が敗北を認めたことで決着した。
いや、こういうのは違うな。話が変わった。
「ということで矢炭先輩のチームと竹夏先輩のチームが合同で私達に協力してくれることになりました~‼ さあ拍手!」
狭い外来用の部屋でパチパチとした乾いた拍手と、はきはきとしている拍手二種類の音が聞こえる、でも実際の空気的に、ほとんどパチパチとした音が大半を占めていた。実凛、無迅先輩以外状況が呑み込めないからだ。
「二人とも~どうしたの~? 戦力二倍だよ? 学園都市最強の一角と今話題のチーム、二組が協力してくれるんだよ~」
「それは、どうしても手に入れたいと思っていたけど!」
「お、お金足りるかな。もともと、そんなに必要ないっていわれたから児島先生にお願いしたのに」
「ま、まあ、あたしはこれでも満足かな。この子たちに協力したいって気持ちは嘘じゃないし」
「そうだろう、俺の機転のおかげだよ? 可愛い可愛い俺のフィアンセ」
「そのままどっかに行けばいいのに。せっかくどっちに転んでも私がマスターを独り占め出来たのに」
小学生三人組に合わせて再月と無迅先輩、それと叶帆がそれぞれの思いを口にする。しかし叶帆、俺を独り占めってそんな約束はしていないぞ。
この依頼は仕事だし、食事は利用しているだけ。他意はない。
「お金は心配しなくていいわ、ほとんどあたし達の負けだから慎にだけ払って。もっともあたしだったら勝利していたんだけどね!」
「殺すな、でも本気を出させてと決闘直前に言ってきたのはフィアンセだろう? 俺は女性には弱いからね」
あれで手を抜かれたらしい。ほんと、最強は伊達じゃない。
しかし、確実に二人には不信感を持たれただろう。セカンドがフォース、それも深層化の威力の攻撃を受け止めたんだ。何かしら秘密を隠していると確信したに違いない。
もっとも、俺もバカじゃなかった。ただ力を見せたわけじゃない。
この力を使うことによって探られている叶帆の超能力を見せなかった。そして生徒会長、あの女が『π』といったことがどこまで彼女達に、ひいては彼女の身近な人間に話しているか確かめたんだ。
結果、ほとんど知らされていないと確かめることが出来たから良しとしよう。
やらないほうが、とも思うが、その時はその時だ。次は上手くやる。
「とりあえずいきなりドタバタしたが、そこの実凛というやつは自分の名前を言ったから知っている、でも二人は知らないんだが。自己紹介をしてくれ。呼びにくい」
「ああ、ごめん。僕の名前は栗数大河だ。体育委員会の元副委員長だった」
だった、て。どうして独立したんだ。
「はい。次は私です。連鶴希と言います。最初に言っておきます、この三人組はかつて体育委員会の重要なポストについていました。私はよく雰囲気が違うと言われますが色々な大会、柔道や小学生の部の四争選などの大会を総なめしました」
嘗めないでくださいね、とでも言いたいらしい。下手に突っついて契約破棄にされてもたまらないので気にしないでおく。
おい、嫌な顔をするな再月、こうなったら一蓮托生なんだ。
そっと、彼女に近づく。デコピンしてやった。
「いちゃい! なにするのよ!」
「敵意を出すな、落ち着け。今は俺とお前は仲間だ」
「君、うちの竹夏といちゃつくなんて、やっぱり殺した方が良かったかな」
「ま、まままままますた。私に料理を作ってと言っておきながら他の人に」
「おい、そういうのは他の所でやれ」
「うんうん、いいないいな~。私も恋人がほしい。はいはい~! 私は体育委員会では委員長をしていました~‼」
と、いうことは生徒会のような組織にいたやつだったらしい。それが敵同士だったと思われる副委員長と一緒に独立の仲間に加わってお互い手をつないでいる。
おいおい、こいつらの目的が分からくなったぞ。どうして今まで育ててきたはずの委員会を捨ててまで独立した委員会を作ろうとしているんだ?
「僕達は何がしたいんだ? そう思っているよね」
「そうだね。特に最初に言っていたけど、体育委員会を抜けるわけじゃないのだろう、はっきりいって下部組織になりたいと言っているその考えがよくわからないかな」
「そこまで力を持っていたのなら、体育委員会の力をフルに使って攻め落とせばいいじゃない!」
さっすが、脳筋である再月の言うことは違う。言い切ったよ。
「僕も最初はそう思っていたんだ。でも、周りはそうじゃなかった」
「ど、どういうことですか?」
叶帆の質問に小学生三人組は顔を見合わせる、言いにくそうに、大河が悔しそうに言葉を絞り出した。
「僕も初め、体育委員会として『放送室』を手に入れて疑似学園都市発の学校を造ろうといったんだ。でも、それをするには『委員会同士の条約』破りで僕達の委員会評価がかなりひどくなる結論にたどり着いた」
つまり襲撃するのはメリットがないってことらしい。小学生は今のままでいいと考えている人が多数を占めていると。
「でも、でも‼ メリットの話じゃなくて僕は小学校を作りたい。僕は、後輩達に小学校を造って学校に通わせてやりたい‼ おかしいんだよ。学校でしか学べないことが沢山ある。委員会同士は憎しみあうんじゃない、協力するべきだったんだ!」
学校を造りたい、か。委員会同士の争いに飽き飽きしているわけじゃない。
学校に通いたい、それは俺にとって小さい頃と重なった。
「もちろん、委員会は自由に学校を造っていいと許可を出す。それに学校を造った委員会が学園都市を支配できるらしいけど、それもいらない。僕の手に余るしね」
「へぇ、分かっているようだ。実質的に学園都市を支配しようとしたら次は君達の敵になるかもしれなかったからね」
「こら、脅さないで。どうせ、『女の子達を守るのは俺だ』と言って上手く取り込むよう私達のブレインにはたらきかけるつもりだったでしょ」
「ありがとうございます無迅先輩、私は貴方についていきます!」
おかっぱ少女はもう前が見えない程デレデレらしい。諦めろ、コイツの女は星の数だ。
「ちょっと目的が弱い。で、本当の目的は」
「放送委員会の彼氏とデレデレしたいんだよね~」
なるほど、それか。
「実凛ちゃん、少し黙ってよ!」
委員会が違う禁断の恋というものらしい。確かに、それは学校がないとできないな。
視線を感じて振り向く、再月がこっちを見ていた、ような気がした。
上手い具合に目線を逸らされた。
そうだな。協力する問題は特にないようだし、小学生相手だ、楽勝かもな。
再月達もいる、さっさと解決して依頼料たんまり貰えそうだ。
お疲れ様です、イイタチイリュウです。
今日も今日とて遅くなり、本当にいつも見ていただいてありがとうございます‼‼
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栗数大河 男の子ではありません。勇ましい名前で男っぽい話し方ですが、男ではありません悪しからず




