第三十四話 一対一
前回のあらすじ
依頼者は小学生三人組だった
彼等との依頼を強引に奪う再月達
でも、戦って勝った方に渡すことに、え?
「では~これから、私達をサポートしてくれる先輩決めの決闘をしていきたいと思います。進行は私、小学六年生の出合崎実凛がおこないま~す。なお、ジャッジとか独断で判断するので私の言うことが正義と思って諦めてくださ~い。やったことないので下手くそで~す!」
対戦しろと言われたとき俺と叶帆は控えたいと言っても聞いてくれなかった。都合がいい? よくて何が悪い、俺が無能力者と扱われないことが問題なんだよ。
俺は白い手袋をはめて『校庭』に移動していた。なお、気持ちは複雑だ。
再月達にせっかくの好条件依頼を奪われるのは悔しい。これは嘘偽りない本音。
しかし、それで戦うことになるのは話が別だった。叶帆の超能力の本質がバレる、そのことが俺にとって一番恐れることだからだ。
この【生成】の力の弱点を知られてしまう。あの事件で俺を嗅ぎまわる生徒が増えたから時間の問題かもしれない、それに。
もう、ランク二の依頼も俺が消化していると知って依頼を邪魔する依頼が増えたとも聞く。そのために稼げるだけ稼がないといけないことになっているのも向かい風だと思っていた。
小学生三人組の二人とニコニコしている校長先生、再月も近くにいる。
今は昼休み、『校庭』近くの食堂を勝ち取った多くの小学生が観客として見ている。
目的はもちろん、この人だ。
「校長先生も粋なことをする。まさか、公式的にこの男を叩き潰すチャンスをくれるなんてね」
キザな野郎は三人がかりでやっと持てそうな氷の剣を地面にズドンと突き刺す、そして主に女の子に爽やかに手を振っている。
この剣は雹穴剣と言われている、雹が取り出されたように丸い穴が開いているからそう名付けられている。
なんでここにそんなものがあるかと言われれば、再月が作ったからだということになるだろう、俺と似たようなことをしているんだ。
そしてやっぱりというか、この対決では最後まで再月がリベンジマッチをすると言って聞かなかった。でも、
「俺がやる、フィアンセがどうして気になっているのか、その本質を知りたい、いいだろう?」
といったら、必死にあたしはあんなやつなんて、とかこれは命令で、とか言い訳を繰り返して頭が爆発していた。
どっちでもいい。と言うかどっちも嫌だ。
「右武最強の一人に数えられる無迅先輩と戦えてとても嬉しいよ。嬉しいだけでお腹いっぱいだから帰っていいか?」
「そんなことを言ってくれるな。俺は今ワクワクしているよ。あの死神事件、私達のブレインが足踏みをした事件を解決したその実力。きっと、俺は君に勝つことが出来たとき、あの事件をブレインは解決できたと学園都市の連中は思ってくれるだろう。二重の意味でこの試合は意義があるね」
「けっこう気にしているらしいな。その性格、介沁先輩とは大違いだ。あの人は恐ろしいほど迫力があった、お前のように小さいことを気にしないと思えるほど近寄りがたい存在だったぞ?」
苦しい顔を作る無迅先輩。彼の奥底の感情で、決して認めたくない差を浮き彫りにされたと思っているのだろうか。
しかも目が座った。おお怖い。
「御託は良い。審判、始めよう」
「は~い。では始めてくださ~い!」
ズサっと、無迅先輩は雹穴剣を天高く持ち上げて両手で頭上に構えた。
し~んと静まる校庭、俺は、攻撃できるスキを見せつけられても動けなかった。
彼のレベルフォースの超能力、【王の一撃】は一回だけ先制で目的の急所に必ず攻撃が当たる力だ。
ここまでなら、そこまで強くないと誰もが思うだろう、先制攻撃させれば後は、超能力を無効化したに等しい。
でも、彼の力と恐ろしいほどマッチしている流派があった、それは、
「一撃流、終枚目、次心不乱――‼」
踏みこんでいく。
一撃流派、その名の通りあらゆる小手先のフェイントを使わず、一撃に力をこめて勝負を決めるあらゆる流派に組み込むことのできるものだ。
矛夢さんの角闘流と対極をなす流派。
それをこの男、無迅先輩は使える、それだけじゃない。
【深層化】で両手が白と黒のコントラストを纏って電気のようにビリビリとしている。
フォースの力を極限まで高めた人だけが使うことのできる【深層化】。これは超能力フォースの更に一段階上の威力を出すことが出来る。
俺に本気で攻撃しているようだ。もう、力をこめた一撃が直ぐそばまで来て俺の頭をかち割ろうとしている。
おいおい、レベルフォースがレベルセカンドに本気を出すなよ。殺す気かよ?
死にたくはない。まだやることがあるんだ。
一瞬だ。
俺の全身から、光の粒が噴き出した。それは、この世界から消えてしまうと感じる、儚く悲しげな光り方だった。
カチン。
ピタ、っと俺は白手袋で彼の大剣を掴んだ。
「え⁉」
「へーすご~い!」
小学生達にはほとんどわからなかっただろう。何かすごい技を無迅先輩が使って力を入れることもなく俺が止めたとしか。
そして、そのすごさにありえないと目を見開いているのが再月で、納得していて嬉しそうなのが校長先生だった。
「ふん。どうやら、あの介沁さんが気にするとはどういうことか、分かった気がするよ」
「そりゃどうも」
彼との決着は意外にも数分で終わることになった。
すみません。遅くなりました。




