第二十九話 不良の委員会、それは
前回のあらすじ
生徒会長、名は令司紫苑という。
俺の事情を知っているのはありがたいが、
やっぱり生徒会は敵だ。
「兄貴、どうしやしょう」
体育委員会が管理している中で一番寂れた体育館の裏、不良崩れが集まるたまり場がある。そこで今噂の男、矢炭 慎について不良たちが話をしていた。
俺は同じことを繰り返さない、次は上手くやるためにこうしてある程度危険な人間に対しては盗み聞きすることをしている。方法は、言えない。
しかしこの会話を調べたのは、もう全部終わった後だった。ハッキリ言う。調子に乗っていた。
まだまだ、俺は目的を簡単に解決できると思っているゆるい意志だった。
「正直いって不良をコケにしている。だが、まだ底が見えねえから手を出しづらい」
「せっかく不良を送り出したんだ、でも委員会共々消えたしな。裏に誰かいるか?」
「でもこのままにしとくと女子どもが騒ぐ。かっこーいとかな」
「ふん。お前がモテないのは顔だけじゃないぞ」
なんだよ、あ、やんのかおらと喧嘩が始まる。
「騒ぐんじゃねえ‼」
不良の頭らしい男が鶴の一声で争いを止めた。
「祭梅、お前はどう思う」
声をかけられたのはゴミ箱の上に乗っている少年である。この少年は祭梅理嗣、不良グループの参謀を務めていてよくも悪くも不気味な男として有名であった。
「俺に考えがあります」
「ほう、いってもみろ」
「先の事件、体育委員会の生徒で四争選に欠員が出ました。それで出場選手を集めているらしいです。そこを、うまく利用させてもらいます」
理嗣は計画を話した。それを聞いた不良達はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべ、動き始めた。
~*~
「おい、なんであいつらがいるんだよ?」
「し、聞こえるぞ」
「副委員長も何を考えているか分からないな」
「ぁぁン! なんだガン飛ばしてきて、何か用かぁ!」
「マ、マスター。どういう事でしょう?」
「知らね。興味ない」
体育委員会の『校庭』である多目的グラウンド。そこには普通、治安の悪い支配地域から出て来ない不良の集団が、授業を受けに来ていた。
やっと、ここにいることの意味を知ったんだろ。そんなやつは腐るほどいるし、別に珍しくない。
問題はゼロを一に出来るかだ。一からがこの世界で生きていくための勝負になるが、ゼロから一はちょっとの心がけ次第。
「マスターは他人に興味がなさすぎます。いつこっちに矛先が向くか分からないんですよぉ!」
小声でごにょごにょと俺を叱ってくる。でも、俺の意識は今回の体育の授業がなにかの方が重要だった。
体育委員会になるやつとは、大抵体育が好きなやつだ。
でも、悔しいことに、その体育を思いきり出来る人間は限られているのが現状だ。
つまり、ほとんどの体育の授業とは、他の委員会がやる体育祭の準備を手伝わされることが多い。
みんなで楽しく野球なんて、夢に出てくるくらい少ない。
「さ~てお前ら、集まったか!」
出ましたムッキムキの体育教師。これくらいぴったりだといっそ清々しい。
「せんせ~、今日はなにするんスかぁ~」
不良の一人が声を出す。その声に反応して、体育教師はとてもうれしそうだ。
「今日か! 今日の授業は特別だ! なにせ、あのやんちゃ坊主共が体育委員会に入ってやり直したいといってくれた素晴らしい四時限目だからな! く、すまん。ちょっと目頭が熱く」
さいですか、きっとこの先生の主な仕事は生徒指導だろう。どうでもいいが。
目に浮かぶ、この内容の授業にするために関係各所に頭を下げた教師の姿。
でも、やった~。今日の体育はダラダラできそうだ。
え? ああ。俺は体育は好きだが、だらだらの方が好きだ。そういう事。
「今から、ここにいる小学生と合同でチームを組んで蹴り野球をしてもらうぞ~! ほら、お前達、挨拶をしてくれぃ!」
『よろしくお願いしま~す!』




