第二十五話 決着 一章エピローグ
前回のあらすじ
レベルフォース
それは敵味方畏怖尊敬する
でも、人ひとり殺せる意味を皆わかってはいない
「誰が意識はないって?」
一つ一つの重い体の死神が俺から吹き飛ばされていく。その勢いで壁にめり込む死神もいた。
俺は傷一つついていない。赤子の手を捻るように防御は簡単だった。
「なんだ、と?」
「知らないのか? レベル差は格差だ。特にサードとフォースでは天と地ほどの差があるんだよ」
「違う! お前、本当に無能力者か!」
「さあ? 普通、能力者が何かしたと思うぞ?」
後ずさる、道士の男。彼のプライドに、得体のしれない恐怖がリアルに纏わりつく。
「それも、なにもかもありえない! ありえないのだ‼ ここにいるのはせいぜいレベルセカンド! 第四種を持っていない奴がレベルフォースの制御をしたことがあるわけがない‼ あるわけがない‼」
レベルフォースを使いこなすためには訓練が必要になる、そのことを言っているのか?
さて、
「一応言っておく。お前の敗因は仲間を仲間と思っていないところだ。俺の知り合いと言っている彼女に昔話でも聞いていれば、無駄な罪を重ねなくて済んだよ」
ピクっと心に巣くっていた不安や恐怖を自覚したようだ。振り払うように、狂った声を出す。
「く、そがぁああああ‼ おい俺の部品! もっと力をよこせぇええ!」
「これ以上無理、私の次元がなくなる」
「しるかぁ! お前の心など、この一瞬見下されたことに比べれば些細なことよ!」
言動が不安定になっている。不味い。超能力者がブレインに干渉し始めている。あの状態になったやつはブレインから力を根こそぎ奪う。ブレインは次元というものが分からなくなり、最悪死に至る。
幼女を助ける義理はないが、殺す憎しみもない、今のところは。
「さっさと終わらせるか」
「殺ス! 死ねぇええええええええええええええ!」
残った死神が道士の男に寄り集まって融合していく。
『グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ま~だデカくなりやがる。駐車場に収まりきらず辺りのビルを削り取っていた。
「へぇ。どうやら次元の質がいいらしい」
というか、これは明らかに道士の男だけの意思が働いているとは思えない。
どうやらあの幼女に、ブレインに捨てられた、逃げる時間稼ぎに使われたらしい。相手側はちょっとした挨拶だったようだ。
真の敵は、あの幼女だった。無意識に髪の毛をぐしゃぐしゃとしてしまう。
「はぁ、めんど」
これは書類と説明を求められるパターンだろうなぁ。
元々道士だった男の手は腕の肉から骨が浮き上がって剥き出しになっている、足は失くなって目は片方黒く塗りつぶされていて、はっきり言って化け物と変わらない。
そして、その融合体の道士は力をこめるために鎌を大きく振りかぶって、
「いっただろ? フォースとのレベル差は絶対だって」
振り下ろされた鎌を拳銃の鎌で軽く受け止めた。
「グ、ギイイイイイイイイイイイイ‼‼‼‼‼」
隙をつくまでもないが、タイミングが良かったので鎌型拳銃の糸を操作してでぐるぐる巻きにしてやる。
抜け出そうとしている。でもそれが出来たらやっていないのだが?
「やれ、叶帆」
――銃暴虎馮河――
かなりの数の拳銃が土から飛び出てくる。無数の糸は無数の鎌型拳銃につなぎ止められていてそれを俺は操る。糸が死神の化け物に巻き付いて拳銃どうしがぶつかる時、暴発を始めた。
それは地面付近で起こる、打ち上げ花火をみているように咲き乱れていた。
壊れたように乱れうち、そして最終的に爆発した。
無数の弾は相手の体に痛々しいダメージを与えている、相手の意識を刈り取るのには十分だったらしい。
死神である化け物の片目が白目に変わる、そしてそのまま地球をベッドにしたようだ。
「そして差とはこういう使い方もある、安心しろ。死にそうな攻撃はファーストに変えてやった」
俺は、手袋の埃を払い、くいっと付け直した。
「すげえ、本当に倒しちまった?」
信じられない、そういう声だった。
そして、ある一人が誰もが望んで、出来ないと捨てていった願いを口にした。
「彼は変えてしまうんじゃ。この学園都市、パラレルを」
「そうなの、私は、期待しているの」
超能力で声を届かせているのはいったい誰だと思った、だから鎌型拳銃を一つ掴み、眠そうな目で『教室』を見上げた。
そこには、なぜか泣いている、先生の姿があった。そして、
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
大きな声で俺をたたえる、会社にいた人々やクラスの生徒達。
暗い表情で見つめるのは、再月と皆大路だけだ。
知ったことか。
しかし、ここまで歓声。今まで生きていて、初めてだ。
俺はやらされただけ。決して最初から助けようと思ったわけじゃないのに。
過ぎたその瞬間をかなり経った後、思いだしてみる、あのとき。あの場所で。無能なのに簡単には出来ない選択をして人を救った。それは誰でもできること、だが。それは人の心を動かす。
何者でも幸せの永久機関を、人の心に作ることが出来る、他人の未来を変えた、出来事だった。
そして未来。高校の卒業式に、この時のことを友加里先生はこういってくれた。
「生徒を助けてくれたことよりも、あなたが行動を起こした。それがなによりうれしかったの」
着物姿の先生は涙をぬぐいながら、肩に優しく手を置いた。
俺は『もう、肩を潰せないですね』と言ってやったよ。




