第二十一話 正義
前回のあらすじ
小連には調べて欲しいことがあった。
起点創造空間、え? そのものの能力者に会えって?
会えるといいな。マジで。
「ぐああ!」
疑似学園都市の暗い路地裏に構える事務所、そこに十人ぐらいが暴力に屈して倒れている。
「お、お前。俺達を相手するなんて。わかっているのか⁉ 俺達は体育委員会の傘下にいる、ここを潰すということは体育委員会を敵に回すという」
「許可は取った」
黒いフードを被ってそう答える。
不良を雇ったとされる委員会は精神的に追い詰められていた。
超能力なのか、純粋にどこかの流派なのか委員会の連中は分からなかったようだ。でも、その一つ一つは戦闘意識を奪っていく。死人はいないが、この委員会の部下達はとうぶん起き上がっては来られないだろう。
しかし、さすがはこの委員会のリーダー、なけなしの勇気を振り絞って相手を揺さぶろうとしている。
「こんな危険な襲撃にブレインがいないということは超能力者でもない! それなら、無能力者が超能力に勝てるわけがない! 怖くないのかよ⁉ ここから消えるだけだから俺達は殺す気でやっているのに‼」
「負けている奴が言うセリフじゃない。そもそも、覚悟が違う。俺は死にそうになっても助けてくれと頼まなかったから」
「お、嘘、だ! この夢の国で、遊び感覚の保険を捨てているなんて!」
「遊び感覚のやつは、お前達ぐらいだろうな」
暗闇に溶けていった、襲撃した俺の笑う顔。
夜の学園都市に悲鳴がこだました。
次の日、叶帆がちょっと困ったようにニュースのことを聞いてきた。
「マスター、体育委員会傘下の委員会が昨日一つ解散したらしいです」
「そうか。それがどうした?」
「確かマスターは、昨日委員会を潰す許可を貰っていましたよね? それに調べてみたら、その、私に不良を差し向けた可能性のある委員会です」
「そうか、よかったな。これでもうあいつらはちょっかいを出せなくなった」
「はい。そうなのです、けど」
「副委員長にも言わないといけないな。もう仕事がなくなりましたって」
「ですよね、偶然ですよね?」
「ああ、お前がいない時、超能力者達に無能力者の俺が勝てるわけがないだろ?」
そうだ、結局俺達の生活は変わらない。
いじめの原因を作ったのは、その委員会かもしれない。
でも、それがこのいじめを終わらせる転機になることはないだろう。
通り過ぎる、生徒達を見ていればわかる。
この冷たい目は一生無くならない。暴力では、俺達の評価は変わらない。
空を見上げる。
なぜか、嘘みたいに見えた虹が解決策を予感しているようで、なんの冗談、と笑ってしまった。
「ここを潰す、いいだろう。肩慣らしにはちょうどいい」
「期待はしてない、でも、せめて彼の半分の力は出して」
人形を抱えたゴスロリ女の子がポツリと呟く。
このコンビ少しおかしい、と俺がことの顛末を先生等から聞いたとき門衛が言っていたらしい。
なぜか、簡単だ。幼い少女ともう四十歳はいっていそうな二人組がこの疑似学園都市にいるからだ。
親にしてはその関係がいびつに見えたのだ。
そんな中、門衛の自分を無視してぬいぐるみを持った幼女が会社に入ろうとする。
「ちょ、ちょっと君学生かい? 見ない顔だけど委員会はどこ? 許可貰った?」
「黙っていろ」
そこで門衛の記憶は途絶えた。何が起こったかはこれから俺が話す。
「それで、人は力を合わせることによって人間を超えることが」
小島先生の授業中、だった。
「ねえ、あそこ」
俺は授業を寝ながらさぼっていた『教室』、その会社に男女の二人組が駐車場の中心にいるのを生徒の一人が目撃した。
こっちに顔を向けている。男の顔は髭をたくわえ、さながら黒い服を着ている道士と呼ばれそうな風貌をしていた。
「おい、あれ!」
道士が二人に分かれていく。
次々と、火が付くようにみんなが見始めると、それはさらに分かれていき数十、いや、数千数万と道士だったものがもやもやとなり形が変化していく。死神に。
「きゃぁあ‼」「うわっつ‼」
死神が会社に侵入して人を襲い始める。
騒ぎはすぐに大きくなった。教室に籠城する判断をした先生もいれば死神に立ちむかっていく先生もいる。もう周りは混乱状態だ。
「あたしたちも先生に加勢するわよ」
といったのは再月である。超能力者にとって未能力者を守ることは当然の義務だと思っているからだろう。
というか、この教室にまだいたらしい。てっきりもう俺に関わりたくないと思って自分の委員会の教室に戻ったと、思っ、た……。
なるほど、理由は凄く偽善的だった。皆大路が、体育委員会でいじめを止めさせた勇気を評価されてこの教室でチヤホヤされているからだったようだ。
つまり、皆大路の肥太った自尊心を満たすためにいる。
「待ちなさい竹夏! 私を守らない気‼」
そう皆大路は見捨てるの? というような顔で叫んだ。
「だ、大丈夫。教室の中にいれば……」
「大変。会社にある別のクラスに死神がなだれ込んだんだって。先生と能力者が防戦しているけど、もつかどうかギリギリな状況らしい」
そうテレパシーの能力者が不安をあおる。
「ほら、竹夏、ここにいて。私が危ないの」
そう麻希は身をこわばらせながら言った。
「でも……」
「ブレイン命令です。竹夏、ここにいて私を守りなさい!」
そう麻希は大きな声でびくびくして体を丸めていった。
おいおい、あの天下のブレインさんともあろうものが、怖気づいたようだった。簡単に再月なら倒せるはずなのに。
そう皆大路は、自分の身が可愛いかったのだろう。他の再月以外の仲間がいないから思い切った行動も出来ない、腰抜け野郎になっていた。
彼女の体育委員会にいた膿を掃除したとされる名誉も、泣いていることだろう。
「わかりました」
悔しそうに再月は何もできない自分を呪っているのか、強く拳を握っていたらしい。
俺? 俺はその時寝ていたよ?
お疲れ様です。イイタチイリュウです。
今日は何話か投稿していきますのでよろしくお願いいたします。
ブックマーク、評価、感想などお待ちしています。




