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第十九話 保健委員会姉妹校の変人

前回のあらすじ

井鳥矛夢、

角闘流(ディレイラグ)を使う師匠だ。

俺はその姫様に提案を申し込んだ

「ありがとう! ほんとおうにありがとううう!」



「いえ、気にするな」



「気にするなだって? あの暴力女から助け出してくれたんだよ⁉ これは生徒会長に話しておく。期待してくれたまえ!」



 泣いて感謝してきた。そもそもこいつにどれほど影響力があるんだよ? こんな弱いやつ、絶対下っ端。


 生徒会長にお前自身が会うだけで精一杯のはずだろう?



「……」



 そんな俺達をジト目で見る、保健委員会の姉妹校に所属している白衣大学生。



「わるい、声が大きかった。小連」



 ぷい、っと顔をパソコンの方に向けて目線を逸らされた。ここは保健委員会が所有した、

『保健室』の代わりにされている移動する仮設診療所の中だ。


 そうだよ。病院は入れてくれなかった。それがコイツの立場をものがたっているよ。金は払うと言ったのに、『今病室がいっぱいで』なんてありふれたことをいいやがる。


 代わりに紹介されたのはこの診療所。でも運がいいことに知り合いが運営していた。


 こいつも感謝するだろう、今以上に体の調子が良くなること請け合いだぞ。


 彼女の名前は大学二年生の絢(あや)小町(こまち)小連(これん)。俺の専属である超能力関係のサポートを担当している生徒だ。そして医者の卵でもある。


 しかし、絡み始めてから彼女と喋ったことはない。だから会話でコミュニケーションを取らない医者なんて必要ないんじゃと始めは思っていた。でも、



「小連さん。どうですか、この方の体調は?」



「全然大丈夫、どちらかというと心臓が嬉しそう?」



 ま、さか。こいつエムだったのか。語られる下っ端の性癖。


 小連は男とは喋らない。女性としかコミュニケーションを取らないがそのサポートは上から数えたほうが早いほどの腕前の生徒だ。


 そもそも、医者の勉強をしながら超能力の調整の勉強を同時並行している時点でかなり凄い。


 どうして知り合いになったかって? あの敏腕先生にお願いされて俺の超能力のサポートをしているんだよ。


 ここで役に立つのは叶帆だ。彼女が通訳しないと話が進まない。



「待ってて、一応彼のブレインかサポート担当に連絡を入れてくる」



 さっきの戦闘で彼が超能力者だとわかったからそれを伝えていた。軽々しく調べて面倒事に巻き込まれるわけにいかないから当然だろう。



「感謝するよ、君。でもいい。というか、しないでくれたまえ」



「……」



 無視して歩き出す、聞こえていない、はずはないのだが。



「‼ 君、待ちたまえ!」


 ガチっと俺は彼を引き留める。



「病人は寝ていろ、な?」



 親切心だ。決して面白くなりそうだとは思っていない。



「ま、待ってください。彼女達に連絡すると俺の命がぁ!」



「……」



 出ていく直前チラッと小連は生徒会のメンバーを見たが、すぐに興味が失せたように外に出ていった。



「日本語に慣れていないのか? カムバーックゥウウウ!」



 残念だが、彼女は日本語が分からないんじゃない。男という存在がわからないんだ。


 心が折れた? しくしくと布団をかぶり現実逃避を始めたよ。


 五分ぐらいたったぐらいか、ガラガラと扉を開けて戻ってくる。



「すぐに来る」



「すみません。ありがとうございます」



「これくらい、当たり前のことよ」



「ありがとう、小連」



「……」



 俺には反応しない。さっきの目を逸らしたことさえも大きな反応でビックリしたぐらいだ。これが、彼女との普通。

 普通、あれ、あぁ? 見てはいけないものが見えてしまった。



「叶帆、緊急事態だ」



「どうしたんですか、マスター」




「俺は不可抗力だからな。決して見たかったわけじゃない」



「もう、いったいどうしたんですか?」



 俺の目線をたどって、緊急事態の理由に目を合わせる。俺は耳を塞いだ。目も塞ぎたかったが、叶帆の声の大きさ、会話を聞くことの方が危険だと判断した。


 目は閉じればいい、そうだな。あまりにも急で頭から抜けていた。でも、目を塞いだら解決したか分からないだろ?



「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ 小連さん。また忘れていたんですかぁ‼」



「? どうしたの?」



「あれほど気づいたらすぐにしてくださいって言ったのに。下着の紐が緩くなっていることを忘れて――」



 ここまで聞いたところで目をつぶり耳を更に強く抑えた。さっきまでの力では声がどうしても耳に入ってしまったからな。叶帆の大声が。


 小連には一つ残念な所がある。それはやろうとしたことを後回し、つまり何か一つ重要なことを忘れてしまうのだ。


 今回は緩んだ黒色のパンティを捨てるのを忘れていたらしい。残念ながら今日の服装、白衣の中のチョイスはスカートだった。よって下着が足に纏わりついて脱げかけている。


 ふつう歩くときにすぐ気が付くだろう、まさか、脱げていたことも忘れたのか。


 少し、目を開けた。ちょっと状況を確認しようとしただけだ。


 目が合った、わなわなと恥ずかしそうに顔を赤くしている小連に。


 大きく、それはもう大きく紅葉模様をつけられたんだけど? いってぇビンタ。


 少し空気を吸おう。俺はさっさとその場から退場することにした。


 あと、生徒会の下っ端は鼻血を出して倒れていた。


 よかったな。そのまま、出血多量で死んでしまえ。



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