第十四話 戦わない
前回のあらすじ
客はわらわらと、気持ちはじくじくと。
弱さと強さが同居しているとよく言われる。
そして現在に至るという話である。
「私たちはチーム慎&叶帆ペアに1対1の決闘を申し込みます」
目を見てわかった。どうやら負けると思っていないらしい。
ブレインの皆大路は決闘の前口上を述べる。素晴らしく自分の都合を押しつけるのが上手い。賞賛してやるよ。
「俺、戦う意志とか持っていないけど」
「うるさいうるさい! 能力を使った巧妙ないじめは許さないんだから。あたしたちが勝ったら彼女達を解放しなさい‼」
再月がみんなに聞こえるように大きな声を発して言った。
「いじめとは人聞きの悪い。立派な訓練ですよ。超能力者になるね」
「それで女の子を泣かすの。いったいどれだけ泣かせば気が済むのよ‼ 他に方法は、沢山あるはずでしょ‼」
再月は敵意むき出しの顔をして怒鳴りつけてくる。
「どれだけ泣かせれば……ね」
俺は叶帆の付き物の落ちた顔を眺めて少し考える、そして再月を見て言った。
「俺、矢炭慎は負けを宣言します」
スッと溶けていく、しかし大きくドームに響く声をあげて言い切った。
それは辺りをシーンと静かにして、数秒過ぎると怒声があちこちから飛んできた。
「おい。どうなってやがる」
「せっかく面白くなると思ったのに」
「負けを認めたらハイ終わりってこと?」
と外野がヤジを飛ばした瞬間、ドンと爆発が辺りを包み込んだ。再月がその力を使い、辺り一帯を火の海に変えたのだ。
「アンタはそうやって、人に多くの迷惑をかけても飽きたらポイ。そんな人間なのね。やっとわかったわ。叶帆さんも災難よ。そんな人間にこき使われているんだから」
再月は頭に血が上っているようだ。俺が反省していないのが信じられないらしい。
「そんなお前も少し冷静に考えて欲しいんだが。お前達の言う通り彼女達を解放するんだぞ?」
俺がやれやれといった態度をとった次の瞬間、
炎の剣が俺の首筋に止まっていた。空気が燃えて剣の形をとっているのだろうか。難しくてどうなっているかも分からない現象だった。
「おいおい、熱いんだけど」
「勝負しなさい。今ここで。あんたの連れの叶帆とあたしどちらが強いか。それで主張を認めさせてみなさいよ!」
「残念。叶帆は寝たら地震でも起きない。四争選がある来年まで待つんだね。もしかしたら選ばれるかもしれないし。まあ、なれるかわからないけどね」
そう、俺は笑みを浮かべて叶帆をお姫様抱っこして寮に歩き出す。見えないが背中から特大の炎を壁に叩きつけた音が聞こえた。彼女は悔しくて理解されてなくて、でも自分の言葉は間違っていないとでも思っているのだろう。
しかしそのまま、見送ることしかできなかった。
そうだ。お前は正しい。
だけどな。正解だけの道しか歩けないのなら、間違いは何のためにあるんだろうな?




