第十話 ブレインの仕事
前回のあらすじ
超約、ブレインと能力者を繋ぐものだ。
でも、慎は考えることがあるようで。
「私達が超能力者に‼」
不良少女が大きな声で嬉しそうに叫んだ。
俺は超約の相手として不良少女達を選んだ。彼女達は運がいい。その理由は超能力者がブレインになるよりも難しいからだ。
なぜなら、たとえ超能力者がいなくてもブレインというものは訓練するとブレインと名乗れるが超能力者は好き勝手超能力者といってもなっているわけではない。能力が発現していないからだ。
それは、ブレインは所構わず声をかけて能力者にすればいいだけなのに、超能力者になりたい者は声がかかるまでなれないということ。ブレインに逆に声をかけてもいらないといわれればそれまでだから。
ブレインになるよりも超能力者になりたいと思う風潮が広まっている。理由は言わなくてもわかるだろう。無能力者より超能力を使いたいという人が大勢いる、ただそれだけの理由である。
「そうそう、今なら君たちの望むレベルまで引き上げてあげるよー」
まだまだ詰めないといけない話はある。超能力者になるためにはブレインとの交渉が不可欠。この世界は所詮お金で回っている世界、ただで超能力者になれるわけではないのだ。交渉次第で超約する金額が変わる。
ブレインも一筋縄ではない。お金で繋がっていないと生活できない。
しかもパートナーとして無能力で一緒に危険な依頼を受けなければいけないこともある。これが意味するところは危険な依頼の準備をその超約のお金でやりくりしないといけないことをあらわしているのだ。まあ、危険じゃない依頼もあるが。
「はいは~い。なら私最強のフォースがいい」
「ちょ、なら私も‼」
「もちろん俺もな」
「分かりましたーでは頭を下げてくださーい。超約するので」
俺は我ながらベタな展開だなと思いつつも能力付与の超約をする。能力付与はいたって簡単だ。次元を人間許容量以上に、纏めるだけ。
つまり応援している感じで頭に手を乗せればいい。それで、超約相手の思う通りの能力が付く時もあるし付かない時もある。
「すげぇ! お前見えねえぞ‼」
「マジですか! あざっす‼ あねさんはどうっすか?」
「俺か? 俺はな、見ろ。こんな学校の壁、簡単に壊せる!」
「私も飛べますよ‼」
超能力者になった三人は能力を思いっきり使っていた。一人は自分の望む物を全て透明化し、一人は全てを破壊、もう一人は飛行能力だろうか。どうやら彼女達は世界を手にするかもしれない力を持ったらしい。
だがなんとなく曲芸士のようにバカっぽいのは気のせいだろうか。
「どうでしょう。素晴らしいでしょう。契約は無期限。利用金額はなしです。これからお願いしますね~」
「マジで‼ やった‼」
「ねえ、これ使ってさ~あいつと遊んでやらない?」
「それいいですね‼ どんな風に遊びます?」
「例えばさ、空に持ち上げて地面ギリギリでキャッチとかどうよ?」
「いいっッスねそれ‼ その後あねさんの力であいつの服の下どれだけ濡れているか調べてみてもおもしろいかも」
「ちょっと! 私にも噛ませてくださいよ‼ 」
あはは、といいながら不良少女達はどうやって叶帆をいじめるか相談しながら自分のクラスに戻っていく。おそらくクラスに自慢するためだろう。超約さえすれば超能力者になるのは簡単だし、自慢できるほど尊敬される人間だしな。
「かわいそうにな。叶帆のやつ」
叶帆の辿る運命はこのまま彼女の思うとおりだったら悲惨になるだろう。だが俺に同情の気持ちはなかった。明日が来るのが待ち遠しい。その一言である。俺は笑顔を浮かべながら彼女達と同じように教室に戻ろうとする、
「待ちなさいよ‼」
そういって怒気を滲ませて引き止めてくるのは我らが……、いや言わなくても分かるだろう。
俺は後ろを振り返ることなく、話しかけていた相手、再月に当たり障りもない返事をする。
「どうした?」
「どうしたもこうしたもない‼ 見たわ! なぜ彼女達を仲間にしたのよ? 彼女達と叶帆ちゃんはそりが合わないってことぐらいアンタは理解できるくせに‼」
どうやら、後ろのきれいごと大好きさんは俺のやることが気に食わないらしい。別にこの場はこちらもきれいごとで返せばこいつを黙らせることは可能だろうが、俺はそこまでこいつにはお人よしではない。つまり、俺が吐く言葉は一つ。
「お前には関係ない」
バッサリ切ること。
「なっ……関係っあるわ。あたしはあの子の友達なの!」
友達、か。友達とはなんだ? 一緒に帰れば友達なのか、それともいじめから救ってやったら友達なのか。
難しい塩梅だな友達ってやつは。
「友達、それ叶帆が言ったのか? それともお前の思い込みか? まあ、『あの子』といっている時点で友達扱いしていないようには感じるけどな」
と言い返したら真に受けたらしい。背中越しでも狼狽している声が伝わってきた。
「そ、そんなの言葉のあやよ。少なくとも、後先考えてないアンタよりはましなんだから!」
確かに。もしかしたら俺はこの結果がもたらすものに余り関心が無さすぎるのかもしれない。自分のことも叶帆のことも、彼女らのことでさえも。ここはテストも近い事だし、大人しく寮でゆっくり休養することにしよう。どうせ出席日数は足りている。
「わかった。なら俺、明日から休むわ。何も考えていないやつは邪魔みたいだからな」
「はぁ?」
「あ~あと、明日スカートの下、体育ズボンでも履いた方がいいぞ」
「な、何言っているの!」
「希望としては冬服が一番いい。」
でまかせで言っただけだ。
しかし、昨日の授業の様子を叶帆に聞いたところ本当に冬服で着たらしい。もうすぐ夏なのに、すごい勇気だ。
それをクラスにいる生徒は気にしないふりをする。ここで馬鹿にしたら、かならず手痛いしっぺ返しを食らうのが分かっていたのだ。キレやすいのも特徴だからである。
さり気なく聞いた生徒によると、気分転換よ、と言いながら頬を赤くしたらしい。
クラスの情報屋の生徒はピンときた。しかし、それを探る前に一時間目が来てしまった。
そして、それは彼女の冬服の理由を明らかにするものになる。




