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女子高の文化祭で始まる恋  作者: 柊聖月


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9/15

安奈の誕生日と大和のバイト

大和は文化祭が終わり、忙しかった毎日も少しだけ落ち着きを取り戻していた。


ただ、来月には絶対に外せない大切な日が待っている。


大和が高校一年の夏休みに始めたバイトは、一眼レフカメラを買うためだった。だが、その時の仕事ぶりを見込まれ、夏休み以降も週末のバイトに通うようになっていた。


バイトのおかげで、高校生としてはそれなりにお金があった大和だったが、高校二年の時に立ち上げた【アニメーション・イラスト制作クラブ】の活動費は思った以上にかかり、バイト代はすべてクラブ活動に消えていた……。


初めての文化祭に懸けていたから後悔はないけれど、今は手元にお金がないのが痛かった……。あと一ヶ月……。どうしてもお金が必要だった大和は、週末のバイトに一層励むしかなかった。


来月は安奈の誕生日がある。


先週の文化祭で「大好きな彼女」という安奈のイラストを本人に見られ、大和は勇気を出さざるを得ない状況に陥っていた。


だから、誕生日のプレゼントを渡すときに告白する覚悟を決めていたのだ。


数日前、大和は地元で有名なアクセサリー雑貨店「チャム」を訪れていた。店内に入った瞬間、一面の煌びやかな雰囲気と女の子だらけの空間に圧倒され、かなり恥ずかしい思いをしながらも、安奈へのプレゼントを探すため勇気を振り絞っていた。


すると、珍しい男子学生の来客に店員が声をかけてきた。


「何かお探しですか?」


「え、ええと……彼女へのプレゼントを……」


「素敵ですね……。どんなものをお考えですか?」


「まだ決めてないんです……ただ……」


大和は店員に相談しながら、安奈へのプレゼントを見繕った。


大和の心の中で決めているイメージはあった。


(佐藤さんは、可愛い系のコーディネートもするけど、実はシンプルでシックな服がとても似合う。それに、そういう時はすごく大人びた感じになるから、それに似合いそうなアクセサリーを探すんだ)


大和の目に留まったのは、スターリングシルバーのネックレスだった。高校生にしては少し高価なプレゼントだったが、安奈の17歳の誕生日、女の子から女性へと変わっていく彼女への贈り物にしたくて、購入を決めて予約した。



−週末のバイト先−


「今日は暇だね〜。大和君、今日はもう上がって良いよ」


「女将さん、餃子のネタ作りとかメンマ切りとか、海老のワタ抜きはありませんか?」


「こんな暇な時にあるわけないでしょ?」


「だ、だったら掃除とか……」


「……なんだい、何かあるのかい?」


大和は仕方なく、女将さんに事情を説明した。


「あら、そういうことなら掃除してもらおうかね。もうすぐ保健所の査察があるんだよ。普段手の届かない所を頼めるかい?」


「はい、分かりました!」


それから大和は、換気扇の裏や排水溝など、普段手をつけない場所を中心に徹底的に掃除しまくった。油物を扱う中華飯店の換気扇にはとてつもなく油がこびりついていたし、排水溝からは凄まじい匂いが立ち上っていた……。


(うひゃ〜、臭っせ〜! ラーメン屋の裏側ってすげ〜んだな……)


さらに、棚の奥にあった甘味用のあんみつの缶を見つけて大和は焦った。すでに賞味期限が切れていて、放置されていたのだ。女将さんに報告して新しい缶と交換してもらったが、もし保健所に見つかっていたらかなりヤバかったはずだ。


「大和君、かなり徹底的に掃除してくれたのね」


「やり始めたら、あちこち気になっちゃって」


「こんなに綺麗になったのは久しぶりだよ。お疲れ様」「いえ、仕事をいただいたこちらがありがたいです」


「そうかい? ご褒美だよ。ほら、特注チャーハンとラーメンのセット。食べていきな」


「ありがとうございます、いただきます!」


女将さんの配慮もあり、今月は安奈へのプレゼント代を十分に賄えるバイト代が入った。


大和は「チャム」へ向かい、支払いとスターリングシルバーのネックレスの受け取りを済ませた。


そこで店員が、一言助言をくれた。


「ネックレスと一緒に、お花はどうですか? 薔薇なら鮮やかですし、かすみ草ならこの黒のラッピングにとても合いますよ」


「薔薇は高くないですか?」


「一輪添えるだけで十分綺麗ですよ」「へえ……そうなんですね」


「数軒先に花屋さんがありますから、頑張ってくださいね」


「あ、ありがとうございます!」


その夜、大和は安奈に電話をかけた。


「佐藤さん、明日学校が終わったら、夕方会えるかな?」


「え? 良いけど、少ししか時間ないよ」


「うん、大丈夫……。じゃあ5時に」


「分かった」



待ち合わせは、いつもの安奈の家の前。


大和はネックレスに小さなかすみ草を添えて、寒空の下で待っていた。


(あ、大和君、もう来てる……)


二階の部屋から外を見ると、大和が寒そうに立っているのが見えた。


安奈は急いで上着を羽織り、玄関を飛び出した。


「ごめん、大和君……」


「あ、いや、まだ時間前だから」


「で、何?」


「……佐藤さん。……いや、安奈。17歳、おめでとう。これ、プレゼント……スターリングシルバーのネックレスなんだ。気に入ってくれると嬉しいんだけど……」


大和は真っ直ぐ安奈を見つめ、両手でネックレスの入った小さな箱とかすみ草を差し出した。


「え……?」


安奈は驚き、思わず両手で口元を押さえた。


大和が振り絞った初めての勇気と、そこに込められた真っ直ぐな想い。嬉しさと愛おしさが胸いっぱいにこみ上げてくるのを、安奈は感じていた。

本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。

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