↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高の文化祭で始まる恋  作者: 柊聖月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/15

バレンタイン、想いを伝える朝

高校一年の秋、文化祭で大和に告白されたけれど、最初のバレンタインデーに安奈はチョコをあげなかった。あの日、自分の中で「大和くんが好きだ」という確信が持てず、気持ちの整理ができていなかったのだ……。だからと言って「義理チョコ」で済ませるような関係でもないと思っていた。


でも、朝デートや交換日記のような手紙のやり取りを重ねて、大和の優しさに触れてきた。そしてあの夜……電話で相手を間違えたとは言え、姉にはっきりと「好きだ」と告白もしているし、何より彼の文化祭では自分の絵に【大好きな彼女】なんてタイトルまで付けてくれていた。


もう迷わない。私、大和君が好きだ。


だから今度のバレンタインデー、チョコを渡して自分の気持ちを伝えよう。大和君はお姉ちゃんにはっきり「好き」と言ったし、文化祭であんな絵も描いてくれたんだから。大丈夫……、きっと受け取ってくれる。


週末、安奈は地元商店街ではなく、電車で一時間ほど離れた街のデパートに向かった。そこには有名な老舗デパートがあり、大きなバレンタインの特設コーナーがあるからだ。


「うわあ、いっぱいある……あ、これ可愛い。あ、こっちは大人っぽい感じ……。大和君、どんなのが良いかな〜」


安奈がソワソワしながらチョコを探していると、店員が声をかけてきた。


「バレンタインチョコですか? 差し上げるお相手はどんな方か伺ってもよろしいですか?」


「えっと、まだはっきりお付き合いしてないんです。だから、きっかけにしたくて……」


「でしたら、こちらがお勧めですよ」


示されたのは、手作り用のキットだった。


「難しくありませんか?」


「大丈夫ですよ、こちらのレシピ通りにしていただければ」


「……ちょっと見てからで良いですか?」


「はい、ゆっくり確認してくださいね」


安奈は手作りキットを2セット購入した。


帰宅後、姉の杏里に助けてもらいながらチョコを作った。


「お姉ちゃん、ちょっと手伝ってもらいたいんだけど、いい?」


「まあいいけど、なんで2つあるんだ?」


「ひとつはお姉ちゃんと一緒にする練習用。渡すチョコは、私だけで作る本番用」


「でもさ、結構手間かかるよ、これ」


「分かってる……それを選んだんだから」


「なるほどね〜。安奈、必死だね〜」


「う、うるさい!」


杏里は、安奈を手伝いながら思いを馳せた。


(安奈も本気になったんだ。大和くん、優しいしな。私を安奈と間違えて色々話したから、よ〜く分かる。安奈、頑張れ)




安奈はレシピと睨めっこをする。


『生クリーム、はちみつを鍋に入れ、中火にかけて木べらで混ぜる。沸騰したらすぐに火を止め、火から外して細かく刻んだチョコレートを入れて静かに混ぜ、なめらかになるまで溶かす……』


「お姉ちゃん、中火ってこれで良かった?」


「火の先が鍋底に少し触れるくらいだから、良いんじゃないかな……。焦がさないようにしっかりかき混ぜるんだよ」


「わ、分かった」


型に入れて、冷蔵庫で冷やして……。


いつもの家庭科の授業とは違う。絶対に失敗はできない。安奈は「思いを大和君に伝えるんだ」と、チョコに願いを込めていた。


そして、二月十四日の朝。


いつものように、短い朝デートが始まった。


「おはよう、今日寒くない?」


「そうだね。でも自転車漕いでるとすぐに暑くなって汗出るけどね」


「え、寒くないの?」


「うん、学校に着く頃には汗だくだよ」


「そう、なんだ……」


安奈は急にソワソワし始めた。


「どうかした?」


(いつ、切り出したら良いの? まずい、どうしよう……!)


「あ、ヤバい、そろそろ行くね。また明日!」


大和が自転車を漕ぎ出そうとした瞬間、安奈は慌てて引き留めた。


「待って!!」


「え? 何?」


心臓が飛び出すんじゃないかと思うほど緊張しながら、安奈は声を絞り出した。


「あ、あの……これ……!」


大事そうに鞄から取り出したラッピング箱を、大和に差し出す。


「え、これって……」


「う、うん、バレンタインのチョコ。頑張って作ったんだ」


「え、手作り!?」


「うん……! これからもよろしくね、じゃあね!」


安奈は顔を真っ赤に染め、逃げるように学校へと走り出した。


小走りで去っていく安奈の背中に向かって、大和は叫んだ。



「安奈〜! ありがとう――!」


大和は生涯で初めての本命チョコをもらった。


それも、安奈から。


大和は溢れ出す喜びとハヤる気持ちを抑えきれず、ニヤニヤ顔を隠せないまま学校へと向かった。

本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。