オオサカ超特急
翌朝、好子が起きると、汎用列車型決戦兵器は、まだ線路を走り続けていた。
窓から日の光が差し込んだ。
好子はまぶしさで目がくらんだ。時計を見ると、8時を過ぎていた。
はて、どういうことだろう。
好子が首をかしげる。
午前8時2分に尾道駅に到着していて、そのまま、列車は一時間以上停留するはずである。ところが、8時半になっても、列車は走り続けているままなのだ。
異変に気が付いたのは好子だけではなかった。
サニーもまた、「おかしい」と何度もつぶやいた。彼女はすでにパジャマから、ブレザーとスカートに着替えていた。
サニーは内線電話で車掌の玲於奈を呼び出しそうとしたが、だれも出なかった。
「誰も出ないなんて……変ね。明らかにおかしい。汎用列車型決戦兵器で異変が起きている」
首をひねるサニーへ、好子はこう聞いてみた。
「先輩。まだ、尾道駅についていないだけじゃないですか?」
「いいえ、30分前に尾道駅を通過してしまって、それから、ずっと走り続けている。だから、運行の予定が遅れているわけじゃないわけ。廊下に出てみましょう。この異常事態の原因を探らないといけない」
好子は普段着を着て、廊下に出てみた。
後ろから、サニーが用心しつつ、個室から出てくる。
「誰か、いませんか?」と好子は大声で叫んでみた。だが、何の反応もなかった。
食堂車のほうから、騒がしい声が聞こえてきたので、二人とも、そちらへ向かった。
食堂車では、玲於奈と二人の乗客が言い争っていた。
言い争っている内容を聞くと、どうやら、予定の駅へ列車が止まらなかったことへの苦情であるらしい。
二人の乗客は、どちらとも昨日のニセ大学生ではなかった。
一人は、子供のような若い女性だった。小学生の好子達より7、8歳ぐらい年上だろう。背はすらりと高いが、顔は化粧をしていない。のっぽの若い女は、顔を真っ赤にしながら、玲於奈へ詰め寄っていた。
「もう信じらんない!せっかくの高校最後の夏休みが台無しじゃん!」
のっぽの女は高校生のようだ。
苦情を受けた車掌の玲於奈は、ただひたすら、ぺこぺこと頭を下げて謝った。「申しわけありません。工藤 新雀様。ただ今、汎用列車型決戦兵器は予定を変更して運行しております。当初は、尾道駅へ停留する予定でしたが、予定を変更いたしまして、大阪駅まで、どの駅にも止まらずにいきます」
新雀という女子高生は、納得せずに腕組みをした。不機嫌なまま、食堂のイスへ座った。
さて、もう一人は白髪交じりの老女である。
足が不自由なのか、杖をついて、腰をくの字に曲げていた。口もその腰に負けず劣らず、への字に曲がっている。こちらも新雀と同じように、不満を漏らしていた。




