ガラスの石仮面
列車の個室で、二人は、床に置かれていたガラスのトゥシューズを眺めた。
トゥシューズを見つめていたサニーは、難しい顔で腕組みをした。
「これ、ガラス製よね?」
「はい、もちろん」と好子はうなずいた。
「……だったら、ボールを足で蹴ると、ガラスが割れない?割れたら、足をケガするんじゃないの」
「――あ」
盲点だった。確かに、キック力を増強すると、ガラスが割れてしまって、足を傷つける恐れがあるのだ。なんという欠陥道具なのだろう。
好子はスーツケースから、透明な仮面を取り出した。
「役に立たないトゥシューズは置いといて、もっと、いいものがあるんです。ほら、このガラスの石仮面はすごいんですよ。アームド先輩の話では、これは古代マヤ文明が栄えた地域で発見されたらしいんです。仮面をかぶると、強化魔法を無料で使えるそうなんです。タダでパワーアップできますよ」
古代マヤ遺跡から発掘されたガラスの石仮面は、口と目の部分がくり抜かれたガラス製のお面である。まるで、アイスホッケーのお面のようだった。
石仮面と一緒に、麗美が書いた説明書が付いていた。サニーはそれに目を通す。
好子が石仮面を顔にかぶろうとする。すると、説明書を読んでいたサニーが止めた。
「待って!ジーパン」
「どうしたんですか?」
「説明書に使用上の注意が書いてある。――石仮面をかぶった者は、LEDのブルーライトを浴びないでください。体が灰になる恐れがありますって」
危ないと叫んで、好子はガラスの石仮面を放り投げた。「あやうく、灰になるところでした」
石仮面が床にコロコロと転がった。
今や、シャンデリアもスマホの液晶も、LEDの光である
古代マヤ人も、LEDがここまで普及するとは、さすがに予想だにしていなかったのであろう。
「だったら、これはどうです。ガラスの闘争棒に、ガラスの火炎ビンです。強い武器ですよ」と好子はスーツケースからガラス製の棒と、油の入ったビンを取り出した。
それを手に持つと、好子は微妙に嫌な顔をした。
「……なんだか、これから魔王を倒しにいく装備みたいですね」
「というよりも、むしろ倒される側ね」とサニーは眺めながら言った。
「そうですね、先輩」
好子は闘争棒と火炎ビンをスーツケースのそばに置いた。




