ガラスのトゥシューズ
サニーと好子は自分たちの部屋へ戻った。
侵入者と行方不明者の件については、危険な列車の中を探し回るわけにもいかず、放置せざるを得なかったのだ。
部屋で作戦会議を開いた二人は、敵が襲ってきた場合の対応を検討した。
それが終わって、サニーはスマホを取り出して、広島の黒子へ連絡を取ろうとした。ところが、電波が圏外になり、つながらなかった。
「あれ?どうしたのかな」
サニーは首をひねった。さっきまでスマホの電波は捕まえていたはずなのだ。
サニーが部屋の内線電話をかけると、玲於奈の声が受話器から聞こえてきた。「……申しわけありません。今、車内では、携帯電話が使えない状態となっています。専門家の話によりますと、室内で、電波かく乱を引き起こすミノフスキー粒子の濃度が上がっているそうでして、電波障害になっているそうです。内線電話は有線式なのですが、無線の外線電話が使えない状況なのです。かさねがさね、おわび申し上げます」
つまり、外部との連絡が絶たれたのだった。
サニーは、玲於奈の話を好子に伝えると、こう告げた。
「八方ふさがりね。隊長が心配するといけないから、次の停車駅でいったん下車しよう」
「えー」と好子は口をとがらせる。
「文句を言わない」
すでに列車の外は夜になっていた。
ふと、サニーは思い出した。「次の停車駅って尾道駅よね」
スマホが使えない今、ネットで列車の時刻表を確認することができない。だが、はっきりとサニーの頭は停車時刻を覚えていた。
「次の駅には、明日の午前8時2分に到着する。――うん?待って。明日まで、このまま走り続けるの?」
「そうみたいですね。ということは、車内でお泊りですね」と、うれしそうな声で好子は言った。
スマホの電波が圏外となっているため、指示を受けることはできなかった。ということは、自分たちで判断して行動しなければならない。
サニーはこの部屋で寝ることに決めた。「しかたないか。フォローなしで戦わなきゃね」
リスクは承知のうえで、汎用列車型決戦兵器に乗ったのだ。寝ている最中に、BB団が襲ってくることも考えられた。それを迎え撃つための準備をする必要があった。
好子は自分の大きなスーツケースから、いろいろな魔法道具を取り出した。
「BB団の奴らを倒すために、アームド先輩から、いろんな魔法道具を借りてきたんです」
そう言って、好子が手に取ったのは、透明なガラスだけでできたトゥシューズだった。武装淑女の二つ名を持つ麗美の持ち物だから、バレリーナがはくような、ただのトゥシューズではなかった。
「へへ、これなんだと思います?先輩」
「さあ?なに、そのガラスのトゥシューズは?」
サニーに聞かれた好子は、胸を張って答えた。「アームド先輩の話によれば、キック力を増強してくれるトゥシューズなんだそうです。ボールを蹴ると、普段の何倍もの力がボールにかかるらしいですよ」




