東都湖公太郎
好子はうろたえた。
「だって、おかしいじゃないですか。あの三人は自分を大学生だと言ってましたよ」
確かに、三人の女たちは大学生だと名乗ったのだ。となれば、彼女たちはウソをついていたということになる。
「少なくとも、あの金田というメガネ女は、ウソを言っていたわけ。どこが大学生よ。れっきとしたケニ屋の研究者じゃない。しかも、この疾風怒濤の開発者。あの女、ずっと黙ってたけど、腹の中では何を考えているんだかわかりゃしない」
サニーは吐き捨てるように言った。
その態度に腹をたてた好子だったが、サニーの言っていることが正しいのは頭で理解できた。しおれたように力なく、こう聞いた。
「先輩、これから、どうするんです?あいつらのいる食堂車へ戻るんですか?」
「いいえ。ジーパン。あいつらに質問したいのはやまやまある。けれど、あの中の一人がケニ屋の関係者だとわかった以上、あいつらは敵よ。攻撃してくる可能性すらあるわけ。いったん、部屋へ戻って、作戦を考えましょう」
好子たちが部屋に戻ろうとすると、車掌の玲於奈が部屋の前で待っていた。
「――お待ちしておりました。ジーパンさん、サニーさん。少しお尋ねしたいことがあるのですが、今、よろしいですか?」
玲於奈の態度は丁寧だった。とはいえ、視線が定まらず、不安そうな目つきをしている。
何かを察したサニーが、事件でもあったのかと逆に質問した。それに対する玲於奈の答えは次のようなものだった。
「お客様にお尋ねするのは失礼かと存じますが――この車内で、セーラー服を着た中学生ぐらいの女の子を見かけませんでしたか?この者は、正式な乗客ではありません」
「といいますと?」
玲於奈の話によれば、一人の少女が車掌の目を盗んで、無許可で車内に侵入したそうだ。
「――彼女は招待状を持っておらず、客ではないのです。もし、見かけたら、私どもスタッフにお知らせください」
サニーと好子は「わかりました」と答えた。
侵入者がいるらしい。とはいえ、それが自分とどう関係があるのか、サニーにはわからなかった。
この侵入者が、のちのち惨劇のきっかけとなるとは、サニーもまだ知らなかったのである。
玲於奈が頭を下げた。「それから、もう一つ、お願いがあるのですが、頼んでもよろしいでしょうか?うちのスタッフが一人消えてしまったのです」
「人が消えた?」とサニーは驚いて聞き返した。
「そうです。私と同じような制服を着た、若い男性です。東都湖 公太郎と表示されたネームプレートを胸につけています。どのようなわけか、探しても姿が見えません」
「行方が分からなくなったのはいつですか?」
「二時間前です。宮島口駅を出発したときには、彼の姿を確認しましたから。もし見かけたら、運転室に来るように言ってください。まったく、どこでサボっているのやら……」
玲於奈は愚痴をぶつぶつと言いながら、探しに行ってしまった。
走っている列車から乗員が消えるとは、ただごとではない。ただし、玲於奈の言うとおり、公太郎はどこかに隠れて、仕事を休んでいるだけなのかもしれなかった。
事件性があるかどうかも分からない。
とりあえず、サニーたちは部屋へ戻った。




