十分に発達した魔法は科学と見分けがつかない
街中を兵器が走るのはおかしいと思っていた。だが、よく考えてみれば、凶悪な魔法少女が攻めてくるご時勢である。ロボットに変形合体する列車が一台や二台ぐらい走っていても当然なのだ。
ようやく好子は納得できた。
「ありがとうございました。ソフィーと初代さんと一七瀬さん。いろいろとお話を聞けてよかったです」
好子がお礼を述べると、三人は、運ばれた料理に手を付け始めた。すでに、小学生二人への興味が薄れて、関心が料理へと移ったようだ。
サニーは、好子を引きずり出すようにして食堂から出た。
「ジーパン、あんた!なに勝手なこと、やってんのよ!」
食堂を出て、廊下でサニーは怒り出した。
好子はぽかんとした顔をした。怒られる理由が見当たらないからだ。
「先輩、何を言っているんですか。お言葉ですが、セーラーサンに関する重要な情報を聞き出せたんですよ」
サニーはため息をついた。腕組みをして、好子をにらみつけた。
「重要な情報なわけ?毎日、ニュースをチェックすれば、わかりそうな情報が?住民の反対運動は、テレビやネットで何度も報道されていたのに、見てなかったわけ?セーラーサン事件のせいで、マスコミと世論が兵器導入の賛成に転がったのは、誰もが知っていることよ」
「じゃあ、何が重要なんですか?」
「もっと大事なのは、あいつらがセーラーサンやケニ屋、BB団とどんな関係にあるかということ」
好子は、サニーの疑り深さにあきれてしまった。人を信用しないにもほどがあるだろう。
サニー先輩は間違っている。
あんな親切で優しそうな人たちが悪党であるわけがない。
「もっと、人を信じてもいいと思います。あの人たちは敵ではありません」と好子は力強く言った。
「だったら、ジーパン、これはどう説明するわけ?さっきネットで調べたんだけどさ……」
サニーは自分のスマホを好子へ見せた。
スマホの画面にはメガネの美女が映し出されていた。さきほどの、金田 一七瀬という女だろう。彼女がはにかんでいる画像だ。
その画像の下には、次のような見出しの文が書かれていた。
「汎用列車型決戦兵器『疾風怒濤』を設計した日本の天才魔法少女、金田さん」
サニーが見せてくれたネットの記事には、一七瀬に対する長いインタビューが書かれていた。技術的な内容ばかりであったので、好子はほとんど理解できなかったが。
最後に、彼女の経歴が載っていた。それをサニーは読み上げた。
「――金田 一七瀬さん。広島生まれ。高校2年のとき、旧日本軍の鉄人計画を曽祖父から受けついで、人造人間M28を開発。大学3年でミノフスキー・葛城理論に基づいたS2クラフトを発表し、数々の賞を受賞。その後、マジカル工学の博士号を取得。大学を離れた現在、ケニ屋の暗子力研究所に勤務。『疾風怒濤』の開発責任者」
読み終わると、サニーは好子をあわれむように見た。「ね、わかったでしょう。あいつらは学生じゃない。少なくとも金田という女はケニ屋とつながりがある。あんた、まんまとだまされたのよ」
好子は目を丸くした。
「先輩、ロシア語はちょっと……」
「今のはれっきとした日本語よ。ジーパン、あんた、ミノフスキーという単語しか聞いてなかったのね」とサニーがあきれた声を出した。




