「脱出:三の幕」
第9話 「脱出:三の幕」
~~~~~~ クルーゼ・ドノヴァン side ~~~~~~~
まだまだ騒ぎが治まらない宴会場
ゲオルグは酒を飲みながら、部下が女を連れてくるのを待ちかねていた。
ゲオルグ「(あの野郎・・・おっせぇなぁ・・・
味見なんかしてたらうっかり殺しちまうぞ・・・?)」
盗賊たちはゲオルグの機嫌が徐々に悪くなっていくのを感じ、少しずつ距離を離していく。
そんな時、ゲオルグの眼は部屋の入り口から複数の『何か』が飛んでくるのを捉える。物体は壁や床にぶつかった瞬間、白い粉を周囲へ撒き散らした。
盗賊A「なんだ!?煙幕か!?」
盗賊B「ごほっごほっ、苦しい・・・」
盗賊C「なんも見えねぇ!どうなってやがる」
ゲオルグは瞬時に口を隠し、姿勢を低くすることで被害を抑えていたが、状況が呑み込めない。
ゲオルグ「(くっそ、なんだ・・・何が起こりやがった!?)」
状況を確認しようと周囲を見回したその時、入口に不敵な笑みを浮かべながら爆竹を構えるクルーゼの姿があった。
ゲオルグ「クルゥゥゥゥゥゥゥゼェェェェェェェェェ!!!」
ゲオルグは激高するも、次の瞬間には本能的に身を伏せる。
クルーゼは火をつけた爆竹を部屋の中に投げ込み、ドアの側から一気に離れた次の瞬間――――
「ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!」
粉塵が一斉に爆発し、部屋の中に轟音が響く。
そこまで大量の粉塵ではなかった為、破壊力は余り無かったが、爆発を受けたことによる混乱と音の衝撃で部屋の中はパニックに陥る。
ゲオルグ「ここまで虚仮にされるとは思わなかったぞ、クルーゼェェェ・・・!
お前も親父の後を追わせてやるよ・・・!」
喧騒と混乱の中、ゲオルグはひとり復讐に燃えるのであった。
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クルーゼ 「あっはっはっは!こりゃ愉快だな!ドノヴァン!」
ドノヴァン「若・・・一応ここは我々の拠点でもあるのですが・・・?
いたずらに被害を増やしてどうするのですか?」
クルーゼ 「いいんだよ!ゲオルグの阿呆面拝めただけでやった価値があるぜ!」
クルーゼは大笑いしながらドノヴァンと部下を引き連れて洞窟内を駆け回る。
クルーゼ 「よし、ここからは二手に分かれて屑どもを翻弄するぞ?
ドノヴァンは馬の確保をお願いできるか?」
ドノヴァン「お断りします。」
クルーゼ 「なんでだよ!?」
ドノヴァン「若がゲオルグに遭遇した時に、誰が止められるのですか?
ラウル殿との約束を忘れたわけではないでしょう?
それに他にも頼れる部下はいます。馬の確保は任せて大丈夫です」
ドノヴァンの言葉に周囲の仲間もニッと笑みを返す。
クルーゼ「はぁ、どっちが頭領だかわっかんねぇなぁ~。
よし!じゃあ一部を除いて引き続き洞窟内をかく乱するぞ?
原則戦闘は回避!全員が逃げ切るのが目標だからな!じゃ、散開!」
クルーゼのいつもの軽口は変わらない。 だが指示だけは的確だった。
ここに彼らの退却戦の幕が上がったのである。
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~~~~~~ ラウル・リューネ side ~~~~~~~
ラウルは目をキラキラさせながら、「うわ~」とか「すげ~」とかを呟きつつ、リューネの両手槌を触っている。
リューネはそんな様子のラウルを見て混乱しつつもなんだか笑えてしまう。
リューネ「(不思議な人だな・・・お節介の時にある程度強いのは見てたけど。
と思ったら変形槌見ながらテンション上がってるし、面白いな。
あ、あたしの胸をチラチラ見てたし、エ、エッチではあるわね。)」
リューネは基本鬼族の一団で行動していることもあり服装含めて、価値観が同じ仲間と行動することが多い。
だからラウルの反応はとても新鮮なものだったし、それが同世代っぽい男の子ならリューネもなんだか意識してしまう。
リューネ「ごほん!ラウル、そろそろ良い?逃げるんでしょ?」
ラウル 「あ、悪い!リューネの装備だもんな!
勝手に触ってすいませんでした!」
リューネ「良いから早く逃げよ?置いてかれ――」
(遠くから)「ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!」
リューネ「・・・何かヤバいことになりそうだから、早く逃げよ?」
何故かリューネのアホ毛がピコピコと忙しなく動いている
ラウル「わかったわかった、じゃあ行こう!」
ラウルは無意識にリューネの手を取り、洞窟内を駆け出していく。
リューネは理由のわからないドギマギ感を感じながらラウルとともに仲間を追いかける。
リューネ「変な人・・・」
リューネはラウルの横顔をみながら呟くが、その声は隣を走るラウルの耳にも届くことは無かった。
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暫く走っていくと、ラウルたちは他の避難者たちが逃げているところに合流する。
そこで鬼族の一団とも走りながらではあるが、いくつか言葉を交わしていく。
(合流直前でなんだか恥ずかしくて手は放しているよ)
鬼族の男性「さっきは何も言わずにすまない。
遺物を取り返してくれて本当にありがとう」
鬼族の女性「あとリューネの事も助けてくれたんでしょう?
優秀なリーダーを失うところだったわ。本当にありがとう。」
ラウル 「優秀なリーダー?」
鬼族の青年「お腹空いた・・・」
鬼族の女性「リューネったら凄いんだから!
遺物の鑑定はもちろん、裏方の仕事まで高い水準でこなしちゃうの!」
ラウル 「へー!リューネってやっぱすごいんじゃん!」
リューネ 「ぶぃっ(ピースサイン+アホ毛ピコピコ)」
鬼族の青年「腹減った・・・」
リューネ 「でもラウルもすごい・・・さっきも蹴り一発で盗賊を倒してくれた。
倒してくれなかったらわたし危なかった・・・」
鬼族の女性「ラウルくんっもやるわね~!うりうり♪」
同族の女性がラウルを肘で弄っていると、リューネはなぜか難しい顔をしている。
鬼族の女性「リューネどうしたの?」
リューネ 「ん・・・何かよくわからないけど、今の見てたら・・・
なんだかもやもやする。」
鬼族の女性「・・・それはなんでかわかる?」
リューネ「理由・・・? うーん・・・なんで?」
質問に質問で返すリューネ、ずっこける鬼族の女性。
リューネ「事象と気持ちの因果関係がわからないの・・・なんでかわかる?」
リューネは自分の気持ちがわからず、混乱しているように見える。
しかしそんな彼女に同族の女性は柔らかい微笑みで返す。
鬼族の女性「ごめんねリューネ、そんな顔しないで?
でも気持ちって不思議でわからないこともいっぱいあるの。
今の気持ちは大切にしてあげてね♪」
リューネ 「うん・・・」
鬼族の青年「ひもじいよ~~~」
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クルーゼたちの陽動もあり、避難した一般人は無事に洞窟を抜ける。
抱き合って喜ぶ人々にカエデたちは声をかける
カエデ「このまま真っすぐ進むと街道に出るで!今は街まで急ぎや!」
思い思いに逃げ出していく人々。
カエデ「ラウル、殿ご苦労さん!誘導漏れはないやろな?」
ラウル「大丈夫だよ、カエデ姉。それよりクルーゼたちが心配だ。
迂回しながら合流しよう」
クルーゼの元へ急ごうとするラウルのところにリューネが声をかける
リューネ「ラウル!本当にありがとうね!
私たちバルストの街に向かうから、ラウルももし来たら教えてね!
その時には両手槌の構造教えてあげるからね。それから・・・」
御礼をまくしたてるリューネに、なにやら嫌な予感のするカエデ
カエデ 「ラウル、こちらのお嬢さんは・・・?(ピキピキ)」
ラウル 「あぁ、この子はリューネ。
過去遺物を取られてた調査チームのリーダーなんだって」
リューネ「ラウル・・・?この人は・・・?」
ラウル 「あぁ、俺の冒険者仲間で師匠でもあるカエデ・・・」
カエデ 「お姉ちゃんや」
リューネ「お姉ちゃん・・・?」
カエデ 「お姉ちゃんや。血は繋がっとらんけどお姉ちゃんや。
小さい頃からラウルと一緒におる(ガルルルル)」
ラウル 「カエデ姉・・・ちゃんと紹介させて(´;ω;`)」
リューネ「カエデさん、で良いんだよね?あたしはリューネ。
ラウルにはさっき助けられた。」
リューネの言葉に一瞬間が空き、そして――
「ピトッ」
リューネ「わたしの命の恩人・・・」
動揺するラウル、赤面するリューネ、石化するカエデ
そして遠くで盛り上がる鬼族の女性「あらあら♪」
リューネ「恩人・・・だから・・・街に来たらちゃんと御礼する・・・ね?
待ってるから無事に到着してね?」
ラウル 「わ、わ、わかった。
これから行かなきゃいけないとこあるから、ま、また今度な!」
ラウルはカエデを置いてダッシュで走り出す。
ハッと我に返るカエデ
カエデ「待ちぃや、ラウル!詳しく聞かせんかい~~~!!」
そしてカエデも全力でラウルを追いかけていく。
リューネはその後ろ姿を名残惜しそうに見送るのであった。
次回、「脱出:四の幕」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
もし知りたい設定などありましたら、幕間などで説明できたらと思います。




