「赦し」
第25話 「赦し」
クリストフはラウルとゼニスキーを連行しながら、今回の作戦が一応の決着が出来たことに安堵していた。
ラウルの件については頭が痛いが、ゼニスキーには何としてでも裁きを受けてもらうことを己に誓いつつ、屋敷に攻め入った時のことを思い出していた。
クリストフ「(確かに十分に準備もした。仲間信頼できるベテランを揃えた。
それでも制圧がスムーズ過ぎてはいなかっただろうか?)」
先ほどの戦闘の際、明らかに相手の動きがおかしいことが数度起こっていた。
特に分隊長クラスが出てきたとき、不自然なほどに相手に隙が生まれていた。
クリストフは馬車に揺られながら、窓から街の景色を望む。
クリストフ「(どうやら、借りを作ってしまったかもしれないな・・・。
本人を問いただしても正直言ってくれないと思うが。)」
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グラーフ「やっぱ、殴ったか~。いや殴るよな、あれは。俺でも殴った。」
街の鐘楼の屋根に腰掛けながら、グラーフは先ほどの様子を振り返る。
先ほどのクリストフの予感の通り、グラーフは超長距離よりゼニスキーの館を監視しており、屋敷の包囲戦の際にちょっとだけ、ほんの少~~~~しだけ、魔法で援護していた。
グラーフ「カエデは怒っただろうけどな・・・。
まぁ、あの行動で救われるものもあるってことで・・・
グラーフお爺様は誉めてやろう!
もう一人の姉貴も褒め称えそうだけどな~、くっくっくっくっく!」
グラーフはひとしきり笑うと、空を眺めながらポツリと言葉を零す。
グラーフ「なあ、――――、喜べ、お前たちの子は真っすぐ育ってるぞ。」
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兵士A「こちらがあなたの牢になります。
いつまでの拘留になるかはわかり次第、お伝えすることになります。」
ラウル「あ、これはご丁寧にどうも」ペコリ
ガチャンッ
ラウルは兵士の案内で牢に入り、床に座り込むとゴロンと横になる。
ラウル「いやー、まさか冒険開始早々に犯罪者の仲間入りになっちゃうとはね~。
釈放されたらカエデ姉に怒られるだろうなぁ・・・」
流石に無罪放免を願うのも無理があるだろう。
前科持ちになったらギルドの依頼は受けられるのだろうか、そもそもギルドから借りたあの拠点は・・・?
ラウル 「やっべ、流石に勢いに任せ過ぎたかな・・・」
セオドリク「さっきから何をひとりでブツブツと言ってるんですか。」
ラウル 「あれ?その声はセオドリクさん?」
ラウルは隣の牢から聞こえるセオドリクの声に聞き耳を立てる。
声だけでは何とも判断しづらいが、どうやら生命に別条はなかったようだ。
ラウル 「良かったー。応急処置は問題無かったみたいですね。」
セオドリク「良かった、じゃないですよ。
まさか生かされるなんて思いましませんでした。」
ラウル 「これっぽっちも後悔してませんけどね。
セオドリクさんも相手が僕だったのが運のツキ・・・
違いますね。
多分ネーレさんとスコットさんと出会ってしまったから、
こうなるのが必然だったんです。」
セオドリク「言うじゃないですか。何を根拠にそんな風に言うんですか?」
ラウル 「えー、だって僕とスコットさんの挟撃の時、スコットのさんの台詞で
ちょっとだけ反応を遅くしたじゃないですか?」
セオドリク「・・・・・・・・。(本当に良く見ていますね、この子は。)」
ラウル 「図星じゃないです?あれ?黙るのズルいですよー?
表情見えないから判別付かないじゃないですかー?」
先程まで生命のやり取りとしていたとは思えないほど、ラウルの声は柔らかい。
セオドリク「何故・・・キミの態度はそんなに普通なんですか?」
ラウル 「え、そんなに普通ですかね?」
セオドリク「自分で言うのも烏滸がましいですが、私は長期間、いろいろな
悪事に加担してきました。
そういう人間に悪い感情を持つ方が自然ではないですか?」
ラウル 「ん~~~~~~~、言い方が難しいな・・・。
僕はセオドリクさんに何か酷いことをされたわけじゃありません。
あなたに怒りをぶつけて良いのは、あなたの被害にあった方です。
そしてその罪は死ぬまでずっと背負うしかないと思っています。
きっと赦されないでしょうけど、それがあなたの業ですよね。」
ラウルは一度言葉を区切ると、言葉を選びながら話を続ける。
ラウル 「それに何が正しいかどうかを判断が出来るほど、僕自身は
そんなに出来た人間ではないですよ?
それに奥さんを生かそうと、形振り構わずに、助ける手段を探した
セオドリクさんの気持ち、否定できません。
僕も同じ状況なら、同じことすると思うので。
だからあなたのことを許すとか、許さないとかじゃなくてですね。
なんていうかやっぱりセオドリクさんのこと憎めないんですよ。」
「考えまとまってなくて、答えになってませんね」とラウルは笑う。
本人にそんな気はないんだろう、でもセオドリクはラウルの言葉で、心のどこかが赦されたような気持になった。
ラウル 「あ、でも」
セオドリク「???」
ラウル 「それとは別にエレノアさんには無茶苦茶怒ってもらうつもりなんで。
しっかり覚悟しておいて下さいね。」
セオドリク「ハハハ、彼女に直接怒られるとしたらだいぶ先になりそうですが。」
ラウル 「・・・ちゃんとエレノアさんが怒れるように、エレノアさんの容体に
ついても僕らだって全力を尽くすつもりです。
遺物の件ならこの間の発掘調査の結果もまだですし、ギルドにも
いろいろ聞いてみますよ。」
セオドリク「――――!?」
セオドリクはラウルの言葉に驚く。
顔は見えないが、彼は本心からエレノアを救おうとしているのだろう。
敵わないな。
セオドリクはラウルに対して素直にそう思えた。
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牢に入った当初は元気だったラウルも、滞在が1週間を超える頃には、流石にやり過ぎたのかと反省の日々を送るようになった。
その頃になると「やっぱり、やり過ぎたんだぁ」と嘆くラウルをセオドリクが励ますようという奇妙な信頼関係を築いていた。
そして投獄からちょうど2週間後の朝、とうとうラウルが釈放されることとなった。
次回、『ラウルへの処罰』
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感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
ホントですよ?叩かれたら凹むかもですけど・・・
引き続きよろしくお願い致します。




