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Historia de Familia ~家族の物語~  作者: Levia
第2章  過去遺物(ギフト)

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「涙」

第24話  「涙」



ラウル  「領主様、見~~~~っけ!


ラウルは部屋をひっくり返している最中のゼニスキーに声をかける。


ゼニスキー「き、貴様は誰だ!? 

      おぉ!そこにいるのはスコットではないか!

      何をしている、こやつをひっ捕らえろ!

      おぉ、ネーレ・・・わしが心配で来てくれたのかい?

      さぁ、一緒に逃げようではないか。」

ラウル  「頭の中、お花畑かお前。全部聞いたぞ、セオドリクさんからな。」


ラウルの一言にゼニスキーの表情が、ピシッと音を立てそうなくらいに固まった。


ゼニスキー「な・・・う、嘘だ、嘘であろう?

      セオドリクが貴様のような小童に負けるわけないであろうが!!」

スコット 「ゼニスキー・・・。

      お前は過去遺物を餌に、セオドリク様のことを良い様に扱ったな?」


スコットが声をかけると、ゼニスキーに再び動揺が走る。


ネーレ  「その様子だと奥様の、エレノア様の事もわかってたんですか?

       セオドリク様のお気持ちもわかっていた上で、弄んでたんですか!?」


ネーレは言葉に怒気をはらませながら、ゼニスキーを追い詰めようとする。

ゼニスキーはネーレに詰められてあたふたとしていたが、とうとう開き直ったのか太々しい態度で三人に向き直る。


ゼニスキー「くっ、ふふふ、くあはははははは!! そうだよ、何が悪いのか!

      平民なんぞ道具と同じ、使えるものは使ってなんぼだろうが!

      遺物を餌にしたら、大人しく従ったセオドリクは実に滑稽だったぞ!

      所詮作り話だというのに、実に愚かであった!!

      儂の様に聡明な人間が愚民を上手に使ってやるのだ、感謝すると良い!」

???  「ソウダソウダ!ナニモシラナイグズタチハエラバレシモノノフミダイニ

      ナッテイレバシアワセダロウ?キャハハハハハハ!!」

ラウル  「!!?!?? この声は!?」


不意に聞こえてきた甲高い、子どものような声に、ラウルは聞き覚えがあった。

次の瞬間、ゼニスキーの体を覆うように濁った河のような色の大蜥蜴が姿を見せた。


ゼニスキー「見ろ!この化身を!儂は神に選ばれたのだ!!!

      儂の能力を思い知るが良い!!!」

大蜥蜴  「キャハハハハ!!サ~テドレカラタベテアゲヨウカナァ♪」


ゲオルグの時と同じ存在だと、無事では済まないかもしれない――

嘲笑を繰り返す一人と一匹を前にラウルが戸惑いを見せていると、スコットとネーレが大蜥蜴に向かい、黙って一歩を踏み出した。


スコット「ラウル殿、あれは敵ですよね?」

ラウル 「え?あ、あぁ敵で間違いないと思う。」

スコット「それだけわかれば十分です。」


次の瞬間、スコットは短槍を振りかぶり、大蜥蜴に向かって投げつける。

槍はまるで元々そこに存在していたかのように、大蜥蜴の尾を床に縛り付ける。


大蜥蜴「グギャアアアアアアア!!イタイイタイ、ナニスルンダ!!

    ウゴケナイジャナイカ!!! ・・・・・・・・ナンテネ♪」


大蜥蜴は尻尾を切り離し、部屋の天井に素早く移動すると、その長い舌を凄まじい速さでスコットに向かって伸ばす。

大蜥蜴の舌がそのままスコットの身体を穿つ――と思った瞬間、舌の先端が宙を舞う。

ネーレのハルバードが掬い上げる様に切り上げられ、大蜥蜴の舌先を両断したのだった。


大蜥蜴「アガァァァァァァァァ!!」


今度こそ苦悶の叫びながら、天井から落ちてくる大蜥蜴。

大蜥蜴の眼には憤怒の表情を浮かべたネーレが映る。


ネーレ「よくも・・・。よくもセオドリク様を・・・。」


ゼニスキーと大蜥蜴は気付いていなかった。

彼らの嘲笑が、ただでさえ燃え盛っていた二人の怒りに、更に薪をくべる結果になっていたことを。


大蜥蜴「ギャアアアアアアアアアア!!ナンデナンデナンデ!

    コンナコトナラアノオトコノホウニトリツケタラヨカッタ―――ガッ」


舌を切られ、痛みのショックで床に落ちてきた大蜥蜴。

焦りと後悔を喚き散らしていた次の瞬間、大蜥蜴の脳天にスコットの槍が突き刺さる。

大蜥蜴は自身の生命の灯が消える瞬間を認識することも出来なかったのだった。

ラウルは事態の目まぐるしい変化に呆気に取られると同時に強い違和感も覚える。


ラウル「(ゲオルグの時とは全然違う・・・?

     いや二人とももちろん強いんだけど、流石に大蜥蜴が弱すぎないか?

     それに「アノオトコノホウニ」ってどういうことだ?)」

ネーレ「ラウルくん!ゼニスキーが!」


ネーレの声にラウルの思考は急速に現実へと引き戻される。

気付けばゼニスキーの姿が部屋の中に見当たらない。


ラウル「やっば!逃がした!!」


ラウルたちは慌ててゼニスキーの後を追うのであった。


************************************


ゼニスキー「ひぃっ、ひぃっ、ひぃっ。

      何故だ、何故私が逃げなければならないのだ!わしは男爵だぞ!

      平民なぞ搾取されて当然の生き物であろう!!」


凝り固まった価値観でしか生きてこなかったゼニスキーには何が悪いのか理解することが出来なかった。

『自分は特別で、無条件に優遇されるものだ』

幼いころからそれが普通な環境の中で育てられてきた。

故に彼にとって周りの人間は全て自分のために存在する駒同然であった。


ゼニスキー「屋敷を出れば騎士団が待っているはず!

      三人程度返り討ちにしてくれる!!」


ゼニスキーは未だ勝利を確信しながら屋敷の玄関扉を勢いよく開け放つ。

そこには捕縛され、打ち倒され、あるいはいい感じに黒焦げになった騎士団の姿があった。

そしてその中には項垂れたコズールイの姿も見える。

誰の目にも明らかな、敗北という状況をゼニスキーはうまく飲み込めずにいる。


クリストフ「ゼニスキー男爵、いやゼニスキー。抵抗はやめておけ。もう終わりだ。」


屋敷の正面からはギルドマスターのクリストフが最後通告をしている。


ゼニスキー「な!? ギルドマスターごときが儂に何と失礼な!! 

      儂は男爵ぞ!!そなたらなどとは血の高貴さから違うというのに!!」

クルーゼ 「いちいち五月蝿いなぁ、バカ男爵様は。」

ゼニスキー「なにぃ!?」


ゼニスキーが声のする方向を見ると、吟遊楽団に扮していたクルーゼたちの姿があった。

クルーゼの足元には気絶したコーブーシが横たわっている。


ゼニスキー「な、な、何故だ!?我が騎士団は精鋭揃いぞ!!

      こんなに簡単に敗れるわけがないであろうが!!

      どんな汚い手を使ったのだ!卑怯者め!!」

ラウル  「うるさいなぁ・・・もう黙れよ、おっさん。」


ゼニスキーは声のする方を振り返ると、正面玄関側からラウル・スコット・ネーレが歩いてくる姿が見えた。


ラウル「往生際が悪すぎるよ、おっさん。

    そろそろ退場してくんないかな・・・流石に。」


ラウルは拳を鳴らしながらゆっくりとゼニスキーに近づいていく。

その様子を見てクリストフがラウルに声をかける。


クリストフ「ラウルくん、止めたまえ!ゼニスキーは法の下に裁きを受けてもらう!

      貴族に対する暴行は重罪となってしまう!頼むから止まってくれ!」

ラウル  「なっ!?本気ですかクリフさん!?

      こいつ、そんな甘い対応したら反省なんかしないですよ!?」


ラウルは納得できない様子でクリストフに食って掛かる。

興奮するラウルの肩にスコットが手を置き、語りかける。


スコット「ラウル殿・・・。クリストフ殿の仰っていることが正しいです。

     このままゼニスキーに危害を加えればラウルさんが罪に問われてしまう。

     それは私たちの本意ではありません・・・。」


ラウルを説得するスコット。

しかしスコットとネーレの表情は悔しさに溢れ、その眼からは悔し涙が溢れている。

二人はセオドリクの分まで泣いてるのかな―――

ラウルにはそう感じられた。


ゼニスキー「ぎゃは、ぎゃはははははは!!

      ほら見ろ、貴族様にはお前ら俗物が手を触れるなどあってはならんのだ!

      法の下で裁きだぁ?裁判なんぞ、何度でも受けてやろうではないか!

      いくらでも金を積んで逃げ切ってやるわ!!

      お前らも覚えてろよ?この街に戻ってきた暁には街の人間全員使い倒して

      すり潰してやるからなぁ!?ぎゃはははははは!!」


ラウルの背後からゼニスキーの嘲笑が聞こえる。

その声に悔しさがこみ上げたのか、スコットとネーレの涙が溢れていく。

ギルドや義賊の面々の表情も暗くなっていく。


ラウルはスコットの肩をポンポンと叩き、ネーレの涙を優しく拭う。

姉弟が見たラウルの表情は、穏やかで、慈愛に満ちた笑顔だった。

ラウルはゼニスキーへと振り返ると、一歩一歩、ゆっくりと近づいていく。


カエデ  「やめえラウル!流石に洒落にならん!!」

クリストフ「ラウルくん!下がれ!命令だ!!」

スコット 「ラウル殿!!」

ネーレ  「ラウルくん!!」


仲間の声にもラウルの歩みは止まらない。

いよいよ、ラウルはゼニスキーの目の前に到着する。


ラウル  「おっさん、今までやってきた事、ごめんなさいする気は?」

ゼニスキー「ぎゃはははははは!畜生下げる頭などないわ!」

ラウル  「そっか。」


ラウルはゆっくりと構えを取る。

ラウルの身体全体から夥しい気が溢れていく。

ゼニスキーは気に当てられてしまい、呼吸すら上手く出来なくなってしまっている。


クリストフ、カエデ、スコットがラウルを止めようと各々駆け出してくる。

ゼニスキーにはそのどれもがスローモーションのように見えた。

ラウルはゼニスキーに対して拳を振りぬく。

今までのスローモーションのようなスピードから一転、一瞬でゼニスキーの意識は刈り取られるのだった。


ズドンッッ!!


ラウルの一撃がゼニスキーの身体に入った瞬間、重い音が周囲に響いた。

ゼニスキーは痙攣しつつも浅く呼吸を繰り返しており、一命は取り留めていることは遠目にも確認出来た。


クリストフ「何故だラウルくん。キミの行動に意味など・・・。」

ラウル  「ごめんなさい、クリフさん。

      止めてくれたみんなが正しいってのはわかってるんだ。」

クリストフ「それなら何故!?」

ラウル  「だって・・・。正しさだけを強要しちゃうなんてやりきれないから。

      今まであのおっさんに人生狂わされた人たちが救われないよ・・・。

      悲しすぎる。」


ラウルの表情はどこか泣いているような悲しみを帯びていた。

その言葉に周りの人間はハッとした表情に変わる。

スコットとネーレは周囲を慮ることなく、嗚咽を上げながら涙している。

クリストフは、ラウルの意図するところもわかってはいたのか、複雑な表情を浮かべている。


クリストフ「しかし、キミの行ったことは罪となるぞ?」

ラウル  「わかってます、だから――」


ラウルは両手をクリストフに差し出す。


ラウル「ちゃんと償います。」


クリストフはため息をつくと、無言でラウルの手に錠をかけるのだった。


カエデ「ラウルの阿呆・・・。」



次回、『赦し』


『正しい』って難しいなぁと思う今日この頃。


読みづらい場所などありましたらご指摘ください。

感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。

引き続きよろしくお願い致します。

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