「黒の真実」
第21話 「黒の真実」
牛頭の仮面を被った黒衣の人物――
遺跡調査の時にはラウルとスコットの二人掛かりでも倒せなかった相手が、倉庫の入り口に立ち塞がった。
ラウル「ここでこいつとやり合うのぉ・・・?」
スコット「まさか領主の館で再びまみえることになろうとは・・・。
しかしこの倉庫に来るまでに全く気配に気付きませんでした。」
ラウルはネーレを護ろうと黒衣の人物に向かって一歩前に出る。
その時、黒衣の人物が初めて声を発した。
黒衣の人物「ここで戦うのは私にとっても都合が悪い。外に出ようか。」
仮面のせいで多少くぐもってはいたが、聞き慣れたその声に3人は驚愕の表情を浮かべたのだった。
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黒衣の人物「ここなら良いでしょう。さて――」
スコット「その前にお伺いしても良いでしょうか?」
黒衣の人物「なんだい?」
スコットは黒衣の人物を鋭く睨みつける。
しかしその顔にはどこか悲しげな表情が含まれていた。
スコット「何故・・・何故あなたなんだ!セオドリク分隊長!!」
黒衣の人物「やはり流石に喋ったらバレるものだね。
遺跡では喋らなくて正解だったようだ。」
黒衣の人物が仮面を脱ぐと、ラウルたちが知っている優しい表情のままのセオドリクが姿を見せた。
ネーレは口に両手を当てたまま声も出せずにいる。
その様子を見たセオドリクはどこか申し訳なさそうに頭を掻いた。
セオドリク「いやぁ、驚かせたようで申し訳ない。
一応これも僕の仕事の一環でね。」
ラウル「ありきたりな質問ですけど、なぜそんなことを?」
セオドリク「ははは。ここで身の上話をするつもりはないよ。
でもそうだね・・・ひとつだけ種明かしをしようか。
なぜ私が遺跡で君たちを襲ったのか、とか興味あるかい?」
ラウルとスコットは無言でセオドリクに頷きを返す。
ネーレ「ちょ、ちょっとスコット!?
遺跡調査の時にそんなことあったなんてわたし聞いて――」
セオドリク「すまないネーレくん、それは私がスコットにアドバイスしたんだ。
『あまり余計なことを言ってお姉さんを不安がらせてはならないよ』
とね。」
ネーレ「なっ!?」
セオドリク「さて、答え合わせだ。
目的はスコット、キミの生命だったんだよ。」
スコット「わ、私の?」
セオドリクはわざとらしく笑いながら言葉を続ける。
セオドリク「正確に言えば私のクライアント――あぁ、もう面倒だな。
領主のゼニスキーがネーレくんを手籠めにするために。
スコット、キミが邪魔だったのさ
だからレイダーの襲撃に見せかけて葬るつもりだったんだがね。
カエデくんまで加勢に来るとは流石に分が悪かったなぁ。
おかげでゼニスキーから大目玉を食らってしまったよ。」
ゼニスキーとのやり取りを思い出したのか、眉を八の字にして困った表情を浮かべるセオドリク。
普段の様子と変わらない彼の姿がスコットとネーレの混乱を加速させていく。
ネーレ「私のせいでスコットが殺されるところだったの・・・?」
セオドリク「あー、いやいやキミのせいではないんだけどね?
そういう依頼だったと思って諦めて下さい、残念ですが」
いつもと変わらない、柔らかな表情。
そんなセオドリクの口から紡がれる言葉に、ネーレは耳を塞ぎたくなってしまう。
スコット「何故!何故です!セオドリク様!
あなたはそんなことするような人ではないでしょう!?」
セオドリク「あはははは。買い被り過ぎだよ、キミたちは・・・。
私の何を知っているというんだい?
じゃあ答え合わせもすんだところで、死んでもらおうか。」
セオドリクは両の手に斧を構え、スコットたちへの距離を詰めようとし――
ラウル「させません」
ラウルは鋭い剣戟をもって、セオドリクの進路を塞ぐ。
セオドリク「キミはいつも冷静だね。スコットも少しは見習って欲しいところだ」
ラウル「正直こっちも絶賛混乱中なんですよ、セオドリクさん・・・。
ただ、みすみす殺されるわけにもいかないんです!」
ラウルとセオドリクは数瞬の鍔迫り合いの後、お互いに距離を置く。
ラウル「スコットさん!今は何も考えないで!
生き残ることにだけ集中してください!」
スコット「ラウル殿・・・!」
スコットはラウルの言葉を聞くと、無言で盾と短槍を構える。
次の瞬間、セオドリクとの二度目となる戦いの幕が上がるのだった。
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セオドリクとの二度目の戦いは、前回同様セオドリク優勢で進んでいた。
セオドリク「どうしたスコット、いつもの鋭さが無いですね?本気を出さないと簡単に死にますよ?」
スコット「くっ!?」
セオドリクが相手と解ってしまった動揺から抜け出せないのか、スコットの動きが鈍い。
ラウルにしても打つ手を見出せないまま、戦いは後手後手に進んでいってしまう。
セオドリク「しかしキミたち姉弟も運がありませんね。
まさかネーレが理由でゼニスキーに目を付けられるなんて。
それにキミさえいなければ、ここまでの大事にはならなかった」
スコット「その理屈だと私がいなければ姉上が酷い目にあっていたではないですか!?
そんなことは断じて受け入れられません!!」
セオドリク「少なくともキミが生命を落とすことはなかった、という意味ですよ!
遅かれ早かれ、今からキミたちは死に、キミの大事な大事な姉上は
ゼニスキーの慰み者になるのですから!」
スコット「なんだとぉぉぉ!!」
ラウル「スコットさん、突っ込みすぎだ!!」
しかし頭に血が上ったスコットには、ラウルの声が届かない。
ラウルは内心毒づきながらも、スコットのフォローに回っていく。
その時ラウルの視界の端に、ネーレが屋敷の方へ駆けていく姿を捉えた。
ラウル「(ネーレさん、逃げてくれたのか・・・?
でも屋敷側にセオドリクさんの仲間が張ってたら・・・?
クソッ!今はセオドリクさんに集中しないと、共倒れだ・・・!)」
ラウルの焦りとは裏腹に、事態が好転する兆しもなく、戦いは続いていく――
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ラウル「ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・」
スコット「くっ・・・まだまだぁ・・・!」
セオドリク「いい加減、諦めてはいかがですか?
ネーレを差し出せば、生命は助かりますよ?」
セオドリクに対して二人掛かりでも歯が立たないラウルたち。
調査の時とは違い、連携精度の低さも劣勢に拍車をかけていた。
ラウル「スコットさん・・・まだやれる?」
スコット「姉上の為です・・・諦めるなんて選択肢はありません!」
セオドリク「やれやれ・・・予想通り過ぎて面白くないですね!」
セオドリクは改めて斧を構えると、ラウルたちに襲い掛かる。
その時――
ネーレ「スコット!!シャキッとしなさい!!」
セオドリクは反射的に声のする方を振り返る。
そこにはネーレがセオドリクに向かい駆け出していた。
ただ一つ違うのは、その手に身の丈ほどもあるハルバードを携えていること。
セオドリク「ハハハ。まさかネーレくんが助太刀とは。可愛い救世主様だね。」
ラウル「ネーレさん、危ない!!」
ラウルはネーレに警告するが突進は止まらない。
セオドリクは片手の斧だけであしらおうとするが――
ネーレ「ハアアアアアアアアア!!」
ネーレはハルバードを後ろに構えると、身体のひねりを利用して叩きつける。
思わぬ強撃にたたらを踏むセオドリクに対し、ネーレは初撃の後も刺突や横薙ぎを織り交ぜたコンビネーションでセオドリクを翻弄していく。
セオドリクは思わずネーレと距離を取り、驚いた表情で彼女を見つめる。
ネーレ「ここからは私もお相手させていただきます!」
次回、「止められない想い」
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