「なにをー!!姉上は魅力的だろうがーーー!!」
第20話 「なにをーーーー!!姉上は魅力的だろうがーーーーー!!!」
ネーレとラウルは周囲の様子を窺いながら、領主の館の通路を足早に歩いていく。
ラウルは少し慌てた様子になりながら、小声でネーレに問いかける。
ラウル「ちょ、ちょっとネーレさん?
手伝ってくれるのはありがたいですけど、本当に良いんですか?」
ネーレ「ラウルくん、ごめんね。
急に見えるけど、別に考えなしって事でもないんだよ?」
ネーレは視線こそ警戒する様子を解かないが、ラウルの質問に答えていく。
ネーレ「エレノア様のお見舞いの時にも話したかな。
私たちがこの街にいられるのはセオドリク様とエレノア様のおかげなの。
御二人は行く当てもない私たちに生活をしていける環境を下さった。
だからお二人の事を裏切ることなんてできない――でも」
ネーレは言葉を区切ると、少しだけラウルの方に目線を向ける。
ネーレ「領主様、いやゼニスキーは別なの。
あいつは街の人のことなんか大事にしていないと思う。
そ、それに私が給仕をしている時も、必要以上に身体を触ろうとしたり
二人きりになろうとしたりするの。」
普段は温厚なネーレの内側にある激しい嫌悪を、ラウルは初めて垣間見た気がした。
ラウル「ゼニスキーは普通にクズだなぁ・・・。
でもネーレさんも今までよく無事でしたね?」
ネーレ「本当にそうなんですよ!?でも『あ、危ないかも』って時に限って
スコットが声かけたりしてくれて。
私って本当にラッキーですよね?エヘヘ。」
ラウル「(お、恐るべしお姉ちゃんセンサー・・・!)」
ラウルはスコットの姉への執着に身震いをし、と同時にセオドリクさんがどれだけ苦労しているかにそっと涙した。
話が一区切りし再び歩を進めるネーレにラウルは尋ねる。
ラウル「ちなみに何か探すアテってあるんです?」
ネーレ「それは・・・実はあるんだ。
私たちメイドだから館の中を掃除とかするでしょ?
でも立ち入りが禁止されてる場所があるんだ。
近づいた人が実際に罰せられたこともあるの。それが――」
ネーレはゆっくりと立ち止まる。
ネーレ「この通路の先ってわけ。」
ネーレが向いた先には長い通路が続いている。
別棟に繋がっているかと思うくらい長い通路だが、外観からはそんな建物は確認出来なかった。
ラウル「こんな場所があったんだ・・・。」
ネーレ「そもそもここに辿り着くのも、割とわかりづらいんだけどね。」
ラウル「でも良いんですか?バレたらただでは・・・。」
ネーレ「私がクビになるくらいはどーってことないよ?
セオドリク様たちのご恩に背くことにはなるけど・・・。
でもゼニスキーの悪事を見過ごす理由にもならないからね!
こういう時くらい、私も頑張らないとね♪」
ラウル「・・・じゃあちゃんと証拠見つけなきゃ、ですね!」
ラウルとネーレは通路の奥に進んでいく。物陰から一人の男が覗いていることに気付かずに・・・。
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ラウル「さて、つきあたりに如何にも怪しい扉があるね。」
ネーレ「途中からあんなに階段降りることになると思わなかったぁ。
この屋敷一体何があるの・・・?」
長い通路の途中には地下へ続く階段まであり、その先には如何にも秘密を隠していそうな重厚な扉が待ち構えていた。
ラウル「鍵は・・・流石に施錠・・・されてないんだ!?」
ネーレ「さっきも言った通り禁止されてる場所だしねー。
今まで敢えて首を突っ込むひとはいなかったんじゃないかな?」
ラウルはネーレの言葉を聞きつつも静かに扉を開いていく。
ラウル「こ、これは・・・」
ネーレ「うわぁ・・・ものがいっぱいあるぅ・・・。」
部屋の中には様々なアイテムで溢れかえっていた。
少し調べてみると、アイテムはしっかりと分類されており、人の手で整理されていることがわかる。
その中にはローデリアの街で見た楽器に似たようなものも存在した。
ラウル「これ、ローデリアで見た楽器と同じ意匠だ・・・」
ネーレ「ラウルくん、部屋の奥、まだ続いてるみたいだよ?」
ネーレが指差した方向にはまた一つ扉がある。
二人は顔を見合わせ、一つ頷くと扉の先に進む。
そこで目にしたものは―――
ネーレ「人・・・?」
ラウルは答えられなかった。
棺の中で眠る女性から、目を離すことができない。
ラウル「(……カナン?)」
女性は眠っているようにも、亡くなっているようにも見えた。
ただ、その身体だけが時間から取り残されているような、不思議な感覚があった。
そしてラウルにはその女性に見覚えがあった。
現実味がない光景に呆然とするラウルとネーレ。
その時背後から怒声が鳴り響いた。
???「こんなところで何をしているのですか!!!!!」
ラウル「うを!?」
ネーレ「きゃっ!」ひしっ
二人が声のした方向を見ると、そこに立っていたのは怒りで顔を真っ赤にしたスコットだった。
スコット「姉上!ここは立ち入り禁止区域だったはずです!
なぜこのような場所に・・・。
それに・・・それに・・・
こんな人気のないところで殿方と密着しているとは何事ですか!!!」
ネーレ「密着ってなんの―――あ、ラウルくんゴメン!?やだ、恥ずかしい」
ネーレは慌ててラウルから身を離す。
ラウルはラウルでここにスコットがいることに驚愕していた。
ラウル「スコットさん、俺だよ、ラウルだよーー?
なんでここに来れてるの?気配なんて全然感じなかったのに!」
スコット「姉上の匂いを辿ることなぞ、朝飯前です!!
しかしラウル殿!なぜですか!
なぜ姉上を毒牙にかけようなどと!!」
ラウル「すとーーーっぷ!ネーレさんの事は誤解です!!
毒牙にかけたりしてません!!!」
スコット「なにをーーーー!!姉上は魅力的だろうがーーーーー!!!
毒牙にかけたくないわけないだろーーーーーーー!!!!」
ネーレ「話を聞きなさーーーーーーーーーーーい!!!!!!」
ネーレはどこから取り出したのか、ハリセンでスコットの頭を殴り倒す。
スコットは床に叩きつけられ、頭から煙を出しながら昏倒するのだった。
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ネーレ「スコット良い?ラウルくんは私に酷いことしてないの?
OK?わかる?『はい』か『Yes』で答えなさい?」
スコット「は、はい、姉上。状況は理解したつもりです・・・。」プルプル
ネーレは鬼の様相でスコットに事情を説明していた
スコットはネーレの前で正座をしながらプルプルと震えている。
ラウルは「ネーレさん、パねぇっすわぁ」と思いながら事態を静観していた。
スコット「しかし姉上、なぜこんな危険なことに首を突っ込んだのですか!?
ラウル殿もラウル殿です!
なぜわたしに相談してくれなかったのですか!」
ラウル「全部は話せないから、あくまで俺個人の判断だけど・・・。
騎士団もゼニスキーに加担していると思うよ?」
スコット「なっ・・・!そんなバカなこと!!」
スコットはラウルの言葉に感情的に反応してしまう。
ラウル「スコットさんごめんね?
騎士団全部が黒とは思ってないんだ。
ただスコットさんに伝えた場合、悪いことしてる人にも伝わっちゃって
証拠消されるのが一番怖かったんだ。
俺側の理由はそんなとこだけど、ネーレさんは?」
ネーレ「スコット、私はこの街であなたと暮らすことが出来て幸せよ?
でもゼニスキーがやってきたことを許せないとも感じてた。
ラウルくんから事情をきいて、今しかないって思ったの。
スコットには本当に申し訳ないし、御二人にも申し訳は無いのだけれど・・・
クビになっても何とかなるわ!いざとなったらギルドとかで働くし!
あ!ラウルくんのところに就職するのもいいかもね!」
スコット「なんですと?ラウル殿のところに!?
(永久)就職なんて本気ですか!!?(結婚的な意味で)」
ネーレ「うん、ラウルくん拠点持ちっていってたし。
ちょうど良いかなって(メイド的な意味で)」
スコット「知り合って間もないじゃないですか!
そんな急に判断しなくても!(恋愛的な意味で)」
ネーレ「時間ってそこまで必要かな?それに私ラウルくんなら
ちゃんと大切にしてくれるって思うな!(雇用主的な意味で)」
スコットはネーレの言葉に頭を抱える。
ラウルは二人の会話が絶妙にズレている気がするが、会話の間に入ることが出来ずにいた。
スコットは暫く無言で立ち尽くしていたが、不意にラウルに向き直ると滝のような涙を流し始める。
スコット「あ゛、姉上をよろじぐお願いじまず、ラ゛ウル義兄上ぉぉぉぉぉ」
ラウル・ネーレ「「なんでそうなったの!!!?!??」」
スコット「ここまで姉上がラウル殿の事を信頼されているとは・・・。
出来た弟のように思っておりましたが、まさかの義兄上・・・。
これからも末永くよろしくお願い致します」フカブカドゲザー
ネーレ「ちょっとスコット待って話を――」
ネーレが誤解を解こうと思ったその時、倉庫の入り口が不意に開く。
そこに立っていたのは―――
ラウル「マジか・・・ここで繋がってくんのかよ。」
そこには発掘調査の際に遭遇した、黒衣の男が立っているのであった。
次回、「黒の真実」
仕事が!本当に!!忙しい!!!
すいません、投稿遅れ気味で(言い訳)
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
引き続きよろしくお願い致します。




