「奏手<プレイヤー>」
第15話 「奏手<プレイヤー>」
ラウル「いや~、まさかこんなにお芝居がうまくいくなんてねぇ・・・。
よ、名女優!!」
狸耳「えへへ~~♪もっと褒めるたぬ!あたし、この道で成り上がるたぬよ!!」
犬耳「流石に調子乗り過ぎじゃねぇ?」
狼耳「そーだそーだ!」
鼠耳「私の方が上手くできたのに・・・くやしい・・・」
ラウルは獣人たちとハイタッチをしながら喜びを共有する。
割と即席ではあったが、証拠押さえの時間稼ぎのために獣人たちとリューネには一芝居売ってもらったのだ。
リューネ「わたしはヒヤヒヤしたよ?ラウル。
昨日の相談の後にギルド行って、報告して。
慌てて段取り決めて、セリフ覚えて・・・。
発掘なんかよりよっぽど緊張したよ~。」
リューネは緊張が解けたのか、ぐったりとした表情で椅子に腰かけている。
リューネ「それによく帳簿見つかったね?もう少し遅かったらヤバかったけど。
あんなに早く戻って来てくれるとは思わなかった。」
ラウル「あー、さすがに大事なものを保管してるとこには見張りがいるからね。
おおまかな場所はすぐわかったよ。」
リューネ「でも隠してあったんでしょ?」
ラウル「見張りの人とは、ちゃーんとお話したよ?」
リューネ「……その笑顔で言われると全然安心できないんだけど?」
ラウルの言葉に何かを察したリューネ。
そのまま同行したギルド職員に目線を移すと――
職員A「我々は」
職員B「何も見てません。気付いてません・・・。えぇ、何も見てませんとも。」
職員は咳ばらいを一つつくと、ラウルに声をかける。
職員A「この度は調査協力をいただきありがとうございました。
一先ずラウル殿たちはバルストの街にお戻りください。」
職員B「我々の調査結果についてはわかり次第、
ギルマス・・・クリストフ殿に直接お伝えしますゆえ。」
ラウル「・・・?わかりました。じゃあ後始末はよろしくお願いします。」
ラウルは職員の言葉に少し引っ掛かりを感じたが、深く考えることなくギルドを後にするのだった。
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ブラッカの屋敷にてバルストへ戻る準備をするラウルとリューネ。
そこにチッタが声をかけてくる。
チッタ「ラウル・・・今回はありがとう。わたし、ラウルから色々教わった。
自分が大切にしていることに気付けて嬉しかった。」
ラウル「それはチッタが自分で気づけたことだろ?御礼なんていいって。」
チッタ「でもラウルとリューネに教わらなかったら、多分わからなかった。
だから、ありがとう。」
チッタは飛び切りの笑顔を浮かべると、ラウルとリューネに頭を下げた。
ラウルとリューネは顔を見合わせると、優しい微笑みを浮かべるのだった。
チッタ「もう一つワガママ言っていい?」
ラウル「なーに?」
チッタ「わたしもバルストに行きたい。
今まで処分してた楽器の行方を知りたいの。」
ラウル「それは―――」
ブラッカ「私からもお願いします。」
ラウル「ブラッカさん!?」
声のする方に目を向けるとブラッカが部屋の入口に立っていた。
ブラッカ「我々獣人族としても、事の顛末については知りたいと思っています。
それにチッタにもそろそろ街の外を知る時期だと感じていました。
この子の演奏は、もっと広い世界で育っていくべきものだと
私は思っています。だから・・・お願いします。」
ラウルは少し悩むが、ブラッカに対して答える。
ラウル「チッタの事はチッタが決めることだと思います。
ただ顛末を知る中で危ないこともあるかもしれません。
出来るだけ危険から遠ざけるつもりですけど、良いんですか?」
ラウルの問いにはブラッカではなくチッタが答える。
チッタ「ラウル、それは大丈夫。危ないかもしれないけど覚悟したつもり。
いままで捨てられた楽器たちのこと、ちゃんと知らなきゃいけない。
だからリューネ先生にいろいろ教えてもらわなきゃ。
あたしも、一緒に行くよ。」
リューネ「あ、あたしが先生!?」
チッタ「うん、リューネ先生。古いもののこと、もっと教えて?」
リューネ「先生・・・先生かぁ・・・、しょうがないなぁ、チッタ!
先生が色々教えてあげるね?」
ラウル「(チッタに先生って呼ばれただけで落ちたぞリューネ・・・)」
その様子を見てブラッカは深々と頭を下げる。
ブラッカ「改めてよろしくお願い致します。
我々獣人族に伝わる演奏も少しは役に立つでしょう」
ラウル「え、それってどういう?」
ラウルが戸惑っていると、ブラッカはチッタに何かを促す。
チッタはブラッカの合図とともに、背負っていたリュートを優しく奏でていく。
チッタ「『よろこびののしらべ~~』」
チッタが奏でる音色を聴いた二人は身体が軽くなるのを感じていた。
ラウルは驚いた表情でブラッカを見ると、ブラッカは楽しそうに笑う。
ブラッカ「我々獣人族はみな大なり小なり脈々と受け継いできた能力があります。
多くのものはそれに気づかず生活しています。
チッタの家系は奏手としての血筋を引いています。
彼女の音色には皆様の助けになる力が宿っているかもしれません。
お役に立てばいいのですが。」
ラウル「それって凄いことじゃないですか!!
チッタなんで今まで言わなかったの!?」
チッタ「オバアに口止めされてた。信用できる人以外には言うなって。
だからラウルとリューネは特別。」
ラウル「そっか」
リューネ「・・・ありがとう」
特別。
その一言が、ラウルとリューネには少しくすぐったく、素直に嬉しかった。
ラウル「じゃあチッタ、一緒に行こうか。」
チッタ「ほんと!?」
ラウル「ウィルにも声かけなきゃな。」
チッタ「ウィルも一緒?じゃあフリフリも持ってく!」
ラウルは「一緒に帰れるかわからんよ~」と声をかけるが、
チッタは聞いているのかいないのか、
大急ぎで自分の部屋へ駆けて行ってしまった。
数分後、準備を整えたチッタが再び現れると、ラウルの背中をよじ登る。
ラウルが驚いていると、チッタは丁度肩車の体勢で落ち着いたようだ。
チッタ「ごーごー、バルスト~!しゅっぱつしんこ~~!」
突然始まった肩車行進に、ラウルは思わず苦笑する。
ラウル「いや、まだ出発してないっての!」
チッタ「あ。」
しん――と静まり返った後。
ブラッカをはじめ、その場にいた全員が吹き出した。
屋敷いっぱいに広がる笑い声を聞きながら、ラウルは思う。
きっと今回の旅は、また賑やかなものになる。
そんな予感とともに、彼らはバルストへの帰路につくのだった。
次回、「潜入捜査」
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