「強奪の森」
第4話 「強奪の森」
~~~~~~~ 冒険者ギルド内 ~~~~~~~
ラウル・カエデ・ウィルは情報交換をしながら食事を囲んでいた。
ラウル「まずは北のバルストって街を拠点にするのが良さげだねぇ」
カエデ「その辺りならギルドもそこそこ大きいし、色んな依頼も受けられそうね」
ラウル「(やっぱりついてくるの前提かぁ・・・はぁ・・・)」
そんなラウルの内心など知る由もなく、ウィルは話を続ける。
ウィル「バルストの街なら物流も比較的しっかりしてますし、
僕も良く立ち寄るので物資の調達なんかにもご協力できるかと!
ちなみに島内の統治について、おふたりはどこまでご存じですか?」
ラウル「んーん(首ぶんぶん)」
カエデ「んーん(首ぶんぶん口もぐもぐ)」
ウィル「じゃあ簡単に島についてもお知らせしますね。
まずこの島は中央にある山脈を国境に、東をベディヴィア王国、
西をガングラン帝国が分割統治している状況です。」
ラウル「へぇ」
カエデ「山脈は越えられへんの?」
ウィル「越えられますよ」
ラウル「じゃあ交流無いのは変じゃね?」
ウィル「普通そう思いますよね」
ウィルは苦笑いをラウルに返す。
ウィル「お互い発掘した過去遺物の情報を隠したがるので」
カエデ「あー」
ラウル「なるほどね」
ウィル「山脈地帯については島内でも強い魔物の巣窟になっています。
いくつか洞窟や遺跡なんかも確認されているようですが、まだ調査の手は
回っていない状態ですね・・・
しばらくは王国領内で、色々見て回ってはいかがでしょうか?」
ラウル「ありがと、ウィルさん!んじゃまずはバルストって街を目指すとして、
この手前にある森は大丈夫?
なんか『強奪の森』なんて大層な名前がついているけど」
ウィル「実はこの森には義賊と呼ばれていた盗賊団が隠れているんですよ~。
そんなことから呼ばれ始めた通称で、元々は無名の森でした~」
ラウル「義賊?」
カエデ「義賊ぅ??」
ラウルとカエデは聞きなれない『義賊』という言葉に、同時に頭をひねる。
ウィル「この盗賊団、元々は領主の荷馬車しか襲わなかったんですよ。
だから義賊って呼ばれてたんです。
領主の評判も良くないので、住民たちの勝手な解釈なんですけどね」
カエデ「呼ばれてた、ってことは最近は違うん?」
ウィル「そうなんです。最近は商人や冒険者たちも被害に遭っているようで。
僕らの認識が甘かったといえばそれまでなんです。ただ・・・」
カエデ「ただ?」
ウィル「商売仲間からの話だと森の中で騎士団の姿を見たって話があるんです」
ラウル「そりゃ盗賊相手だから騎士団が追いかけてても普通じゃない?」
ウィル「それはそうなんですが、その方のお話だとどうやら
騎士団と盗賊たちが会話していたように見受けられたと・・・」
三人はしばし黙り込んだ。
ラウル「まぁここで考えても何か断定できるって事でもないか。
取りあえずは気を付けながら森を抜けるしかないんでしょ?
こうみえてカエデ姉も強いし、まぁ何とかするよ」
カエデ「そうそうこう見えて強いねん!
ってラウルー?姉ちゃん弱そうに見えるってことー!?(ジト目)」
ウィル「そうですね・・・我々も護衛を増やしながら慎重に行動します~」
ウィルも笑ってはいるものの表情はどこか浮かない。
商いを生業にしている彼らにとっては深刻な問題なのだ。
話を終えるとラウルたちはウィルとの再会を約束し、ギルド前で別れた。
ぶんぶんと手を振るウィルの姿が、どうしても小さな少女に見えてしまい、
ラウルとカエデは密かにほっこりとしてしまうのであった・・・
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カエデ「で、ラウル。これからどーするの?」
ラウル「今日はもう移動できる時間はないし、ギルドで宿取って休もう?
大きい街の方が物流も良さそうだし、長居する理由も無いよね」
使い込み傷が目立ってきた片手剣を眺めながら、ラウルは今後の計画を口にする。
カエデ「へー、初心者の割にちゃーんと考えてるじゃない偉い偉い(ぐりぐり)」
ラウル「頭ぐりぐりやめて・・・教えてくれた師匠が優秀だったんだよ~」
カエデ「可愛いとこあるわね~~うりうり~~」
ラウルが周りを見ると、夕日が港町を赤く染めていた。
ラウルはウィルにもらった地図を広げる。
強奪の森。
バルストの街。
そしてその先にも広がる見知らぬ街やダンジョン。
まだ見ぬ景色を思い浮かべながら、ラウルは小さく笑った。
ラウル「明日も楽しみだなぁ」
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青年「くっそ・・・ゲオルグのくそ野郎・・・好き勝手やりやがって・・・」
ひとりの青年が木々の間を縫うようにして駆け抜けていく。
後方からは松明を持った集団が、青年への包囲網を狭めていた。
適当な大岩の陰に隠れながら、青年は吐き捨てるように呟く。
青年「地形を押さえられてるし、ジリ貧だな。
どこかで交渉に切り替えるしかねぇか・・・?」
???「おーおー、まだ割と冷静で安心したぜ、クルーゼ。
これなら落ち着いてお話できそうだな?」
青年「何っ!?」
次の瞬間、後方から頭部に衝撃を受けた青年は、気を失いその場へ倒れ込む。
現れた大柄の男はニヤニヤと笑いながら青年を担ぎ、その場を後にするのであった。
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翌朝、宿を出たラウルとカエデは港町を出発し、『強奪の森』手前まで歩を進めてきた。
カエデ「当たり前だけどここまでは順調やね?
街道沿いだとそらトラブルは少ないか。どうラウル、拍子抜けした?」
ラウル「何組か冒険者も見かけてるし、騎士団もいたよね?
魔物が出ても対応されてんだろうし、腕試しって意味では残念かな」
順調な旅に安堵するも、物足りなさを感じるラウルとカエデ。
ただラウルは騎士団の様子に何か引っかかるものを感じるのだった。
ラウル「(騎士団の連中、なんかカエデ姉のことばっかり見てたよな?
別に冒険者の女性なんて珍しくないだろうに・・・)」
カエデ「ラウルなんや?何考え込んでんねん?」
ラウル「いや騎士団のやつら、やけにカエデ姉のこと見てるの気になってさ」
ラウルはぼんやりと考えを巡らせながら思っていることを口にした。
カエデ「(なんや・・・!嫉妬?嫉妬なんか!?やった!
これは急に何か風が吹いてきたで!)」
カエデはラウルの言葉を都合よく解釈し、心の中でガッツポーズを取る。
ぐるぐると考え込むラウルをよそに、口元を緩めながら上機嫌に歩くカエデなのであった。
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街道に沿って森の中を進んでいくと、岩肌と木々に挟まれて道が狭くなっている場所が近づいてきた。
周りには人通りもなく、野生動物などの気配も感じられない。
ラウル「カエデ姉・・・さすがにおあつらえ向きな場所過ぎん?」
カエデ「いかにも待ち伏せに使われそうな場所やね・・・。
周囲の警戒を怠ったらあかんで、ラウル?」
ラウルは無言で頷き、警戒を強める。
二人は普段通り、お互いの死角を補いながら前方へと進んでいく。
やっと安全な場所まで抜けられそう――そう思った時、前方の木陰から数本の矢がラウルたちを目掛けて飛来してきた。
カエデ「(狙いが緩い・・・?ただ無視できん本数か・・・!)
ラウル!いったん後方退避!」
カエデの声とほぼ同時にラウルは後方へ跳び、余裕をもって矢を回避する。
回避できたと一息つく間もなく、後方から短剣を手にした盗賊が三人襲い掛かってくる。
盗賊の内二人はカエデを左右から挟撃する形で襲い掛かってきた。
カエデは得物の大剣を構えると、薙ぎ払いの要領で盗賊の動きをけん制し、攻撃を受け流す。
ラウルは片手剣を構え、相対した盗賊の刺突をいなしつつ、側頭部に向けて蹴りをお見舞いする。
男「ぐっ!?」
あっさりと蹴りを受けた男は短い叫び声をあげて道端に倒れ込んだ。
遠目に盗賊が気絶したのを確認すると、ラウルはカエデの方を視線を向ける。
そこには彼女の一撃で、吹き飛ばされる盗賊2人の姿が映ったのだった。
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盗賊を撃退したことで、俄かに静寂が訪れる。
カエデは茂みの方へ視線を向け、叫ぶ。
カエデ「そろそろ姿見せぇ!?見えとるぞ!」
カエデが檄を飛ばすと、新たに三名の盗賊が弓を構えながら現れた。
中央の盗賊「へぇ・・・それなりにやるじゃねぇか・・・。
事前の情報通り、楽しめそうだな」
ラウル「(事前の情報通り?)」
この島で自分たちを知る者など、ほとんどいないはずだ。
ラウルは盗賊の言葉に眉をひそめるのだった。
次回、「ちょっと聞きたい事が」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
もし知りたい設定などありましたら、幕間などで説明できたらと思います。




