「大切だって思うこと」
第13話 「大切だって思うこと」
ラウルはチッタとともにブラッカの屋敷に戻ってきた。
まずは経過報告しようとラウルがブラッカを探していると、
ブラッカ「おお、ラウルさん。おかえりなさい。収穫はありましたかな?」
リビングで絵を描いているブラッカから声をかけられたのであった。
ラウル「はい、ブラッカさん。
多分というかほぼ間違いなく原因はわかりました。」
ブラッカ「なんと!?この短時間でわかるものなのですかな!?」
ラウル「まぁラッキーだったのもあるんですけどね・・・。
一先ずリューネと話してからでもいいですか?」
ブラッカ「もちろんです、それならばもう少し続きを楽しませていただきますね」
ブラッカはそういうと再び筆を取る。
描いているのはリビングの窓から見える街の景色だった。
ちなみにチッタはラウルたちの会話をよそに、ソファに座りながらリュートを奏でている。
ラウル「すごく上手な画ですね。
僕は全然描けないんですけど、上手だけじゃない気がします。」
ブラッカ「お恥ずかしい限りです。
私なんかよりも上手い絵描きはたくさんいるでしょう。しかし――」
ブラッカは街の風景を眺める。
ブラッカ「この街を愛して描いているという点だけは、少々自信がありますな。」
ラウル「なるほど・・・。
街のことを好きな気持ちが筆に乗ってる、ってことなんですかね。」
ブラッカ「もしそうなら、ありがたいですな。
・・・できればリューネ様の機嫌が良くなっていると良いのですが。
ちょっと怖いです、あの方。」
さっき怒鳴られたのが効いたのだろうか。
どこか怯えた表情のブラッカを見て、ラウルはちょっと面白いなと思うのだった。
********************************************************
ラウル「リューネ~?片付け終わった~~?」
リューネ「あ、ラウル?入っていいよ~。」
ラウル「じゃあお邪魔しますって、なんかおかしいな?」
ラウルは疑問に思いつつも宝物庫の中に入る。
そこは先ほど見た宝物庫とは全く別の部屋になっていた。
ラウル「すっげ!?なにこれ。短時間でこんなに整理できるものなの?」
リューネ「これくらいならあんまり時間かからないよ。
しかし獣人たちはみんなこんな感じなのかな?
残ってるものだけでも博物館クラスの品がいくつかあったの!」
リューネはプリプリしながらラウルに報告する。
その様子を見てラウルは思ったことを口にする。
ラウル「リューネってさ、遺物とか出土品になると急に熱くなるよね。
なんでそんなに好きなの?」
リューネはラウルの質問に首をかしげる。
リューネ「どうだろ・・・。意識したことなかったなぁ。
遺物を触ってる時は知らないこと嬉しいって感じだけど。
出土品とかは・・・うーん・・・。うまく説明できないけど。
例えばこの壺とかきっと昔の人が何かの為に作ったもので、
その気持ちも全部まとめて大切にしなきゃって思う・・・のかな?」
リューネは自信なさげに応えるが、ラウルは何か腑に落ちた表情をしていた。
リューネ「どしたの、ラウル?」
ラウル「いや俺もなんかモヤモヤしてたんだけど。
やっと言葉に変えられそうでさ。」
ラウルは一呼吸置くと、リューネに自分の気持ちを語る。
ラウル「俺はリューネみたいな気持ちで昔のものは見れないんだ。
勿論リューネの気持ちを否定するわけじゃないし、
そこまで想像力を働かせることが出来るのってすごいと思ってる。
さっきのリューネの言葉、きっと思いを引き継いでいくってことを
大切にしてるんだなって思った。
俺は物だとすれば『誰に』もらったものかを大事にしてるんだと思う。
貴重なナイフよりも、師匠にもらったナイフの方が大切に思えるんだ」
ラウルは言葉を探すように少しだけ視線を泳がせ、それから続きを口にした。
ラウル 「でもさ。『大切に思う』って部分はリューネの気持ちと一緒だと思う。
価値を感じる理由は違うかもしれない。
俺の大事なことと、リューネが大事にしてることは本質は一緒かな?
だから全部を同じようには理解できなくても、リューネの気持ちを
大切にすることは出来るんだなって」
ラウルは気持ちを言い終えるとニシシと笑っている。
リューネ「そっか。」
リューネはそう返しながら胸の奥が温かくなるのを感じた。
自分たちが大切にしてきたものを、ラウルは全部理解したわけじゃない。
それでも大切にしていることを理解してくれたことが、嬉しかった。
その時、二人とは別の声が、部屋の入口の方から聞こえてきた。
チッタ「じゃあチッタは音で思い出せることを大切にしてるのかな?
楽器そのものを大事にしてるつもりはなかった。
でも、どんな音が出るのかはずっと大事にしてた気がする。
その音を聴くと、楽しかったり、嬉しい気持ちになれたりするから。」
ラウル「そういう考え方もあるんだと思うよ、チッタ。
自分でちゃんと気付けたってすごいと思うよ。」
ラウルに言葉を返してもらったチッタは、ラウルの側まで来てニコーッと笑っている。
その様子がなんだか可愛らしくて、ラウルはチッタの頭を優しく撫でるのだった。
チッタ「そう考えると、楽器が無くなっちゃうのは寂しい。
わたしはわたしの楽器を演奏したら、楽しい気持ち、思い出せる。
でももしかしたら、聴く人は全然違うこと思い出すかもしれない。
オバアが作った楽器で、大事なこと思い出せるのかも。
そう考えたら、やっぱり楽器が無くなっちゃうのはダメな気がしてきた。」
リューネ「そうね。モノのその先にあるものが大事ってこともあるわよね・・・。
そこはわかる気がする。
遺物を『どう使って欲しかったのか』って考えることあるもの。」
チッタ「えへへ。チッタとリューネ同じとこあるんだね。もう友だちだ。
ふぉーえばーふれんど!」
リューネ「ちょっと。急に距離縮まり過ぎじゃない?フフフ♪」
リューネとチッタが笑いあえてる様子を見て、ラウルも暖かい気持ちになるのだった。
ラウル「さて、そろそろブラッカさんのとこ戻ろうか。色々お話しないと」
3人は数分前とは全く違う表情で、宝物庫を後にするのだった。
************************************************************
ラウル「―――ということが分かったんです。」
ブラッカ「なんと、そんなことが・・・。」
ラウルは街中で分かった事をブラッカに説明をする。
ラウル「僕自身の考えですけど、商人の言う通り、本当に皆さんの楽器だったり、
保管していたものが渡された先で大切にされているなら良いんです。
今のところ、不幸になってる人はいないので。でも・・・。」
チッタ「族長。チッタはやっぱり楽器が無くなるのはダメって思ってる。
みんな音楽好き。いつも街のどこかから音楽が聞こえてくるのが、
チッタたちの日常だし、楽しいって思えること。
その音が減っていくのは寂しい・・・」
ブラッカ「チッタ・・・。
ラウルさん、調査ありがとうございます。
依頼としてはここまでで十分です。
あとは我々の方で調査を―――」
ラウル「いや、約束してんの僕ですし。明日の取引は僕行きますよ?
あ、依頼とは関係ないんで。報酬上乗せとかも考えないでくださいね?
僕が、自分で約束したことなんで、えぇ。」
ブラッカ「そんな!それではこちらの気持ちが・・・。」
ラウル「いや、自分のことなんで。いや本当に。
なんか分かったらブラッカさんに伝えるかもしれませんけど。
いや本当についでなんで。えぇ。」
ブラッカはラウルの後ろにいるリューネに目を向ける。
リューネは苦笑いを浮かべながら『諦めた方が良いですよ』とジェスチャーで伝えてきた。
ブラッカ「ラウルさん、心からの感謝を・・・。」
ラウル「ちゃんと聞いて~~~?依頼分の仕事は終わってるので!
あとは!!こっちの!!!都合です!!!!」
ラウルは頑なに主張するが、周りは優しい表情で彼を見つめるのだった。
次回、「わたしラウルくん、いま商人さんのうしろにいるの」
割と内面というか価値観のお話でした。
読者のみなさんの価値観も大事にできたらと思う今日この頃。
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
ご感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
引き続きよろしくお願い致します。




