「ちょっとそこのお兄さん、お話いいですか?」
第12話 「ちょっとそこのお兄さん、お話いいですか?」
ラウルは慌ててチッタを追いかけていくと、ローデリアの比較的大きな通りにたどり着いた。
楽しそうに演奏する人、風景画を描いている人、酒場からは何人かの人が大声で歌っている声も聴こえた。
しかしひとつ裏の通りに視線を移すと、道すがらで寝ころんでいる人も何人か見受けられた。
ラウル「(モノに拘らない生き方って言えば聞こえはいいけど……。俺には真似できそうにないな)」
彼らが不幸なわけではない。
むしろ今を楽しむことにかけては、自分よりずっと上手なのだろう。
だが、その自由さにどこか落ち着かなさも感じてしまう。
ラウルは価値観の違いに首を傾げながらも、すぐに意識を切り替えた。
ラウル「(おっと、今は考え込むんじゃなくてチッタ追いかけないと)」
ラウルは通りの奥の方でくるくると回っているチッタの姿を目で追いながら、通りを駆けていったのだった。
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ラウル「ちょっとチッタ!!どこまで行くの!?」
チッタ「あれ?ラウル。何してるの?」
ラウル「チッタに聞き込みの案内して欲しかったんだけど・・・急に走って行っちゃったんでしょ?」
チッタ「あ~そっか~。ごめんね~。」
こいつ全然悪いと思って無ぇなとラウルは思った。
チッタ「でもどこで聞き込みするの?さっきも行ったけど、誰でもあの部屋には入れたから、
どこで聞いても変わらないんじゃない?」
ラウル「そーだなー、チッタの知り合いで最近会わなくなった人とか、街を離れた人とかっている?」
チッタ「うう~ん、いないと思うな~。街から離れたりして暫くいなくなったら流石にわかると思う。」
ラウルは手を顎に当て、考え込む様子を見せる。
ラウル「それじゃ逆に最近街に顔を出すようになった人とかいるかな?」
チッタ「う~~~、どうなんだろ。人族の商人とかは良く出入りしてると思うけど、全部の顔なんて覚えてないよ~。」
ラウル「それはそうだよな・・・、あれでもウィルの事は覚えてたの?」
チッタ「ウィルは可愛い。もっと磨けば光ると思う・・・。私の演奏で一緒にステージに立って見せる!」
チッタはウィルにさっきのフリフリドレスを着せるだけでは飽き足らず、ステージデビューも狙っていたようだ。
ウィル逃げて、出来れば全力で。とラウルは心の底から祈りを捧げた。
ラウル「う~~~~ん、なんも絞り込み出来ないか。取りあえず人が多い所に案内してくれる?」
チッタ 「酒場なら昼間からみんないるよ~」
ラウル 「働いてないの?」
チッタ 「この間大きな演奏会が終わったから、今はみんな休憩中~」
ラウル「じゃあ行ってみよっか」
ラウルはチッタに連れられて、比較的大きめの酒場に移動するのだった。
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ところ変わって、チッタが良く来るという酒場の店内。
ラウル「・・・チッタってまさかお酒飲まないよね?」
チッタ「???演奏で良く来るだけだよ?」
ラウル「良かった・・・流石に子どもにお酒飲ますほど自由ではなかったか。」
ラウルがホッとしていると、後から声をかけられる。
???「ちょっとそこのお兄さん、お話いいですか?」
ラウルが振り返ると、そこには若い獣人の男性が立っていた。
背には黒い羽。
脚は猛禽を思わせる鋭い鉤爪。
柔和な笑みを浮かべているが、細めた瞳の奥だけが妙に鋭い。
???「人族なのにこんな時間から酒場なんて珍しいね?何か用かな?」
チッタ「あれ、ネグロ。やっほ~。この間は演奏役で呼んでくれてありがとうね~。」
ネグロ「チッタのリュートは素晴らしいからね。また演奏お願いするよ。」
ネグロと呼ばれた獣人は、どうやらこの酒場で働いているようでチッタとも顔なじみの様だ。
彼はチッタとあいさつを交わすと、改めてラウルに向き直る。
ネグロ「おっと、失礼。私はネグロと言います。この酒場の主人のようなものです。
以後、お見知りおきを。それであなたは――」
チッタ「ラウルはラウルだよ。今ね、探し物してる途中なの。」
チッタはネグロにラウルを紹介?する。
探し物という言葉にネグロの表情がわずかに変わった気がした。
糸のように細い目の奥で、何かを計算しているようにも見える。
ネグロ「ほぉ、探し物ですか。ラウルさん、良かったら簡単に事情をお伺いすることは出来ますか?」
ラウル「そうですね、ええっと―――」
ラウルは状況をかいつまんでネグロに説明する。
ネグロは時折頷きつつ、静かにラウルの話を聞いている。
ラウル「――ーというわけなんです、ネグロさん。何か最近お店の中とかでトラブルの話とか聞きませんでした?」
ネグロ「残念ながらトラブルみたいなことはお客様からも伺ってないですねぇ。
ギルドの方も時折巡回いただいてますが、他に問題が起きている様子も見受けられませんでした。」
ラウル「そうですか・・・。何にも手掛かりが無いのもなぁ。どうやって調べたらいいんだろうね。」
チッタ「そろそろ戻る?リューネの片づけも終わってるかもよ?」
ネグロ「あ、そうそう。面白い話を一つ思い出しました。」
ラウル「面白い話?一体何ですか?」
ラウルがネグロに話の内容を促すと、ネグロはラウルに向けて指を一本立てた。
ネグロ「ここは酒場です。私もお客様と楽しくお話したいので何か注文はございませんか?
初回サービスとして1杯のご注文でお話をさせていただきますよ?」
ラウルはネグロの商魂逞しさに苦笑いを浮かべるが、それならばと紅茶を注文し、カウンター席に腰掛ける。
チッタは興味がないのか、空いたスペースに座り込み、背負っていた楽器のチューニングをし始めた。
フブキは楽器が珍しいのか、チッタの横に座って尻尾をパタパタと振っている。
ラウル「さて、じゃあお話を伺えますか?」
ネグロ「ラウルさん、酒場の入り口近くにいる4人組が見えますか?」
ラウルは入り口側に少し目線を移すと、ネグロに向かって頷いて見せる。
ネグロ「彼らは最近酒場に顔を出してくれるようになった、比較的ご新規のお客様です。
気の良い人たちなので、暴れ回ったり他のお客様にご迷惑をおかけするような方々ではありません。
ただ、最近は毎日の様に出入りいただいて、たくさん注文もいただいています。
今まで一生懸命働いたご褒美なんですかね?勤勉な方は我々獣人では珍しいのですが・・・」
言外に、羽振りの良さに違和感を感じていることをラウルに伝えるネグロ。
ラウル「そりゃ面白い。儲け話のひとつくらい分けてもらえるかなぁ?」
ネグロ「それは伺ってみないとわかりませんねぇ」
ラウルは最後にネグロと一言を交わすと、4人組の元へ移動を開始した。
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ラウル「お兄さん方、こんにちは!なんだか楽しそうだねぇ?良いことあったの?」
犬耳獣男「おお?なんだぁ?急に。」
鼠耳獣女「なーに?今楽しく飲んでるのよ~?」
ラウル「昼間なのに豪華に楽しんでたからお祝いなのかなーと思って!お祝いなら一杯くらい奢りますよ?」
狼耳獣男「お祝いじゃないんだけどな。最近始めた商売が割とうまくいってんだわ~。」
狸耳獣女「たぬたぬ~♪おかげでパーティーパーティー♬」
ラウル「(狸ってたぬたぬ鳴くっけ?)へー、それは羨ましいなー。上手く行ってるんなら何よりですね!」
狼耳「俺らじゃ使い道も思いつかねぇもんだしな。」
犬耳「これもあの商人様様だな!ガラクタでも良いからお金に変えてくれるんだから」
鼠耳「しかも持って行ったものは・・・なんだっけ?キャンディ?ソルティ・・・?」
狸耳「チャリティだたぬ~♪お金ないひとでも楽器演奏したい人に配るって言ってたたぬ~?」
ラウル「(チャリティ・・・ねぇ・・・)」
確かに言葉通りであるならば、とても意義のある、高尚な精神の基で生まれた事業であろう。
しかしバルストで生活していた時に、そのような話は聞いたことが無い。
最近始まった事業かもしれないが、ギルドに噂話の一つくらい転がっていそうなものである。
そしてガラクタ、楽器という単語。怪しさの匂いが濃くなっていく。
ラウル「ち、ちなみにガラクタなんてどこにあるの?この街、そんなにゴミとか落ちてるような感じしないんだけど?」
狼耳「おう!族長のところにたくさん転がってるぞ!」
鼠耳「なにあなた。興味あるの?明日も取引あるし、荷物持ちしてくれるんなら連れてっても良いわよ?」
あまりにもドストライクな回答に、ラウルは目頭を押さえながらため息をつくのであった。
次回、「大切だって思うこと」
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