「獣人族の宝物庫」
第11話 「獣人族の宝物庫」
ブラッカ「さて、それでは早速宝物庫にご案内しようと思うのだがよろしいだろうか?」
ラウル「あ、はい。そんな簡単に入って大丈夫なんですか?」
ブラッカはラウルたちの先へ立ち、宝物庫の方へ誘導してくれるようだ。
ブラッカ「そもそも鍵などかけてもないし、誰でも入れるのですよ。
我々はあまりものに固執しない性格なのでな。みなさんが考える宝物にあまり価値を感じないのです。」
ラウル「じゃあ、みなさんの宝物ってなんなんです?」
ブラッカ「良い演奏ができた日。 昨日できなかった踊りが今日できるようになった日。
仲間と歌い、笑い合った時間。
家族を愛したこと。 誰かに愛されたこと。
我々が代々受け継いできた宝とは、そういうものなのですよ」
ラウル「それは・・・素敵ですね。」
ブラッカ「しかし他の事に無頓着過ぎて、明日食べるものもない生活もザラなのですよ!
あっはっはっはっは!」
ラウル「確かにそれは困っちゃいますねぇ!あははははは!」
フブキ「わふーーーーん!!」
ラウルはブラッカの価値観も素敵だと思った。
同じ価値観をそのまま受け入れるのは難しいかもしれないけど、分かってあげられる部分もたくさんあった。
フブキはよくわかっていないが、ラウルたちが楽しそうなので一緒に吠えていた。
リューネは感心した様子で耳を傾けている。
チッタにとってはあまりにも当たり前のことだったのだろう。
果物を片手に、のんびりとラウルたちの後ろをついていくだけであった。
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ブラッカ「ここが我々が宝物庫と呼んでいる場所です」
扉が開いた瞬間、ラウルは言葉を失った。
積み上げられた箱。 壁に立て掛けられた武器。 無造作に転がる壺や彫像。
宝物庫というより、大型の物置である。
リューネ「ちょっと!これ結構貴重な出土品っぽいんだけど!!なんで床に転がってるの!?」
チッタ「あ、そーなの?全然知らなかった」
リューネ「本気!??!?あー、これなんて年代物の杖じゃない・・・。
この間の杖と文様の類似性が・・・。
あ!この銅剣、どこかで見たことある!!ねーーーえ!!どうしてこうなってるの!?」
リューネは頭を抱えながら、部屋の中の物色を止めることが出来なかった。
ブラッカ「はっはっは!やはり見る人が見れば違いますな!
我々にはピンと来ないものばかりでしてな~。
それで、チッタ。なぜお前はこの部屋のものが無くなってることに気付いたのだ?」
ブラッカに名前を呼ばれたチッタは、首をかしげながら当時の事を思い出す。
チッタ「うーんと、なんでだったんだっけな・・・。
あ、そうそう。昔オバアが演奏してた楽器を探してたんだけど、
どうしても見つけられなかったんだよね。
だから代わりの楽器も探したんだけど、いくつか見つからなかったんだ。
私が確認したのは楽器だけだから、もしかしたら他にも無くなってるかも?」
ブラッカ「だ、そうなんですが如何ですかな?」
チッタとブラッカの言葉にリューネがワナワナと震えている。
リューネ「ちなみに目録は?」
ブラッカ「ありません」
リューネ「管理者は?」
チッタ「いないよ~」
リューネ「定期的に棚卸はしてる?」
ブラッカ「なんですかな、それは」
リューネ「・・・。」
ブラッカは悪気なく答え、チッタは楽しそうにくるくると回っている。
リューネはその様子を見て、静かにブチ切れた。
リューネ「暫く立ち入り禁止・・・」
ブラッカ・チッタ「「え?」」
リューネ「し!ば!ら!く! 立ち入り禁止って言ったの~~~~!!
私が整理するから、誰も入っちゃダメ!!!
ラウルもフブキもダメ!!!良いから出て行って~~~~~~~!!!」
ラウル・フブキ・ブラッカ・チッタは勢いに負けて部屋を追い出されると、リューネは部屋の扉を閉めて整理を始めたようだ。
リューネ「私が良いって言うまで立ち入り禁止ね!ラウルは周辺の聞き込みよろしく!
ブラッカさんとチッタさんは、何か思い出したらラウルに報告して!以上、解散!!」
ラウル・ブラッカ・チッタ「「「は、はい!!」」」
あまりの剣幕に呆気に取られているラウルにブラッカが声をかける。
ブラッカ「と、取りあえずチッタをこのまま同行させますので聞き込みに行かれますか?」
ラウル「あ、ありがとうございます。そうさせていただきますね。」
思わぬところでリューネの新しい一面を知れたラウルであった。
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ラウル「ねえ、チッタ」
チッタ「なあに?ラウル」
ラウル「チッタはどういう時に宝物庫に行くの?」
ラウルは聞き込みに向かいながら、チッタに素朴な疑問をぶつけてみる。
チッタ「チッタは自分の楽器で欲しい音が無い時によく行ってる。」
ラウル「欲しい音?」
チッタ「同じ楽器だとしても、ひとつひとつ音色がちょっとずつ違う。たとえば太鼓。
同じ素材で作った太鼓でも、作り手が違うとやっぱりちょっと音が違う。
だからこの音が欲しいのに~って時に、あの部屋を漁ってた。」
ラウル「そっかー、そういうもんなんだなぁ・・・。
じゃあチッタはお祖母ちゃんの音がお気に入りだったのかもね?」
チッタ「オバアの音・・・?なにそれ?」
ラウル「え?さっきおばあちゃんの楽器探してたって言ってたからさ。
チッタはきっとお祖母ちゃんの楽器の音色を覚えていて、その音が好きだから探してたのかなって」
チッタ「オバアの音・・・。じゃあチッタの音もあるってこと?」
ラウル「きっとチッタの音色もあるんだよ。俺にはわからないかもだけど。
チッタたちはそれぞれの音が違うのがわかるんだと思う。
その人だけの音をちゃんとわかってあげれるのって、なんか良いなぁ。」
チッタはラウルの言葉を頭の中で反芻させている様だった。
チッタ「チッタの音・・・オバアの音・・・ご先祖様の音・・・?全部違う・・・!!」
チッタは大きく瞳を見開いた。
チッタ「ラウル!わかんない!わかんないんだけど、何かわかりそうな気がする!!
何これ、ぞわぞわする!チッタの音、チッタだけの音、もっと鳴らしたい!!」
ラウル「ちょ、ちょっと落ち着いて!どこ行くの!!チッタ~~~!?おーーーーい!」
チッタは興奮したまま急に駆け出していく。
ラウルは慌ててその後を追うのだった。
次回、「ちょっとそこのお兄さん、お話いいですか?」
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引き続きよろしくお願い致します。




