「家 族」
第9話 「家族」
獣人族の村へ出発する当日。
出発まではまだ時間がある。
ラウルはフブキとともに街を散歩しながら、旅支度の最終確認をしていた。
フブキ「わっふぅ♪わっふぅ♬」
ラウル「ご機嫌だなぁ、フブキ~。多めにフブキのご飯も持っていこうな~。」
フブキ「わおん!はっはっはっはっは。」尻尾パタパタ
フブキとともにのんびり歩いていると、ラウルは街中で見知った姿を見かけた。
ラウル「お、スコットさーーーん!!」
スコット「おぉ、ラウル殿!奇遇ですな!」
先日の発掘調査で一緒に戦い抜いたスコットであった。
彼は先日と変わらず騎士の装いであるが、何故か花屋の前で誰かを待っているような素振りであった。
ラウル「珍しい場所にいるね、スコットさん。どうしたんです?」
スコット「これからセオドリク隊長の奥様のお見舞いなんです。
今は姉上が花を選んでおられるのです!そう、我が人生最優先事項である姉上が!」
花屋の前でスコットが迷演説を行っていると、花屋の中からは照れた表情のメイド姿の女性が現れた。
???「ちょっと、スコット!!恥ずかしいから大声出さないでよ~。」
スコット「すみません、姉上!私の姉上への気持ちが迸ってしまいました!!はっはっは!」
???「もうやめてよ・・・恥ずかしい・・・で、こちらの方はどなたです?紹介してもらえるかしら?」
スコット「姉上!こちらの方が先日調査の時に助けて下さったラウル殿です!
線は細いですが、優秀な剣の使い手ですぞ!」
???「えええええええ!?この人がラウルさん!?
もっとこう……逞しい方を想像していたのですが・・・・・・。
こほん!ラウル様、初めまして。私スコットの姉のネーレと申します。
その節は弟が大変お世話になりました。」
ネーレはラウルに向かって綺麗なお辞儀で挨拶をする。
深く頭を下げた拍子に、ラウルの目線にネーレの豊かな胸元が飛び込んでくる―――が、
スコットからのどす黒いオーラを感じたラウルは全力で目線を修正し、ネーレに向かって挨拶を返す。
ラウル「はじめまして、ネーレさん。ラウルと言います。
こちらこそ先日の調査時はスコットさんに大変お世話になりました。」
ネーレ「こんな愚弟であればいつでもこき使ってあげて下さい。
この年になっても姉離れしてくれないので、私も困ってまして・・・。
今度改めてお礼をさせて下さいね?」
ネーレは人懐っこそうな笑顔をラウルに対して向ける。
地底族特有の小柄さ、ネーレの個人の魅力である穏やかさ、先ほど垣間見た
魅惑的なスタイルが相まって、ラウルはドギマギとしてしまう。
スコット「ラウル殿?」ゴゴゴゴゴ
ラウル「い、いえ!お気遣いなく!」
スコット「そうですか!」ニッコリ
姉が絡むとスコットが怖いことを実感するラウルであった。
ラウル「ん゛ん゛!!スコットさん。
さっきセオドリクさんの奥さんへのお見舞いって言ってたけど、俺も御礼がてら
一緒についてっても良いかな?」
スコット「おぉ!それは隊長も喜ばれるでしょう!是非ご一緒されてください!」
ネーレ「そうですね、奥様も気さくなお方なので大丈夫かと思いますわ」
ネーレ&スコット姉弟に連れられ、ラウルとフブキは、依頼へ出発前にお見舞いに向かうのだった。
ネーレ「まあ!可愛らしい子犬さんですね♪」
フブキ「わふ?」
ラウル「フブキっていうんです。あとこいつ子犬じゃなくて狼なんです。」
ネーレ「えええええええ!?そうなんですか!?」
フブキ「わふぅ♪」
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コンコンッ
スコット「隊長、奥様。スコットです。宜しいでしょうか?」
セオドリク「スコットか、どうぞ。」
スコット「失礼致します!」
スコットが入室の確認をすると、三人と一頭は部屋の中に入っていく。
セオドリク「おぉ、ラウル殿もいらっしゃったのか!」
???「それに・・・可愛いお客様もいるのね。」
フブキ「わふぅ?」
室内にはベッドの上で身体を起こす鬼族の女性と、それに寄り添うセオドリクの姿があった。
ネーレ「エレノア奥様、体調は如何ですか?今、お部屋の中整理させていただきますね。」
エレノア「いつもありがとうね、ネーレ。あなた、あの方がラウルさんなのね?」
セオドリク「そうだよ、エレノア。先日私たちを助けてくれたのが彼だよ。」
セオドリクはそういうとラウルの方に向き直る。
セオドリク「ラウル殿、先日はスコットを助けていただきありがとうございました。
あなたがいなければスコットも無事では無かったでしょう。」
エレノア「ラウル様、はじめまして。セオドリクの妻のエレノアと申します。
私からもスコットを助けていただいた御礼を言わせてください。
本当にありがとうございました。」
二人そろって頭を下げられ、ラウルは慌てて対応する。
ラウル「そんな、御二人とも顔を上げて下さい!
僕の方こそ何度もスコットさんには助けられましたんで!」
エレノア「もしそれが本当でも、お礼を言いたいのよ。
スコットも、そしてネーレも私にとって家族同然なのだから・・・ゴホッゴホッ」
ネーレ「奥様、御身体に触ります。少し横になられて下さい。」
エレノア「ありがとう、ネーレ。でも大丈夫よ?今日はなんだか調子が良いもの。それに・・・。」
エレノアがベッドの下に手を伸ばすと、いつの間にか近づいていたフブキがその手に鼻を押し当てている。
ラウルが知る限り、フブキが初対面の相手に自ら近寄ることは滅多にない。
フブキはエレノアの手の匂いを確認すると、ぺろぺろと手を舐め始めた。
エレノア「ふふっ、くすぐったいわ。こんなに可愛いお見舞いなら大歓迎ですもの。」
ラウル「あぁ、すいませんすいません!フブキ~ちょっとおいで?」
フブキ「わふぅ?」
フブキはラウルに抱きかかえられるが、「なんで?」という様な表情をしていた。
エレノア「フブキちゃんって言うのね。ラウル様、可愛いペットですわね。」
ラウル「違いますよ?」
エレノア「???」
ラウル「フブキは俺の家族です」
エレノアは少しの間、キョトンとしたような表情を浮かべたが、すぐに微笑みに代わる。
エレノア「ラウル様、大変失礼いたしました。大切なご家族だったのですね」
ラウル「失礼なことなんてないですよ。名前だけでも憶えて下さいますと嬉しいです」
その会話の間も、離せ~と言わんばかりに身体を捩るフブキ。
その様子に一同の表情も暖かいものに変わるのだった。
スコット「そろそろお邪魔いたしましょう。隊長失礼いたしました。」
ラウル「急に押しかけてすいませんでした。」
ネーレ「奥様もお大事になさってくださいね」
エレノア「皆様、ありがとうございました。あなた。」
セオドリク「そうだね、エレノア。みんな外まで見送ろう。」
部屋にエレノアを残し、移動する四人と一頭。
暫くするとネーレがセオドリクに声をかける。
ネーレ「セオドリク様、奥様のご様子は・・・?」
セオドリク「最近は割と元気だがね・・・。根本的な治療方法はまだ見つかっていないんだ。」
スコット「隊長、あまり思いつめないでください。
我々姉弟も御二人の事を第二の家族と思っておりますゆえ・・・。」
セオドリク「ありがとう、スコット。大丈夫だよ。」
ラウルはためらいながら声をかける。
ラウル「立ち入ってしまい、申し訳ありません。奥様のご容体は良くないんですか・・・?」
セオドリク「あぁ、数年前から病に伏せてしまっていてね。
治療方法を探しているんだが、なかなか・・・。」
スコット「御二人は我々姉弟がバルストに来てから面倒を見ていただいた大恩があるのです。
必ず治療方法を見つけてみましょう!」
セオドリク「ありがとう、スコット。ほら、そろそろ巡回の時間だ。早く行くんだよ。
ネーレもありがとう。領主様の御屋敷での御勤めも頑張るんだよ?」
スコット&ネーレ「はい!」
セオドリクは屋敷の前で、ラウルたちが見えなくなるまで見送った。
セオドリク「必ず妻を助けて見せる・・・。我が魂を悪魔に捧げてもだ・・・!」
慟哭に似たその祈りを聞き遂げるのは、神かそれとも―――
次回、「獣人の街 ローデリア」
忙しくなってしまうと投稿が安定できず申し訳ありません。
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
ご感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
引き続きよろしくお願い致します。




