「生き延びるために」
第6話 「生き延びるために」
目の前の戦闘が激しさを帯びていく中、リューネは必死に頭を働かせていた。
リューネ「(今のところ戦闘は膠着してる・・・。
でも激しすぎて私やゴロウズが加勢できるレベルじゃない!それに――)」
リューネが通路に向かって駆けだそうとすると、漆黒の人物から殺気が飛ばされてくる。
ゾクゥッ!!
それだけでリューネは足がすくんで上手く動けなくなってしまう。
リューネ「(加勢も無理、助けも呼べない。
こうなったらここにある遺物をあきらめて逃げる方が良い。でも――)」
リューネの思考は一つの違和感にぶつかる。
リューネ「(あの人物の行動はやっぱりおかしい・・・。スコットさんに攻撃が偏り過ぎてる!
今まで遭遇したレイダーの攻撃パターンと違い過ぎる!)」
目の前の人物の行動が過去経験した襲撃パターンとあまりにも違う。
そのため、逃げの一手を打つ判断を下すことが出来ない。
リューネ「(逃げたは良いものの後ろから追撃されたらそれこそ被害が大きくなっちゃう!
どーする?どーする?今は私が一番考える余裕があるんだ!考えろ!考えろ!)」
リューネは唇を噛んだ。
怖い。
もし自分の判断を間違えれば、誰かが死ぬかもしれない。
リューネは思考の渦に呑まれていくような感覚に陥りながら、必死で打開策を考える。
その時、焦るリューネの肩にそっと手が置かれた。
レオナ「ひとりでグルグル悩んじゃダメよ?お姉さんたちもついてるんだから♪」
トーマス「そうだぜ?戦うのは・・・ちょーっと無理だが、考えることなら力になれるはずだ」
ゴロウズ「みんな一緒にここから帰ろうぜ!俺、そろそろお腹空いてきちゃったよ~?」
3人の言葉にリューネはハッとする。
リーダーはこうすべきだ、みんなに指示するべきなんだ、そんな固定概念に囚われていた自分に気付く。
リューネ「・・・そっか」
リューネは小さく呟いた。
レオナたちの顔を見る。
みんな怖いはずだった。レオナの手だって震えている。
それでもみんな怖い気持ちと必死に戦って。
わたしに笑顔を見せてくれた。
みんなで生きて帰るために。
リューネは大きく深呼吸すると、両手で顔をパチンと叩き、3人の方へ向き直る。
リューネ「ごめん、みんな。私、一人で考えなきゃって思ってた」
トーマス「謝らなくていい」
ゴロウズ「一緒に考えようぜ!」
レオナ「そういうこと♪」
3人の言葉にリューネは思う。
――この人たちと一緒に旅が出来て良かった。
リューネは胸にこみあげてくる気持ちに今だけ蓋をして、3人と推理を組み立て始める。
リューネ 「まず確認。あいつは本当に遺物狙いのレイダー?」
トーマス 「だったらもっと最初から弱い奴・・・俺たちを狙って人質にとる方が効率がいい」
レオナ 「でもこちらを襲わないばかりか、私たちが行動を起こさない限り私たちに注意は払ってこないわね」
ゴロウズ 「ずっと戦ってばっかりだぞ!それにあいつ、スコットばっかり狙ってないか?」
リューネ 「!」
リューネは改めて戦闘の様子を窺う。
黒衣の人物はラウルの攻撃に対して迎撃や回避行動はとるものの、自分から攻撃する時は圧倒的にスコットを狙っているように見える。
リューネ「狙いはスコットさん・・・?確証はないけど、一度スコットさんが標的と仮定しましょう。
スコットさんが標的なら、あいつはここで仕留めたいはず。
その状況で、あいつがされて一番嫌なことは何?」
レオナ「私たちに逃げられてしまうこと?」
トーマス「特にスコットには逃げられたくないから、あそこまで追い詰めてるってことか」
ゴロウズ「一番嫌なことっていったらスコットが無事ってことだよね?
そうなるとラウルたちに援護できるやつが来るのが嫌って事だよな?」
リューネ「そう考えると、通信遺物が作動しなかったのは本当に故障なのかな?
タイミングが出来過ぎてる。」
リューネはレオナが持っている連絡用の遺物を指差しながら、自分の考えを3人に伝える。
手の中の遺物を見つめたまま、レオナは何かを考え込んでいるようだった。
トーマス「仮に何らかの妨害だとしたら、一体いつから計画してやがったんだ・・・。」
ゴロウズ「今はそれどころじゃないぞ!この状況を崩すんだったら誰かが助けを呼ばないと!」
リューネ「そうできれば一番良いんだけど・・・。レオナ?どうしたの?」
レオナは手の中の遺物を見つめたまま、小さくつぶやく。
レオナ「もしかしたら・・・やれるかも」
レオナの声に3人は顔を見合わせるのであった。
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一体どれくらい時間が過ぎただろう。
ラウルは剣を持つ手の痺れを気にしつつ、相手の攻撃を受け流す。
ラウル「いい加減、こいつ強すぎるな!強くて速くてタフって反則じゃない!?」
スコット「ラウル殿!集中を切らさぬよう!」
ラウルとスコットは二人掛かりで何とか黒衣の人物の攻撃を耐え忍んでいたが、
徐々に押されている感覚に焦りを覚え始めていた。
このままでは―――悪い想像が過ったその時、
リューネ「ラウルーーーーーーーーー!!!」
リューネが大きな声でラウルに声をかける。
ラウルがリューネの方を確認すると手に持った何かをこちらに投げる様が見えた。
リューネ「とりゃあああああああ!!」
リューネの気合の声とは裏腹にぽーんと音がしそうな緩い軌道で弧を描きながら、
何かがラウルたちと黒衣の人物の間に落ちてくる。
咄嗟に防御行動に移るラウルたち。
しかし、投げ込まれた何かはポトッという音で落ちただけで何かが起こる様子はない。
何事かとラウルとスコットがリューネの方を向くと、リューネは冷静に時間を数えているようだ。
リューネ「3・・・2・・・・・・イマ!!」
リューネの声に反射的に地に伏せるラウルとスコット。
それとほぼ同時に何かは激しい光を辺りにまき散らし、広間の中は白い光に包まれるのであった。
何事かと様子を窺っていた黒衣の人物はまともに光を浴びてしまう。
リューネ「お願い・・・!」
リューネは小声で合図を送る。
その合図にゴロウズは全速力で通路に向かって走るのだった。
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この出来事の少し前――
ゴロウズ「えぇ!!?俺が助けを呼びに行くのか!?」
リューネ「声が大きい!」
ゴロウズは作戦会議中に大きな声で戸惑いの声を上げる。
リューネ「いい?もう一度説明するけど、今レオナが遺物に少し手を加えてる。
上手くいけば時限性の閃光弾みたいなものになるみたい。
それで目くらましが出来た瞬間に、ゴロウズ、あなたが逃げるのよ。」
ゴロウズ「でも、俺よりもトーマスとかが逃げた方が安心じゃないか?」
トーマス「何を言ってる?俺が逃げて、もし追われたらすぐに追いつかれてしまうよ。
それにお前にはガッツもあるし、デカい声だって出せる。適任だろ?」
ゴロウズ「でも・・・。」
リューネ「ゴロウズ」
それでも渋るゴロウズにリューネは声をかける。
リューネ「大丈夫。みんなゴロウズだから出来るって思ってる。あなたが適任。
だからみんなを助けるために、気合い入れて?」
リューネはゴロウズにガッツポーズをとって見せる。
その姿はゴロウズに気合を入れているというよりも自分自身を鼓舞しているように見えた。
ゴロウズはフッっと息を吐くとリューネを真っすぐ見つめる。
ゴロウズ「わかった。なるべく早く他のみんなに伝える。だから死なないでな?」
リューネ「大丈夫。私たちも残って何もしないわけじゃない。信じて。」
リューネもゴロウズを真っすぐに見据え、自信の籠った声で答えるのだった。
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場面は戻り、現在。
ゴロウズ「うおおおおおおおおおおおお!
(絶対にみんな助けるんだ!だから、動け!俺の脚ぃぃぃぃぃぃぃ!)」
ゴロウズは精一杯のスピードで通路に向かって駆けていく。
しかし黒衣の人物も強烈な閃光に視界を奪われながら、それでも足音と気配だけを頼りに斧を振りかぶる。
ラウル「そうは問屋が!」
スコット「おろしません!!」
ラウルは剣で斧を受止め、その隙にスコットは盾衝<<シールドバッシュ>>で相手を吹き飛ばす。
少し甘く入ったものの、ゴロウズから引き離すことには成功する。
リューネ「(がんばって!ゴロウズ!)」
リューネは心の中でゴロウズに声援を送ると、次のプランを始めるために準備を進めるのだった。
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ゴロウズ「ハァッ、ハアッ、やっと通路抜けたぞ・・・。だ、誰か~~~~聞こえるか~~~!!助けて欲しいんだぞ~~~~!!」
通路を抜けたゴロウズは大声を出しながらもと来た道を引き返していく。
次の瞬間、物陰からゴロウズの前に人影が目にも止まらぬ速さで飛び出してきた。
ゴロウズ「あ、あんたは!?」
次回、「疑念」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
ご感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
引き続きよろしくお願い致します。




