「到 着」
第3話 「到 着」
調査隊がバルストの街を出発して丸一日が経過した。
道中交代で警戒をしているが今のところ危険な目には合っていない。
スコットが姉不足のストレスを解消しようと、必要以上に広範囲の索敵を行っているおかげで、
危険度の高い魔獣も予め回避、もしくは撃退が出来ており、隊全体にも和やかな空気が流れている。
そんな中、隊の荷車に腰掛けながら、ラウルとリューネはのんびりおしゃべりをしていた。
リューネ「・・・でね、こっちの端を握って、右に回すと・・・」
ラウル「おぉ!展開して盾っぽくなった!?」
リューネ「本当に盾かどうかはわからないんだけど、この展開する機構は何かに使えそうなんだよね。」
ラウル「へ~。面白いね。展開して盾に使えるなら。小手とかに付けたら面白そうだね・・・。
重さはどうなんだろ?うを!?結構重いなぁ・・・。軽くて硬いならありがたかったのに。」
過去遺物を興味深そうに触っているラウルにリューネは声をかける。
リューネ「でも本当にキミは変わってるね?人族なのにそんなに遺物に興味あるなんて」
ラウル「そーかな?だってカッコ良くない?」
リューネ「鬼族の中ではそういう感覚の人もいるけど。人族の知り合いは、何に使えるのか
聞いてくる人はいても、細かい機構にまで興味を示した人なんていなかったよ?」
リューネの返事を聞いたラウルは、改めてなんでだろう?と自問自答してみる。
ラウル「うーん、なんでだろうね。別に身近にあったわけじゃないハズなんだけど・・・」
言葉とは裏腹に、ラウルには何かを思い出すような感覚があった。
しかしグラーフとの生活の中に遺物なんてなかったよなぁという思いから、それ以上に思考することは無かった。
リューネ「でもこうして自分の好きなことお話しできるの嬉しいかも・・・♪
洞窟での約束も、ちゃんと果たせたしね。
でもあの時のラウル、ハンマーに夢中過ぎ(ぷくーっ)」
ラウル「あー・・・そんなこともありましたっけねぇ・・・。
だ、だって変形する武器なんて初めて見たんだよ?
あれすごかったよね? リューネのハンマーみたいなやつってよく発掘されるの?」
リューネ「なんか話題すり替えてない?良いけどさ・・・。
コホンッ。そもそも発掘されてそのまま使っているわけではないのです。
ほとんどが発掘後、鬼族の手を加えて使えるようにしてる。
そもそも用途が明確にわかる遺物の方が少ないんだよ?だからこそ私たちが調査するんだし」
トーマス「よー。ラウルくんにリューネ。何話してんだ?おーおー、たくさん遺物広げちゃって。
俺らと話すより熱心に説明してんじゃないか?」
トーマスの言葉に何故か気恥ずかしくなったリューネは少し声を荒げる。
リューネ「そ、そんなことないよ!?だってみんなは遺物の事知ってるじゃん?
それに盗賊に捕まってた時に、ラウルにはちゃんと説明するって約束してたの!」
トーマス「そーかそーか、それは良いこと―――」
ゲシィィィィ!!!
レオナ「邪魔ぁぁぁぁぁぁ!!」
トーマス「ぐへぇぇああぁぁぁ!!!」
トーマスが返事を言い終わる前に、レオナに後ろから蹴り飛ばされる。
トーマスは吹き飛ばされ、荷車の前方へゴロゴロと転がっていった。
トーマス「レオナ!?な、何すんだよ!?」
トーマスは何とか立ち上がりレオナに向かって抗議の声を上げるが
レオナ「アナタハナニヲシテルノカシラ?
セッカクリューネガラウルクントナカヨクハナシテルトコロナノ。
アタタカクミマモルノガナカマッテモンジャナイカシラ?
イヤ、ナカマトイワズトモゼンジンルイガソウスベキナノヨ?
ワカッテルノ?ドウシテクレヨウカシラ?ウフフフフフフフフフフフフ」
トーマス「いや、ちょっと・・・なんかごめんなさい。許してください、お願いします(土下座)」
レオナ「あ、リューネにラウルくんいたのね?ちょっとトーマス借りるわね~(ズルズル)」
トーマス「チョ、チョットレオナサン!?サッキアヤマッタジャナイデスカ!?」
レオナ「ウルサイワネ、チョットオシオキサセナサイ?
タダ、リューネノハズカシソウナカオノブンダケハテカゲンシテアゲルワ」
トーマスが引き摺られていく様を見て、ラウルが何とも言えない表情をしていると
リューネ「あの二人仲良しでしょ?ちっちゃい頃から一緒にいるんだって。
それに許嫁の間柄みたいだよ?」
ラウル「許嫁ぇ!?ほへー。そんな関係の人たち初めて見たわ。」
リューネ「見ての通りトーマスの事レオナが振り回してるんだけど、トーマスはブツブツ言いながらも
付き合ってあげてるし。
レオナもなんだかんだ言ってトーマスに優しいから、今回も手加減してくれると思うよ。」
そんな二人の後姿を眺めていると、今度はスコットが索敵から帰ってきたようだ。
スコット「お二人ともお疲れ様です!」
ラウル「スコットさんもお疲れ様です。でも見回り当番でもないのに、スコットさんも精が出ますね?」
スコット「ハハハハハ!身体を動かしてないと落ち着かないんですよ!しかしラウル殿。
カエデ殿はとてもお強いのですな。先ほど魔獣を撃退した場面に出くわしましたが、
見事な手際でした!」
ラウル「身内が褒められるのってなんか気恥ずかしいですね・・・。
ぼくの剣術の師匠なんで誇らしいです。」
スコット「うむ!ぜひお手合わせしたいほど見事でした!
あれこそ姉力というべきでしょう!」
ラウル「?????あねちから?????」
スコット「ときにラウル殿、貴殿にはカエデ殿とは別にもうひとり姉がいると聞いたが誠か?」ズズイッ
ラウル「え、えぇ。いますけどもう一人・・・。え?あねちからの説明は?」
スコット「う゛、羨ましいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(血涙)」
ラウル「ねぇ、スコットさん、話聞いてよ!ねぇってば!」
本気で悔しがるスコットにラウルの言葉は届かない。
ラウルは遠くから聞こえてくるトーマスの叫び声を聞きながら「本当に大丈夫かな・・・今回の調査」と
一人不安に思うのであった。
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調査隊「みなさまお疲れ様です!やっとダンジョンに到着しました!
入口周辺に調査隊がキャンプを設置しますので、冒険者のみなさま、
ならびに騎士団のみなさまは明日からの調査護衛の準備を進めながらお待ちください!」
調査隊の案内を聞きつつ、ラウルはダンジョンの入り口に歩を進める。
岩肌に大きな口を開けたように広がる入口は奥の方まで見通すことはできないが、
光の届く範囲だけでも、削られたような壁面や崩れた石組みが見え、人の手が入った痕跡があちこちに残されていた。
ゴロウズ「これがここまで大規模な調査隊が組まれた理由だよ。」
ラウルが眺めている背後からゴロウズが声をかける。
ゴロウズ「大体の場所はもっと規模が小さいし、人の手で発掘された跡が見えない場所が殆どなんだ。
この大きさでしょ?規模の大きいものが出入りしてたんじゃないかって、研究施設は大興奮さ。」
ラウル「なるほどねぇ。こりゃ明日からの調査も気合い入れないとなぁ」
ゴロウズ「中に入ったら、暫くはまともなご飯ともおさらばだしなぁ・・・。今日はたくさん食おうな!ラウル!」
ラウル「そうだね!腹が減ってはなんとやらだ!」
ゴロウズとともにキャンプに戻っていくラウル。
ラウルは明日から始まる初めての発掘調査に胸をときめかせるのであった。
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―― 一方キャンプ付近の森の中
???「こんなことはこれで最後になりますように」
誰に聞かせるでもなく、独り言をつぶやきながら準備を進める人影が一つ
その手が空けた箱には二振りの黒い斧が置かれていた。
まるで今すぐに使われることを望んでいるかのような斧をその手に握る。
諦めとも後悔ともとれる感情をその瞳に宿しながら、そっと斧を箱に戻すのであった。
次回、「調査開始」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
もし知りたい設定などありましたら、幕間などで説明できたらと思います。




