「出 航」
第2話 「出 航」
モブおじ 「トリステン島行きの船は2時間後に出発するよ~~~」
ラウルは村から街道沿いに順調に旅を続け、いよいよトリステン島行きの船が出る港町までやってきた。
潮風が鼻をくすぐる。
桟橋には大小様々な船が並び、魚を卸す船乗りたちの威勢の良い声と商人たちの呼び声が混ざっていた。
初めて見る海の景色に、ラウルはしばし足を止める。
ラウル「ここまでは順調っと。
2時間後に出航か・・・早めに乗船券買わなきゃな」
ラウルはモブおじの声を頼りに、乗船券売り場へと走っていく。
大きい船とは聞いているが、券が売り切れては元も子もないことは田舎育ちでも理解している。
ラウル「乗船券くださーい!」
売場のお姉さん「はーい、ご人数は?」
ラウル「1名!トリステン島までお願いします!」
受け答えは明るく、笑顔も自然。
その整った容姿と人懐っこさは、初対面の相手にもよく効く。
売場のお姉さん「トリステン島までですね。50Gになります」
ラウル「ありがとうございます!」
売場のお姉さん「よ、良かったら出航前の船も見学できますよ?」
ラウル「ほんとですか!?行ってみます!」
軽やかに駆けていくラウルを見送りながら、お姉さんは小さく肩を落とした。
「あーもう、もう少し勇気出せば良かったぁ……」
ラウルは自分に向けられた好意に無頓着ではないが、この程度で相手にしていたら姉たちにボコボコにされるため
華麗にスルーするスキルを得ていた・・・割としたたかな性格である
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ラウルは足早に乗船場まで足を運んでいた
ラウル「これが連絡船か~~でっけ~~~~」
連絡船という言葉から、「そこまで大きくないのでは?20名乗りくらいか?」なんて想像をしていたラウルは驚きの声を上げることになった。
形は平べったく、中にはたくさんの座席が見えている。
ざっと50名以上は座れるだろうか?
船上にはデッキが設置されていて、波が無ければ上がれるようだ。
そしてこの船には『帆がついていない』。
目を引くのは船尾に取り付けられた二基の『過去遺物』だった。
現在では再現不可能な古代技術の産物。
遺跡やダンジョンから発見され、一部はこうして人々の生活を支えている。
ラウル「初めての船が『遺物持ち』とはツイてるかな?」
ラウルは幸先のよさから上機嫌に船の周りを観察していた。
すると遺物を確認している鬼族の一団を見つける。
ラウル「(あれが鬼族・・・遺物を扱える唯一の一族かぁ・・・かっけぇ・・・)」
鬼族。
男は二本角。
女は一本角。
村にいるときに行商人から聞いた鬼族の特徴と目の前の集団は一致していた。
ボンヤリと見てると自分とそれほど歳も変わらないような少女が周りにてきぱきと指示を出している。
周囲の様子から彼女がこのグループのリーダーであることがよくわかった
ラウル「(みんな指示をよく聞いて動いてるもんねぇ・・・良いチーム)」
それほど時間を置かず、整備が終了したようで一団は解散していく
ラウル「さーて乗船前に何か腹ごしらえでもしようかなーっと、ってウン?」
ここは港町。人が集まれば飲食店や酒場も繁盛している。
そして酒が入ればどこでも野暮な人間は湧くものである。
先ほどの鬼族の一団に集団で絡む冒険者たちの姿が見えた。
鬼族も毅然として対応しているのでまぁ大丈夫だとも思ったが、鬼族の死角にいる冒険者が怪しい動きをしているのをラウルは見逃さなかった。
ラウル「(あれは麻痺毒かなぁ・・・
こんな場所で仕入れられるのは純度は低いんだろうけど・・・
カッコ悪・・・)」
急速に冷え込む思考
ラウルはその冒険者が麻痺毒をどこに投げ込もむかが「視えてしまった」
そこからのラウルの動きは迅速だった。
地面を踏み込み、その瞬間には相手との距離が消えている。
麻痺毒を持った冒険者の足元に滑り込み、毒の持ち手を蹴り上げる
横目に既にハンマーを構えようとしていた鬼族の少女が目に入った
「(ありゃ、余計な真似だったかな??)」
一瞬思案したラウルだったが、もうこのままやってしまえと半ば投げやりな気持ちで動きを再開させる。
ポーーーンと音が出そうな毒瓶を全員が見つめる中、ラウルは大地をしっかりと踏みしめ、両掌を冒険者の腹部に叩き込む
ラウル「よぉぉぉぉいしょっっっっと!!」
諸手を食らった冒険者は後方の仲間を巻き込みながら吹き飛ばされ、数名が大きな水しぶきを上げることになる。
呆気にとられた残りの冒険者の眼前に、ラウルの回し蹴りが直前で停止する
ラウル「あんまりカッコ悪い真似すんなよ・・・冒険者の先輩方?」
ラウルの気迫に押されていく冒険者たち勝負あったと姿勢を正したラウルが伸ばした右手の先に・・・。綺麗に毒瓶が治まった。
数瞬の沈黙の後、無言で冒険者に麻痺毒を投げつけるラウル
その後には「アババババ」と声を上げる三下の姿が残されるのであった・・・
鮮やかかつ一方的な対応から、周囲の村人や鬼族からも拍手喝采
最初こそ手を挙げて応えていたラウルだが、騒ぎを聞きつけた憲兵を遠くに視認した瞬間、一時退却を決めた某三代目盗賊のような鮮やかに逃げる途中で、近くにいるモブおじに声をかける。
ラウル「余計かとは思うけど、教会かお医者さんに声かけといて!
怪我人出たら後味悪いからさ!」
その様子に周囲はさらに歓声を上げるのだが、遠くから鬼族の少女がムスッとした顔で睨んでいた・・・
少女「よくわからないけど良いところ取られた気がする・・・
なんなのあの人・・・」
彼女の手には大きなハンマーが握られており、ラウルが反応しなければ彼女が冒険者を叩きのめしたであろうその場合は物理的な被害が拡大していたわけだが・・・
少女はちらりとラウルが逃げた方を見る。
「変な人・・・」
が、すぐに興味を失ったように視線を外した。
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少し時間は進み、船は順調にトリステン島へ進んでいる。
事情聴取を避けるために船へ逃げ込んだラウルは船上の旅を楽しんでいた。
ラウル「海鳥が船と並んで飛んでるの可愛いねぇ・・・和むわぁ」
先ほどの一件でちょっとした有名人になってしまったラウルはデッキまで退散し、隅っこの方で和んでいるのであった。
ラウル「港がもうあんな遠くに見える~。遺物付きってすげぇなぁ。
明日の午前中には島に到着するってのも驚きだねぇ…。
もう少し景色を楽しみますか・・・ん?何か悪寒が・・・(ゾクッ)」
そんなラウルの後方から気配を消して近づく影。
余程のことでなければラウルも気配に気付けるあたり、近づく者のスキルの高さがうかがえる。
ラウルのすぐ後ろに近づいた影は次の瞬間――
「見つけたよ~~~~ラウル~~~~!」
後からラウルを抱きしめる。
ラウル「ゲゲェッ!?カエデ姉っ!?」
カエデ「なーんでうちを置いていくん!この甲斐性無し!
姉ちゃんも一緒についていくからなぁ!」
ラウル「村出る方向も偽装したのに!」
カエデ「誰がラウルに野外行動のやり方を教えたと思うとるん・・・?
カエデ姉ちゃんを舐めすぎDA☆ZO☆?(ニッコリ)」
ラウル「(ゾクッ・・・!)」
そこにいたのは村から無事に撒いたはずのカエデの姿であった
次回、 「ようこそ!トリステン島」
もう1話くらい連投します




