「ホーム」
第16話 「ホーム」
ラウル「んで、なんでグラ爺がここにいんの?村でなんかあった?」
グラーフ「村には何もねぇよ。お前の姉ちゃんは相変わらず元気に村の外を飛び回ってるが・・・」
カエデ「そいつの差し金でラウル連れ戻しに来たんちゃうの・・・?ギロリ」
グラーフ「あー、それはねぇ、それはねぇ。あいつは今でも自信満々に『最後にはラウルはあたしの元に帰ってくる、もっと良い男になって・・・!』って言ってるわ」
ラウル「姉ちゃん・・・orz」
ラウルのもう一人の姉はいろんな意味で絶好調を継続しているらしい。
ラウル「じゃあ、尚更なんでここにいんの?」
グラーフ「お前らの様子が気になった、てのもあるんだがな。友人に会いに来たんだ。
会えたら少しフラフラしてから村に戻るさ。王国側に目を付けられたらたまったもんじゃないからな・・・」
グラーフは言葉を一区切りすると、クリストフの方をじろりと睨む。
グラーフ「なあ?クリフ、久々だな?」
クリストフ「ご無沙汰しております、グラーフ様・・・まさかラウルくんの関係者とは・・・」
グラーフ「少しは驚いたか?久々にお前の顔を見れるとは思わなんだ。
しっかしお前も、娘が出来て丸くなったなぁ、はっはっは!」
クリストフ「あんまり意地悪言わんでください・・・」
アイシャ「パパ?この人は・・・?」
クリストフ「あー、この人は」
グラーフ「ただの爺ちゃんじゃよ、お嬢ちゃん。でもラウルの爺ちゃんだからそこは特別かもな?」
アイシャ「ラウルくんのお爺様ですか!?私アイシャと言います!今日ラウルくんの師匠に立候補して、カエデさんに負けちゃって、
でもカエデさんと友だちになったところです!」
リューネ「わたしもラウルの友だち・・・ラウルはわたしの命の恩人・・・」
カエデ「ええぃ、おどれら一気に前に出るな!情報量が多い!」
グラーフ「あっはっは!(コソコソ)あれだな、ラウル、お前もうちょいしっかりしないと刺されるぞ・・・?汗」
ラウル「(コソコソ)肝どころか魂に刻んでるつもりなんだけど、なんでだろうね・・・泣」
グラーフ「じゃあそろそろ行くとするか。」
ラウル「もう行っちゃうの?」
グラーフ「元々お前らと会える方がラッキーくらいに思ってたんだ。まぁ気にすんな。
ラウル、お前は好きに生きて良いんだし、変な遠慮なんかすんじゃねーぞ?
何があっても俺が爺ちゃんってのは変わんねんだからな。」
ラウル「???何言ってんの爺ちゃん。血は繋がってなくても昔からそのつもりだって!」
ラウルの言葉に、その老いた瞳が僅かに揺れる。
グラーフ「あっはっは!こいつはすまねえ!年を取ると変に心配性になっちまってな!気にすんな!
カエデも達者でやるんだぞ?」
カエデ「わかってるでグラ爺。あいつの指図じゃなかっただけで僥倖や。まぁ、元気にしてることだけは伝えておいてや」
グラーフはひとしきり挨拶を済ませ、またギルドの外へ消えて行った。
クリストフだけは怪訝な表情をしていたが、イベント続きで疲れていた一同はその様子に気づくことなく、
それぞれ宿や自宅への帰路へ着くのであった。
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グラーフ「久々だな・・・元気にしてたか?」
???「十数年ぶりか・・・貴様も変わらずだな」
グラーフ「未だに現役同然のお前に言われるたぁ、何かむずかゆいな?」
???「お前の技術も錆付いては無かろう?してどういう要件でトリステン島に戻ってきたのじゃ?」
グラーフ「俺が島外に出た理由も覚えてるよな?あの時の子が今トリステン島にいる」
???「(ガタッ) なんと!まさか全て話したのか?」
グラーフ「バッキャロー、そんな真似してねぇよ。好奇心のまま、この島に来ることを決めやがった」
???「そうか・・・因果だな・・・」
グラーフ「まぁ何にも気付かねぇ可能性の方が高いんだが、気になっちまってな。
王国の眼もあるから俺は表立って動けない、だから・・・」
???「そうか、わかった。見える範囲で見守ろう」
グラーフ「助かる。」
???「して・・・この名は?」
グラーフ「あぁ、『ラウル』ってんだ・・・」
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翌朝―――
朝食を済ませたラウルとカエデは、定刻通りギルド職員の元にやってきていた・・・
受付男「わー、ラウルさん本当に来たんですね・・・?内見諦めたりしません?僕、責任取れないですよ?」
ラウル「まだ見る前から責任問題とか考えないで下さいよ・・・大丈夫ですってば」
受付男「お連れ様も宜しいんですね?」
カエデ「釈然とはしとらんが、まずは内見してからやと思ってる。今日はよろしくお願いします。」
受付男「はぁ・・・わかりました。じゃあ行きましょうか、内見」
受付男「もう間もなく到着しますけど、何度も言いますが少し変わった物件ですからね?」
ラウル「少し・・・?」
受付男「――――変わった物件ですからね?」
受付男は少し不満げに拠点となる場所の門を解錠していく
門を開くと建物と周りのスペースが見える
ラウル「でかっ!ひろーーーっい!」
カエデ「これはビックリやな。なんか何でも出来そうやな」
しっかりとした建物と広い庭部分、馬を管理するだけなら十数頭は飼えそうだ。
カエデ「建物も綺麗やし、芝も管理されてて雑草もあんまりないしなー。ギルドも大変やね。
あんまり自信ない言うから手を入れてないかと思うたわ。」
受付男「あぁ、はい。手は入れてないんです・・・」
カエデ「は?」
受付男「さっき僕が解錠したの見えてました?結構久々に開けたハズなんですよ。
なんでこんなに綺麗なのかなー?あははー?びっくりだなー?」
ラウル・カエデ「・・・・・・。」
受付男「ゴホン・・・設備が揃っているのは当然で、以前は上級冒険者パーティが拠点として利用していたからなんです。
10年以上前に解散してしまったと記録には残っていましたが、色々と多彩な方々だったようで。
当時は鍛冶場も併設していたようですよ?」
カエデ「聞く限り、そんな優秀そうなパーティだったのに解散してもうたん?」
受付男「その辺の詳細は記録にも残ってないのでわからないんですが・・・何らかの理由で解散したらしい、としか。」
ラウル「・・・・・・」
~~~~~~~ 建物内部探索 ~~~~~~~
受付男「それじゃあ中も見ますか?」
ギィィ……重そうな音を立てながら扉が開く。
しかし中へ入ったラウルたちは思わず目を丸くすることとなった。
ラウル「うわぁ……」
カエデ「思ったより全然綺麗やな……」
広い。とにかく広い。
正面には食堂として使われていたであろう大きなテーブル。
十人以上が座っても余裕がありそうだ。
壁際には古びているが立派な本棚。
薪を焚ける暖炉まで備え付けられている。
年月は感じる。だが不思議と荒れてはいなかった。
受付男「おかしいんですよねぇ……」
ラウル「ん?」
受付男「さっきも言いましたけど久々に来たって言ったじゃないですか?」
カエデ「せやね?」
受付男「埃・・・少なすぎと思いません・・・?」
受付男は真顔だった。
ラウル・カエデ 「…………」
受付男「むしろ誰か掃除してるなら僕が聞きたいです」
カエデ 「聞きとうないわ!!」
ラウルはくすりと笑いながら部屋を見回す。
その時だった。
ラウル「?」
壁際に置かれた椅子。
その上に一冊の本が置かれている。
不思議なことに埃を被っていない。
まるで昨日まで誰かが読んでいたかのようだった。
ラウル「前に来た時にもここに置いてあった?」
受付男「そんなわけありません」
カエデ「だから怖いっちゅーねん!!」
ラウルは何となく本を手に取る。
中には達筆な文字が並んでいた。
『今日の戦果』
『・・・・・ あの人、魔法強すぎ。折角レアモンスターだったのに剥ぎ取れる素材が無くなっちゃった・・・』
『しばらく夕食ではお酒抜き決定』
ラウル「なんだこれ」
カエデ「日記・・・かな?」
受付男「昔の冒険者の日誌ですかね?名前は掠れて読めませんけど」
ページをめくる。
『酒代を減らせ』
『本人たちは薬代だと言い張っているが、パーティの財政がやばい』
さらにページをめくる
『今日はヤバかった・・・無事に生還できてよかった・・・』
『***は明日にでもリベンジだ!なんて言ってたけど一度ちゃんと休んだ方が良い。
あいつのことはあとでちゃんとシメておこう』
ページをめくるたびに、名前も顔も知らない誰かたちの笑い声が聞こえてくる気がした。
生活感が伺える文章にラウルは思わず笑ってしまうが、周囲を見回し少しだけ表情を変える。
本棚。
食卓。
椅子。
暖炉。
誰かが笑っていた場所だ。
誰かが帰ってきた場所だ。
今は誰もいない。
それでも不思議と寂しさより温かさを感じた。
ラウル 「いい場所だったんだろうな」
ひとりごとを呟いたラウルの横顔は優しい顔だった。
受付男 「二階も案内します?」
ラウル 「お願いします!」
~~~~~~~ 物件:2階 ~~~~~~~
二階には長い廊下が続いていた。
左右に並ぶ六つの個室。
冒険者たちの私室だったのだろう。
ラウル 「うわー」
カエデ 「部屋いっぱいやな」
受付男「もう一つ上の階も同じ構造ですね」
ラウルは一番手前の部屋のドアを開ける。
そこには予想よりも綺麗に整えられた内装があった。
ラウル 「ベッドまである」
カエデ 「しかも状態ええな」
ラウルは何となく窓際へ近づく。
そこから見える景色は美しかった。
バルストの街並み。
少し先に見える中央広場。
遠くに見える山脈。
ラウル 「前住んでいた人も、ここからの景色が好きだったんだろうな」
その瞬間。
チリンと後ろで音がした。
カエデ 「ん?」
受付男 「え?」
カエデと受付がギギギと振り返る。
誰もいない。
だが閉まっていた筈の隣の部屋の扉が少しだけ開いていた。
…………。
受付男 「だから言ったじゃないですかぁぁぁぁ!!」
カエデ 「ラウル帰ろか!」
ラウル 「見てくる」
カエデ 「行くなや!!」
ラウルは苦笑しながら扉を開ける。
そこには――
椅子の上に綺麗に畳まれた毛布が一枚。
そして机の上に置かれたティーカップ。
まだお茶会の途中だったかのように。
ラウル 「ん・・・女性の部屋だったのかな?」
なんだろう。怖くない。
誰かがいる。そんな気配だけがした。
ラウル 「なぁ」
誰に向けた訳でもなく呟く。
ラウル 「もしまだここにいるならさ」
窓から差し込む光が揺れる。
ラウル 「もう一回、ここを賑やかな場所にしてもいいかな?」
その瞬間。
チリン……
どこからともなく鈴の音が聞こえた。
カエデ 「ラウル?」
ラウルは静かに笑う。
ラウル 「うん」
そして一言。
ラウル「俺、ここ好きだ」
カエデ「ラウル?どしたん?」
ラウル「カエデ姉、ここって誰かが帰る場所だったんだよな。」
カエデ「かつて、だけどな。」
ラウル「うん、わかってる。でも俺、何かここを帰る場所に戻してあげたいって思っちゃった。
ダメかな・・・?」
ラウルは真剣な顔でカエデの方に振り返る。
カエデ「(この子がこういう顔する時は・・・ハァ・・・)」
カエデは一つため息を吐くと、ラウルに向き直り言葉を紡ぐ。
カエデ「幽霊物件なんやろ?」
ラウル「うん」
カエデ「呪われたらどうすんねん」
ラウル「今まで呪われた人いないよ?」
カエデ「じゃあゴーストの類で襲われたら?」
ラウル「その時はどーにかしよ?」
「それに何かに取り込まれるような、そんな怖さは感じないよ?」
カエデ「寝不足になったらどないすんねん?冒険者は体が資本やで?」
ラウル「その時は寝れる・・・努力を・・・」
カエデ「例えば?」
ラウル「例えば?え~っと、うーーーーん・・・添い寝とか」
カエデ「乗った、はよ契約書にサインしよ。スタッフさん早くギルド戻って書類整理しよか」
ラウル・受付男『ええええぇぇぇぇ・・・』
カエデは我先にとギルドへの道を引き返していく。
その後ろを、なんだかなぁという表情で追うラウルと受付さん。
彼らの背後で建物のカーテンが風もないのに揺れていたことに、誰も気付く事が出来なかったのだった。
次回、「久々の狩猟」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
ご感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。
引き続きよろしくお願い致します。




