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Historia de Familia ~家族の物語~  作者: Levia
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「炎の料理対決!:アイシャ」

第14話  「炎の料理対決!:アイシャ」



バルスト冒険者ギルドの食堂は異様な熱気に包まれていた。

視線の中心にいるのは二人の女性。

一人は両手剣使いの冒険者、カエデ。

そしてもう一人はギルド受付嬢にして剣士、アイシャ。

二人はエプロン姿でありながら、強い闘争心を持って睨み合っていた。


カエデ「絶対負けへんからな……!」

アイシャ「望むところよ……!」


観客たちは両者の間に火花が散る様を幻視する。

少なくともそう錯覚する程度には殺気が漂っていた。


おじ「よおし!それじゃ両者調理開始だ!」


即席司会となったおじさん冒険者の声と同時に歓声が沸き上がる。

冒険者たちは賭け札を片手に盛り上がり、酒場の店員たちも完全に仕事を放棄して楽しそうに見物している。

その一方当事者であるラウルは頭を抱えていた。


ラウル「どうしてこうなった・・・」


ラウルの呟きに、隣のクリストフはふふふと笑いながらラウルに語りかける。


クリストフ「良いじゃないか、ラウルくん。

      楽しいだけの騒がしさならギルマスとしては歓迎するよ」

ラウル  「結果、アイシャさんが僕の師匠になってもですか?」

クリストフ「『師匠』だけなら認めようじゃないか、ふふふふふふふ」

ラウル  「oh...」

ゴロウズ 「飯・・・。」


それぞれの思惑がやんわり交錯しつつ、料理大会は進んでいく。

ラウルたちが話し込んでいる間も司会のおじとお姉さんが解説は続いている。

今回はサルモンという魚をメインとする縛りがある様だ。


ラウルが目線を移すとそれぞれのテーブルで準備が始まっていた。

準備を見る限りアイシャは島内で流行り始めた王国風料理(地球で言うところのフレンチっぽいやつ)で勝負するようだとクリストフが説明をしてくれる。


一方カエデのテーブルの様子を見るとラウルにも見覚えのある調理器具や食材が並んでいる。

どうやら村でも食べさせてくれていた郷土料理(地球で言うところの和食っぽいやつ)を作るのかなとラウルは予想した。


アイシャは手際よく調理を進めて行く。

サルモンを軽く焼きつつ、隣のフライパンでほうれん草と茸をバター炒めていく。

さらに隣のフライパンではソース作りを進めている。

フライパンにバターを落とし、溶け始めた黄金色の油に、刻んだ玉ねぎを静かに滑り込ませる。

やがて白ワインが注がれ、豊かな香りが立ち上った。

酒場中の冒険者たちが思わず鼻をひくつかせる。


冒険者A「おい……なんかもう旨そうなんだが?」

冒険者B「まだソースだぞ!?」


外野からの声にアイシャは満足げに胸を張る。

煮詰めたワインへ生クリームを注ぐと、白い液体がゆっくりと黄金色へ変わっていく。

木べらで混ぜるたび、とろりとした艶が生まれる。


アイシャ「ふふん♪ このソースだけでもパン一斤食べられるわよ?」

ゴロウズ「三斤用意しておいてくれる?」


ゴロウズの注文に、周囲から笑いが起こった。

一方カエデは腕まくりをすると、静かに材料を並べていく。

鮭。 茸。 米。そして味噌。

アイシャはサルモンの焼き具合やソースの味を調えながら、パイ生地を伸ばし始めている。

対してカエデは黙々と米を研いでいた。


アイシャ 「カエデさん、料理対決よ?」

カエデ  「知っとるよ?」

アイシャ 「もっとこう、映えるもの作らなくていいの?」

カエデ  「映える言うてもなぁ」


カエデは洗い終えた米を釜に入れる。

その上に茸。一口大に切ったサルモン。刻んだ香草。そして出汁。


カエデ 「食べるんはラウルやろ?」


手は止まらない。

鮭に味噌を塗り込んでいく。丁寧に。何かを思い出すように。


カエデ 「この子昔からな、剣の稽古で転んでは腹減った~言うて。

    寝起きでも腹減った~言うて。」


会場から笑い声が上がる。

ラウルは顔を真っ赤にしながら反論する。


ラウル 「いや、それは成長期だったんだって」

カエデ 「うっさい、審査員様は黙っとき~♪

     ・・・せやからな、こいつが『うまい』言う料理、大体知っとる」


鮭を炭火へ。じゅう、と音が響く。味噌が焦げる香り。

香ばしい匂いが食堂を包み始める。


ゴロウズ 「ぐぅぅぅぅぅぅ(腹の虫)」


全員が振り返る。


ゴロウズ 「腹減ったぁぁぁ」

観客一同 「わかる!!」


一方その頃、アイシャはパイ生地を整えながら眉をひそめていた。


アイシャ 「なんなのかしら」


料理の内容ではない。技術なら負けない。

味にも自信がある。けれど。


アイシャ 「・・・なんかずるいじゃない」


技術ではない。

味でもない。

料理の向こう側に積み重ねた時間が見える。

それが少しだけ羨ましかった。

カエデは炊き上がる釜を見ながら、少しだけ優しく微笑む。


カエデ 「いっぱい食べて、大きなったもんなぁ」


その呟きだけは。ラウルの耳に届いた。


ラウル 「・・・?」


不思議そうな顔をするラウル。

カエデは慌てて顔を背ける。


カエデ 「な、なんでもあらへん!ほら!審査員は黙って待っとれ!」

ラウル 「理不尽!!」


そのやり取りに観客たちから笑いが起こる。

だがアイシャだけは、なぜか胸の奥が少しざわついていた。

技術なら負けていない。 味だって負けるつもりはない。

それでも。

カエデの料理には、自分が持っていない何かがある気がした。

そして数十分後。運命の実食が始まる。


***********************************


お姉さん「ふたりとも調理お疲れ様~♡いよいよ審査員の実食よ~

     先行はアイシャちゃん!よろしくね~」


アイシャは満足そうに頷き、焼き上がったパイを大皿ごとテーブル中央へ運ぶ。

黄金色に焼き上がったパイ生地はキラキラと輝く照りを帯びている。

表面には網目状の模様が刻まれ、立ち上る湯気が食欲を刺激した。


アイシャ 「ふふん♪ 見た目だけじゃないわよ?」


そう言うと、ナイフを手に取る。

食堂中の視線が自然とその手元へ集まった。

ゆっくり。丁寧に。パイの中央へ刃が沈んでいく。


サクッ


小気味良い音が響いた。

同時に閉じ込められていた熱気が一気に解放され、白い湯気がふわりと立ち昇った。

その中に混じるのはバターと茸の香り。そしてサルモンの芳醇な香り。


アイシャ 「サルモンのパイ包み焼き クリームソース仕立てよ!」


ゴロウズは既に涎を垂らして、臨戦態勢である。


ゴロウズ  「まだ食べちゃダメ……?」

クリストフ 「WAIT」

ゴロウズ  「がるるるるるるるる・・・。」


ラウルも思わず唾を飲み込む。

料理の知識は無い。それでもこの料理が一流なのは理解できる。


ラウル  「アイシャさん」

アイシャ 「どう?」

ラウル  「めちゃくちゃ美味そう」


アイシャはラウルの言葉に、心から嬉しそうな顔で笑う。


アイシャ 「うふふ!味の方も期待していいからね♪」


ラウルはわくわくしながらサルモンのパイ包みに手を付ける。

フォークを差し込むと、パイ生地が軽やかな音を立てて崩れた。

中から現れたサルモンは驚くほど鮮やかで、白いクリームソースがゆっくりと皿へ流れ出していく。


ラウル「いただきます」


一口。二口。


ラウル「・・・え?」


アイシャはラウルの反応を見て笑みを深める。

ラウルはサルモンを見つめる。

そしてもう一口。


ラウル 「なにこれ・・・サルモンってもっとこう……川魚って感じじゃん?」

アイシャ「そーね」

ラウル 「でも全然違う」


クリームソース。サルモン。茸。そしてパイ。

別々に主張しているのに全部がまとまっている。


アイシャ「これが私の本気の料理よ」

ラウル 「すげぇ」


その言葉は自然に出た。


ラウル「こんなん食べたことない」


アイシャの目が少しだけ丸くなる。


ラウル 「旅に出なかったら絶対食えなかった・・・。

     これだけでも旅に出て良かったって思いました。」

アイシャ「そ、そうでしょ!もっと褒めても良いのよ!?」

ラウル 「うまい!」

アイシャ「語彙力!!?」


ラウルの横で深く嚙み締めながら料理を味わうクリストフ。

反対側にはグルメ評論家もかくやと言わんばかりの感想を並べるゴロウズ。

その様子を見て観客たちも騒ぎ立てる


野次馬「流石俺らのアイシャちゃんだよ! / これは決まったかな? / 

    さっき食ったばっかなのにむっちゃ腹減ってきた~」


周囲の絶賛を受けながらも、アイシャは何故か落ち着かなかった。

勝負なら手応えは十分あった。

それでもカエデが見せている穏やかな表情が、妙に気になった。



次回、 「炎の料理対決!:カエデ」


読みづらい場所などありましたらご指摘ください。


ご感想などいただけますと執筆モチベーションに直結しますので、とてもありがたいです。


引き続きよろしくお願い致します。

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