「強襲、看板娘!」
第12話 「強襲、看板娘!」
~~~~~~~~ ラウル Side ~~~~~~~~~~
???「あんたにその依頼はまだ早い!!!」
ラウル「えええええええええ!!?」
おそらくギルドの職員であろう鬼族の女性が「びしぃっ!」とラウルを指差しながら宣言する。
ラウル「な、なんで急にそんなこと言うんですか・・・?」
???「青年・・・気持ちはわかる!私も昔はそうだった!」
ラウル「へっ???」
ラウルは混乱する
あと周りの冒険者のおじさんやお姉さんがひそひそと話し始める
おじさん「オ! ヒサビサニゲキダンバルストカイエンダ!!」
お姉さん「アオノコガイケニエネ・・・カワイソウニ・・・」
ラウル「あのー、周りから不穏な言葉が聞こえてくるんですが・・・?」
???「冒険者になって初めての依頼、最初から簡単な依頼なんて味気ない!
私はもっとやれるはずだ!」
ラウル「あ、こいつ話聞かねえ人だ」
???「ゴブリン?違う! 薬草採取?簡単過ぎる!
黒狼・・・響きがカッコイイ!受注だ!
ってテンションも お姉さんわかってあげられるの!
でもね!?実力を過信しちゃダメ!!
初心者は黙って薬草をもぎもぎすべきなのよ!」
おじさん「ヨ!メイジョウユウ」
お姉さん「コノバアイハ『マヨウ』ホウノメイジョユウネ』
???「さあ、青年。あたしが冒険者の何たるかを教えてあげるわ!
今日から私があなたの師しょ・・・アデッ!」
???「やかましい」
ダンディなおじさまが手に持った分厚い魔法書の角を、女性の頭に振り下ろす
女性は「ぐををををっ」と変な声を出しながら殴られた場所を押さえうずくまる
おじさん「アー、クリフサンキチャッタカー」
お姉さん「アイシャチャーン、オツカレサマー!
ヒサビサダッタケド、ヨカッタワヨー♡』
???「すまない、うちのスタッフがご迷惑をおかけした・・・」
ラウル「い、いえいえ迷惑だなんてとんでもないです。それよりあなたは?
あと、その人大丈夫なんですか・・・?」
男性は女性を一瞥すると、ため息をつきながらラウルに説明を始めた。
クリストフ「私の名はクリストフ。一応このギルドのマスターを拝命しているよ。
ここによく通う冒険者たちからはクリフ、と呼ばれているかな。
どうもクリストフと呼ぶのが長くてダメらしい。
今後ともよろしく頼むよ。あー、失礼。名前を伺っても?」
ラウル 「ありがとうございます、クリストフさん。僕はラウルと言います。
腕試しをしに最近このトリステン島に来たばかりです。
同行の剣士と一緒に暫くこの街で活動しようと思っています。」
クリストフ「それは素晴らしい!昔からこのギルドは依頼が絶えなくてね・・・
優秀な冒険者は歓迎するよ。よろしく頼む。
あー、あとそこでうずくまってるのはうちの職員のアイシャだ。
剣士としても腕が立つんだが、どうも思い込みが激しくてね。
最近弟子が欲しいみたいで、見慣れない冒険者・・・キミを見て
我慢が出来なくなったんだと思う。
あと・・・非常に遺憾なことだが・・・僕の娘なんだ・・・」
最後にかけてトーンダウンしていくクリストフ
ラウル 「え゛?」
アイシャ 「ちょ、ちょっとパパァ!?」
クリストフ「業務時間中だ・・・」
アイシャ 「うー・・・ちょっとギルマス!?
何かあんまり褒められてないと思うんだけど!?」
クリストフ「大丈夫だ、褒めてはいない・・・認識に齟齬はない。」
アイシャ 「むきーーー!」
おじさん「ヤッパリオヤコマンザイハナゴムネ~」
お姉さん「クリフサン、マタシラガフエタカシラ。。。クロウシテルノネ・・・」
アイシャ 「っと、さっきは急に言いがかりつけてごめんなさいね!
あたしはアイシャ。このギルドで依頼受付を担当しているわ!
でもいきなり黒狼なんて大変よ?
もうちょっと簡単なものにしたら?」
ラウル 「いや、大丈夫だと思います。
村でも割と出てきた魔物ですし、慣れてますんで」
アイシャ 「へ?」
クリストフ「ほぅ・・・」
アイシャは素っ頓狂な声を出し、クリストフは興味深そうにラウルを眺める。
アイシャ 「そんなの、簡単には信じられないわね・・・良いでしょう!
これは試験よ!
無事に撃退出来たら、このあたしが認めてあげようじゃない!
そのかわり失敗したら私の弟子よ!」
クリストフ「そんなルールはギルドにはない・・・
いい加減にしないかアイシャ?」
ラウル 「あはははは。いいですよ?失敗する気もないですし。
逆にご褒美があったら、なお嬉しいですね?
それにアイシャさんの弟子になるのも悪くないかもですしね。」
ラウルは経験からくる自信により、アイシャの無茶振りに笑顔で応えるのだった。
アイシャ 「え・・・?弟子になってくれるの・・・?
本当に?(瞳がキュピーン)」
ラウル 「あ、師匠はもう何人かいるので、弟子ってわけでは・・・」
アイシャ 「どうしよう!ねぇパパ!?師匠ってどんな感じでいけばいい!?
髭とか付けた方が良いの!?」
ラウル 「やっぱこの人話聞かないんだ・・・」
クリストフ「話を聞け、バカ娘!
ではラウルくん、依頼の正式受注確かに確認した。
道中は気を付けて。期待しているよ。」
ラウルは力強く頷きながら、クリストフからクエスト詳細を受け取るのだった。
アイシャ 「オッホン! いやムォッフォン!の方が師匠らしいかしら・・・?」
ラウル 「ダメだこの人手遅れだ・・・」
クリストフ「すまん・・・ラウルくん・・・」
おじさん「サテドウナリマスカ・・・」
お姉さん「アノボウヤカワイイワネ♡
ワタシモシショウニリッコウ!ナンテネ♩」
~~~~~~~~ カエデ Side ~~~~~~~~~~
カエデ「さて約束まで時間あるけど、しっかりお仕事こなしましょーか。」
カエデは商店や工房が立ち並ぶ区画に足を進めていた。
行商人も数多く行きかっており、強く活気を感じられる。
カエデ「村周辺では考えられないほどごった返しとるな・・・
さーて、うちのお眼鏡に叶う店はあるかなー?」
見るべき店は数多くあるが、弟分からの期待は裏切れない。
カエデはやる気を漲らせながら1件目の商店を覗こうとしたところ
???「カエデさ~ん!」
カエデ「ん?この声はウィルやないか!もうこの街に着いとったんやね!」
ウィル「はい!お二人と別れた後すぐにバルストに向かう隊商と合流出来まして。
無事に到着することが出来ました。」
ウィルはキョロキョロと周りを見回すとカエデに尋ねる。
ウィル「そういえばラウルさんはどーされたんですか?
・・・・・・愛想尽かされました?」
カエデ「すっごく仲良しですけどぉ!!?!?ちゃんと一緒にいますぅ!!」
ウィル「あ、ごめんなさい言い方が悪かったですね・・・あはは。
別々に行動してるんですか?って聞きたかったんです。」
ウィルはテヘペロっていう表情をしながら、頭を搔いている。
カエデは真っ赤な顔をしながら、ぐぬぬと呻いている。
カエデ「なんやーウィルぅ・・・えらい意地悪やんか・・・
覚悟はできてるんやろうな・・・?(ピキピキ)」
ウィル「わー!ごめんなさい!カエデさん!!
で、で?カエデさんは何してらっしゃるんですか?」
カエデ「はー・・・。いやな、暫くこの街を拠点にしよーと思ったんで、
消耗品の仕入れ先とか頼りになる鍛冶屋の辺りでもつけよー思うてな?」
ウィルはそれならとどーんと胸を叩く。
ウィル「消耗品なら僕の店を贔屓にしていただきたいですね!
ラウルさんたちなら歓迎です!」
カエデ「ほ~~、でも扱うてる商品の質が低いのはご免やで・・・?」
ウィル「いやいや、試しにこの回復薬を確認してください。
質は一定以上のグレードを保ってます。
それに大量に保有しているので安定供給できますよ?」
カエデ「・・・でもお高いんでしょう・・・?」
ウィル「その辺は勉強させてもらってこれくらいでは・・・?」
カエデ「まとめて買うたらどないなるん・・・?」
ウィル「10本単位ならこれくらいでいかがです・・・?」
カエデとウィルはすぐに交渉に入ると、二人でこそこそと話し始める。
何回かのやり取りの後、二人はがっちりと握手を交わすのであった。
カエデ「やるやん、ウィル?ええ商売人になるで?」
ウィル「僕なんてまだまだですよ、カエデさん!でも今後ともご贔屓に!」
カエデ「せやウィル・・・さっきも言ったけどこの辺で良い鍛冶屋とか知らん?
ウィルのお墨付きなら安心やねんけど」
ウィル「鍛冶屋ですか・・・うーん」
カエデ「なんや歯切れが悪いなー。」
悩むそぶりを見せるウィル
ウィル「いや腕は確かなんですが、ちょっと気難しくてですね・・・
もしかしたら門前払いの可能性もあるんでどうしよーかなーと。」
カエデ「腕はいいんやろ?一応紹介してくれんか?」
ウィル「うーん、わっかりました。ちょっと待ってくださいね。(サラサラッ)
はい、一応これが僕からの紹介状です!
流石にこれがあれば、門前払いってことはないと思います!」
カエデ「それは結構手強そうやな・・・気を引き締めて行ってくるわ~!」
ウィル「ご武運を!」
カエデはウィルに手を振りながら、紹介された鍛冶屋に向かう。
せめて門前払いだけはされないようにと気合を入れ直すのであった。
~~~~~~ 工房:土竜の微睡 ~~~~~~
カエデ「ここやな」
カエデは店の前に到着すると一呼吸おいて、気持ちを整える。
工房内からは武具を鍛える槌の音が響いてくる
カエデ「おじゃましまーす。どなたかいらっしゃいますかー?」
カエデの声に反応したのか、奥から赤毛の少女がトテトテと小走りに現れた。
カエデ「(初めて見るが地底族やな・・・
それなら確かに鍛冶の腕には文句無しやな)」
赤毛の少女「はい!いらっしゃいませ!ご用件は何でしょうか?」
カエデ 「こちらの工房で取り扱ってる武具を見たいんやけど、可能ですか?
あ、これ。紹介状も持たせていただきました」
赤毛の少女「ありがとうございます!ウィルさんのご紹介ですね!
もちろんです!こちらへどうぞ!」
少女に案内されてカエデは工房の奥へ進む。
そこには多くの種類の武器や防具が整然と並べられており、カエデを圧倒するのであった。
カエデ「おぉ・・・色々あるなぁ・・・手に取っても?」
少女 「はい、ケガなどには十分ご注意くださいね?
あ、おじいちゃん!」
少女はカエデに応えると、別の地底族の男性に声をかける。
カエデにとって彼をおじいちゃんと呼ぶには些か抵抗があった。
老年と呼ぶには全く相応しくない恵まれた体格と、少女と同じ燃えるような赤毛は、まだまだ現役の冒険者のような印象を受ける。
老人「客人か」
少女「そうだよ、ウィルさんのご紹介だって!」
老人「ほぅ・・・ウィル坊の紹介か・・・」
老人がカエデの方に姿勢を正す。
老人「お客人、失礼を承知ではあるが背の大剣を拝見してもよろしいか?」
老人の態度は紳士的なものではあったが、言葉の端よりにじみ出る凄みのようなものにカエデはやや圧されていた。
カエデ「(この爺ちゃんただもんじゃあらへん。。!)
は、はい。この剣で良ければ」
カエデは大剣を老人に差し出すと、老人は丁寧に大剣を確認していく。
老人はカエデにいくつか質問を投げかける。
老人 「この剣を打った・・・作った人間は知っておるか?」
カエデ「作り手までは知らん・・・知らないんです。
でもこの剣を預けてくれた人はウチも心から信頼しとる。
だから大丈夫って思ってる・・・思ってます。」
老人 「使い始めて何年経つ?」
カエデ「どれくらいやろな?5~6年は経ってる気がするわ・・・します」
老人 「業物、にはわずかに届かぬが良き剣だ・・・
そしてしっかりと手入れされておるようだな。」
カエデ「そういってもらえると嬉しいです。駆け出しのころからの相棒や。
またこれから得物を変えることもあるかもやけど、
命を預ける相棒を大切にするのは当たり前や。」
老人 「ふむ・・・」
老人は静かに頷き、微笑んだ。
老人 「お客人、良かったら自由に店に来てくれて構わない。歓迎しよう。」
カエデ「さよか!?おおきに!うちもここなら安心して色々選べるわ!」
少女 「(おじいちゃんがこんなに簡単に認めるなんて・・・
よっぽど武器を大切にしてたのね、あの人)」
老人 「そうだな、新しい客人へのサービスだ。
良かったら今装備している鎧も修繕しよう。
いつ持ち込んでくれても構わない。」
カエデ「ええの?じゃあ今度持ち込もうか――(キュピーン!)
(少女に向かって)ちょっと待って、ここって更衣室ある?」
少女 「もちろんございますよ?」
カエデ「(老人に向かって)じゃあ良かったら今預けてもええ?」
老人 「もちろんだ、明日の昼過ぎくらいまでには仕上げるとしよう」
カエデ「おおきに!じゃあ更衣室借りさせてもらうわ!」
少女に案内されながら更衣室に進むカエデ。
カエデ「(ニヒヒヒ、ちょっとラウルのこと驚かせてやろ♪)」
次回 「まちあわせ」
読みづらい場所などありましたらご指摘ください。
もし知りたい設定などありましたら、幕間などで説明できたらと思います。




