「バルスト冒険者ギルド」
第11話 「バルスト冒険者ギルド」
バルストの街へ向かう街道をラウルとカエデは馬に乗ってのんびり進んでいた。
ラウル「クルーゼたちに馬ももらっちゃったねぇ」
カエデ「・・・」
ラウル「盗賊団のものだから気にすんなって言ってたけど、
あるとやっぱり楽だねぇ」
カエデ「・・・」
ラウル「・・・」
カエデ「・・・グスン」
ラウル「あ~~~もう!カエデ姉!機嫌直してよ!」
カエデ「だってピトッて・・・なんだかラウルも嬉しそうだったし・・・」
ラウル「あれは・・・いきなりだったから驚いただけで・・・」
カエデ「リューネって娘も可愛かったしなぁ・・・
お姉さんより若くて可愛い子が良いんだぁ・・・グスン」
ラウルは天を仰ぐ。この姉めんどくさ可愛い。
ラウル「カエデ姉、拠点が決まったらさ。二人で買い出しでも行こう?」
カエデ「二人で?」
ラウル「うん」
カエデ「食材とか?」
ラウル「食材とか」
カエデ「食器とか?」
ラウル「食器とか」
カエデ「……デート?」
ラウル「買い出しね。」
カエデ「ラウルのけちー(ぷくー)」
こんなやり取りをしながら、二人はバルストの街にまもなく到着する。
カエデはすっかり機嫌を取り戻し、「ふふーん♪」と鼻歌なんか歌っている。
同じころ、どこかの頭領に天啓がおり、「爆ぜろ・・・」と独り言を言ったとか言わなかったとか・・・
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遠くに大きな外壁が見え始めた。
街道が合流し始め、人の流れも増えてきた。
冒険者や行商人、隊商の姿もちらほらと。
トリステン島内、東側最大の都市、バルストの街に二人は到着したのだった。
ラウル「でっけぇ……」
思わず声が漏れる。
高い外壁。
行き交う荷馬車。
途切れない人の流れ。
村育ちのラウルが見てきたどの街よりも大きい。
ラウル「何人住んでんだよ、ここ……」
カエデ「ふふーん♪田舎もん丸出しやでラウル♪」
ラウル「うっせーやい」
二人は検問を難なく通過し、街中へ入る。
ラウル「うっわーーー!ひろーーい!!」
カエデ「これは・・・なかなかな広さやな・・・すご・・・」
ラウル「カエデ姉も田舎もn」
カエデ「うるさいわい(後頭部を平手でパシーン)」
ラウル「ったーーーい!」
頭をさすりながら大通りを進むラウルたち。
どうやら街の中央に大きな広場があり、そこから東西南北に大通りが続いているようだ。
ラウル「ねぇ、カエデ姉」
カエデ「なんやラウル」
ラウル「さすがに今日から色々準備して自炊はしんどい」
カエデ「せやな」
ラウル「だから最低限押さえたい場所を手分けしよう」
カエデ「ほほう?どんな感じに?」
ラウル「まずは拠点探しと明日以降に受けるクエストの確認。
次に今日の宿と飯。これは冒険者ギルドで事が足りると思う。
んで、もう一つが目ぼしい商人か鍛冶屋にあたりを付けたい。
カエデ姉には二つ目をお願いしたいんだけどダメかな?」
カエデ「お願いしたいってのには理由があるんか?」
ラウル「えーっと、そうだね。
商人については港町で会ったウィルがいれば贔屓にしたい。
けど扱っている商品が良いものかわからないから、カエデ姉に
目利きをお願いしたいんだ。
まだ俺の力じゃ上手に目利きできないと思うから・・・ダメかな?」
カエデ「・・・・・・・・・・」
ラウル「カエデ姉?」
カエデ「……デートは?」
そう言いながら、ラウルの袖をちょこんと掴む。
ラウル「──っ!ゴッフゥゥッ(吐血)」
ラウルにこうかはばつぐんだ!
カエデ「冗談や。じゃあその割振りで行こうかね?」
カエデはラウルを置いて先に進んでいく。
カエデ「じゃ、じゃあ・・・日暮れくらいに集合ね?
中央の広場に噴水もあるみたいだから、それを目印にしよ。
拠点はたのんだよ、ラウル~~」
手をひらひらさせながら先を行くカエデ
ラウル「カエデ姉・・・まだ勝てねえなぁ・・・」
苦笑いをするラウル。
しかしラウルは知らなかった。
カエデ「(あーっ!?柄にもないことしてもうたーーーー!!
恥ずかし!あーもう恥ずかし!!
でも夕方にラウルと待っち合っわせ♪待っち合っわせ♫)」
カエデは予想以上にテンパり、しかしそれ以上に浮かれていたのだった。
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バルスト冒険者ギルド
島内でも最大規模のギルドであり、多くの冒険者が集う。
集まる情報も多種多様で、凄腕のギルドマスターが切り盛りしていると、島内では評判の高いギルドである。
ラウルはギルドに入るとその熱気にあてられる。
ラウル「こういうのが本当のギルドっていうのかな?」
村にもギルドはあったが、どちらかというと飲食店としての役割が強かった。
しかしここでは違う。
ダンジョンもあり魔物もいて、遺物発掘の前線基地でもある。
それらの熱気がこの場所に詰まっているのだ。
自分の気持ちも少し熱くなっていくのを感じつつ、受付にいた男性に声をかけた。
ラウル「すいませーん!」
受付男「はい、どうなさいましたか?」
ラウル「この街を拠点として冒険者登録をしたいんですがいいでしょうか!
あと活動拠点も探してます!」
礼儀正しいラウルくん発動!好感度にバフが発生!
受付男「はい、かしこまりました。まずは必要書類はこちらになります。
拠点についてはメンバー構成や希望する設備などございますか?」
ラウル「はい!メンバーは僕を含めて現在2名です。
自炊はしたいのでキッチンが付いてるとありがたいのと・・・
あ、馬が2頭いるので馬小屋みたいなのが付いてるとありがたいです!」
受付男「かしこまりました!少々お待ちください・・・」
――― 数分後
受付男「結論から言いますと・・・ないですね・・・物件」
ラウル「 _(┐「ε:)_ズコー 」
ラウル「え?本当に無いんすか?結構な厚みのある台帳見てましたけど!?」
受付男「正確に言えば、小規模な拠点はないんですよ・・・
大型な拠点ならいくつかあるんですが、やはりそれなりに高額になって
しまうので、御二人で使用するにはコストの面でお勧めしづらくて。」
ラウル「えー、そうなんですか。じゃあしばらくは宿暮らししかないかぁ・・・」
受付男「すいません・・・自信を持って案内できる物件がないので・・・
長期宿泊の手続きをしましょうか?」
ラウル「(うん。。?)
その言い方だとお勧めできない物件ならあるってこと?」
受付男「え゛、た、確かにありますけど・・・本当におすすめしませんよ?」
ラウル「実際どんな物件なんです?」
受付男「規模についてはご希望されているものよりもずっと大きいです。
3階建てで1階には食事スペースやキッチンがあります。
2階と3階は個室になっていて各6部屋ずつあります。
風呂場は付いていませんが、近くに街の大浴場がありますね。
地下には倉庫もついていまして庭のスペースもありますね。
庭には井戸もあり、他のスペースは自由にしていただいて構いませんよ」
ラウルの耳にはメリットにしか聞こえない。それが逆に恐怖心を煽る。
ラウル「で、なんで安くなるの・・・?」
受付男「実はね・・・出るんですよ・・・霊の類が・・・
この施設を使った冒険者たちが口を揃えていうんです・・・
『女の霊を見た!』って・・・
姿を見るだけでなく井戸から自分を呼ぶ声とか、同じ夢を見るとか・・・
最初は出まかせ言って、賃貸料を安くする交渉かと思ったんですけどね?
その後も同じ理由で解約が続き、借り手がいなくなっちゃいまして。
ご近所さんにも幽霊屋敷って言われる始末なんです・・・トホホ」
受付男の言葉にラウルは唾を飲み込む。
そして―――
ラウル「じゃ、そこでおねがいしまっす!明日内見で!」
受付男「話聞いてましたぁぁぁぁぁ!?!?」
ラウル「ちゃんと聞きましたよ?」
受付男「どこを!?」
ラウル「広い、安い、設備充実」
受付男「幽霊!!」
ラウル「そこは気にしない方向で」
受付男「気にしてください!!」
ラウルは全く気にしていなかった。
受付男「わかりました・・・じゃあ明日の10時にまたここに来てくださいね?」
ラウル「ありがとーございまーす!」
受付男「他に何か要件はありますか?」
ラウル「あ、じゃあ依頼はどこに張り出されてますか?
明日以降の稼ぎを検討したいので」
受付男「でしたらここから見て右奥が依頼掲示板です。
掲示板の反対側に受付がありますので受注時はそこでお願いします」
ラウル「ご丁寧に、助かります!」
ラウルは掲示板の前に移動する
ラウル「(色々依頼があるなぁ・・・二人で受注できる内容だと・・・
ゴブリン討伐・・・却下。洞窟の規模が分からない依頼は嫌だ。
逃げ道がない場所で囲まれるのは嫌だなぁ。
お、ビッグボアの狩猟もあるじゃん?ボア肉は美味いしありだなぁ
その他は・・・おー!黒狼の撃退もあんのか!?
上手く狩れればいい素材もゲットできるし、いいんじゃね?)」
黒狼の依頼主を見るとバルストの外れにある酪農家のようだ。
依頼の対応時間は夕方から夜間。
依頼主との打ち合わせの時間を考えても、内見の後でも間に合いそうだ。
ラウル「よ~~~っし、これにしよー。さーて受注~」
ラウルがくるっとカウンター側に回れ右すると、目の前にギルド制服を着た鬼族の女性が立っていた。
腰に手を当て、ラウルを指差し、そして全力で叫ぶ。
???「キミにその依頼はまだ早い!!!」
ラウル「ええええええええええ!?」
依頼ひとつ受けるにしろ、何かあるラウルであった・・・
次回「強襲、看板娘!」
暑い日や天候急変が続いていますので、みなさまご自愛ください。
読みづらい場所などありましたらご指摘いただけるとありがたいです。
もし不明な設定などありましたら、感想でいただければ幕間などで説明できたらと思います。




