第02話 異世界で再会した幼馴染
「ギャラクティック・ノヴァ!」
杖の先に巨大な火球が生まれる。
次の瞬間、盗賊団のねぐらは大爆発。
悪は、滅びた。
「うふっ……。あははっ……。
あぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっ!」
右手で口元を隠しながら、胸を反らしての高笑いをあげる。
落ちぶれても、元侯爵家令嬢。
エレガントさは忘れてはならない。
「……どっちが悪なんだか」
隣の黒髪黒目の青年が、ため息をついた。
だが、気にしていられない。
悪というのは、しぶといものだ。
その証拠に、燃え盛る盗賊団のねぐらからアホどもがわらわらと出てくる。
「お黙り!
ほら、あなたの出番よ! マサムネ!」
「はいはい」
青年はもう一度ため息をつくと、剣を抜いて駆け出した。
******
いきなりの婚約破棄から四年が経った。
なんやかんやあって、今は冒険者をやっている。
「いや、なんやかんやって……。」
「マサムネ! 私の心を読むなんて、無礼よ!」
「勝手に語りだしたの、お前じゃん?」
考え事をそのまま口に出してしまう。
監禁生活が長かった私の悪い癖だ。
唇を引き結び、口に出さないよう意識する。
「……というか、婚約してたのが意外だし、破棄されたのも納得だ」
「お黙り! 私を誰だと思っているの!」
「ん? 盗賊団から金を巻き上げる女?」
この生意気な青年は、『伊達マサムネ』という。
仙台出身ではない。
父親が、あの独眼竜の熱心なファンだったため、その名を名付けられた哀れなやつだ。
小学校の頃、それが理由でよくからかわれていた。
なぜ、それを知っているかといえば、こいつが私の幼馴染なのである。
私がアラサーになるまで迎えに来ないと思っていたら、異世界転移してたのだ。
「世の中、不景気よね。
真面目に働いた方がよっぽど稼げるんじゃない?」
「……異世界なのに、夢がない」
だけど、私の正体は明かさない。
なぜなら、マサムネは初対面でアメリアに見惚れたからだ。
浮気者め。
幼稚園のころ、私のことを好きだと言ったのに。
でも、アメリアは私で、私はアメリアだから、複雑な気分である。
「ほら、アホども。ちょっとジャンプしてみなさいよ。
どうせ、隠しているんでしょ?」
「お前は、昭和の不良か……。」
マサムネは、二十歳の誕生日にこの世界に転移したらしい。
私が知る限り、剣道五段。
全国大会の常連だった。
認めたくはないが、イケメン。
中学校のときは、私以外の女どもからキャーキャー言われていた。
もしかしたら、マサムネがこの物語の主人公なのだろうか。
「ドラゴンでも探しにいく?」
「なぜ、ドラゴン」
「ほら、ドラゴンって金ピカの収集癖あるって言うじゃない?」
いや、私だ。
マサムネは、私のおまけ。
どうしてもというなら、キスくらい応じてやる。
私の正体に気づいたら、その先だって。
いや、ちょっと怖い。
「はぁーー……。お前を見ていると思い出すよ」
「何を?」
「俺の幼馴染」
「……えっ!?」
いきなり来た。
ドキッとした。
ジャンプしていたアホから、金貨がこぼれ落ちた。
すかさずキャッチする。
「金に汚くてさー」
だが、マサムネの言葉に、動きをぴたりと止めた。
「ちょ、ちょっと酷いじゃない!」
「でも、放っとけなくてなー……。今頃、どうしてるのやら」
さらに、ドキッとした。
振り向くと、マサムネは空を遠い目で見上げている。
その哀愁を漂わす横顔に、思わず手の内の金貨を握りしめた。
「……す、好きだったの?」
直球で聞いてみる。
「ああ、好きだ」
直球で返ってきた。
もう、ドキッどころではなかった。
ドキドキドッキーンッ、だ。
「そ、その娘は……。か、可愛かった?」
前世では、小学校にあがって以来、好きなんて一度も言ってくれなかった。
今なら、聞ける。
この際なら、聞くことができる。
マサムネが私のことをどう思っていたのかを。
「いや、普通? 胸もなかった」
マサムネは鼻で笑った。
肩まで竦めた。
「死ねえええええっ!」
私は、金貨をマサムネに思いっきり投げつけた。
「のわっ!? お前のことじゃないだろ!」
だが、当たらなかった。
マサムネは金貨を剣で弾き飛ばした。
さすが、剣道五段。褒めておこう。
そのすごさは分からないけど、小学校のときから頑張っていたのは知っている。
「お黙り!」
しかし、これは避けられまい。
ドロップキックだ。
もし避けたら私が大変なことになる。
だから、優しいマサムネは避けない。
「ぐわっ!?」
案の定、マサムネは避けなかった。
悔しいけど、好き。




