刑務所の中の首なし死体ー第二話ー
十一番が脱獄したこと、殺人事件が起こったに対し、上司たちは騒然と緊急会議を始める。おかげで、監視係の俺にも何か変わったことがなかったかとしつこく問い詰められた。
――僕は誰も殺してないんだ――
あの言葉を言おうか悩んだが結局吐き出した言葉は一つだけ。
「いえ、何もなかったです」
上司たちは喧々囂々と責任を押し付け合い、俺はげんなりとその様子を眺めていた。
家にたどり着いたころには日付が変わりかけていた。
「公務員つったってブラック企業と変わんねーな」
ぶつぶつ呟きながら靴を脱ぎ、衣服の散乱した部屋に足を踏み入れる。
嫁さんは三か月前に五歳の息子を連れて出ていった。お嬢様育ちの嫁さんにおんぼろ官舎暮らしは無理だったか。それとも何か別で不満を溜めていたのか。女心は三十歳を過ぎても理解できそうにない。
シャワーを浴びて二日洗っていないバスタオルで体を拭く。買い置きの安いカップラーメンにお湯を注いで缶ビールを開けた。
「十一番よう、あの死体はお前なのか?それともどこかに逃げちまったのか」
ラーメンをすすり、テレビのお笑い番組をつけながらゴロリと横になる。目を閉じると、彼の甘やかな笑みが鮮やかによみがえってくる。
――ねぇ、舐めてあげようか?――
十一番がくすくす笑いながら囁いてくる。
むせかえるほどの甘い香りに頭がどうにかなりそうだ。
「ばかを言え。俺は男、お前も男だろ」
俺は喉から必死に言葉を絞り出す。
――それって、そんなに大事なこと?――
細い指先が下半身の先端を這う。弱い電流のような快感に体がびくついてしまう。
――僕を探してごらん、可愛い看守さん――
ふと顔をあげると、彼の体には頭がなかった。首なしの体があの美しい顔を左手に抱え、右手でそっと撫でている。顔は閉じられた目を開くと俺に向かってウィンクした。
「うわあああああ!」
俺は自分の叫び声で目を覚ました。どうやら眠っていたらしい。時計は深夜二時半を指していた。
「クソっ。なんであんな夢……」
悪態をつくと、ふと違和感で下半身に目をやる。俺の下半身は最悪な気分とは裏腹にしっかりと屹立していた。
「クソっ!クソっ!」
訳が分からない。さっきの夢より今の現実の方がグロい夢。気が付けば俺は、ゴミ箱をティッシュでいっぱいにし肩で息をしていた。
「最低だ……」
次の日出勤すると俺は、また看守長に呼ばれた。




