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第103話 難攻不落の島

 タヌが島。

 それはネコ国南島のさらに南方に位置する島嶼群である。

 

 順風であれば丸1日もあれば届く距離ではあるが……風向きによっては2日、悪ければ3日を要する。(※1)

 周辺には暗礁や浅瀬が多く、また潮流も複雑なので、船は風と潮を見ながら大きく迂回する場合もあるらしい。

 

 そして、その中心となる本島は、まるでお椀を伏せたような形状をしている。

 島の周回道路を使えば、丸一日ほど歩いて反対側に抜けられる程度の小島だ。(※2)

 

 つい5年前までネコ国の領土であったこの島は、転生者「コクー」率いる特戦隊とサル国海軍に襲われ、あっけなく陥落。(※3)

 それからネコ国の軍が幾度となく奪還作戦を講じたものの、いずれも壊滅的な大敗を喫し、現在に至る。

 実効支配されている今でも、島内の鉱山から良質の魔石やレアメタルが採掘されている重要拠点であり、また奴隷貿易の中継基地ともなっているようだ。

 

 この島は、サル国屈指といわれる腕利きの魔導師による、いわば「レーダー」のような探知魔法によって守られている。

 問題はその探知距離。

 通常の魔導師の3倍とも言われる広範囲の探知能力を有し、しかもそれは昼夜を問わない。

 たとえ漆黒の闇であろうとも、カラス一羽逃さないとされるほどの精度である。


 しかも優れているのは、探知能力だけではない。

 島の最高地に設置された戦略兵器「魔導砲」がにらみをきかせる。

 最大射程は、視界が通る全ての距離。

 しかもその威力が凄まじい。

 文字通り、ターゲットを一瞬にして消し炭にする、と言っても過言ではない火力。

 洋上を進む船にとって、それは逃げ場のない「呪いの砲台」に等しい。


 つまり、この鉄壁の守りと圧倒的な火力によって、この島は「難攻不落の島」として名を馳せることになったのである。


 

「――――あの、タマキさん? 突然意識が戻ったと思ったら、いきなり窓に向かってボソボソ喋り始めちゃって……大丈夫ですか?」

 ネコ娘はちょっと心配顔。

「え?? あ!あはは〜 ちょっと意識が混濁して……るのかな〜? たぶん?」

「たぶん?って……何でそこで疑問形なんですか?」

「あ――いやぁ、ちょっとまだ……寝ぼけてるんだっけな? あ、うん、まぁそういうことにしておこう。」

「…………もう少し寝てたほうが良いかと思いますよ?」


 皆さんにちょっと怪しまれはじめたので、ナレーションはコレくらいにしておこう。


「ところでマレッタさん、おおまかにでも作戦の説明は終わられましたか?」

「あ〜それが……何から話して良いんか、ウチも分からんようになってなぁ。どっから始めたらええ?」

 タヌ娘は、困り顔でそう答える。

 この人、意外と……専門外のことは頭の中で整理出来ていないのかもしれないなぁ?

 まぁいいけど。

 

「あははなるほど。じゃあ、順を追って説明してみましょうか。」

 ボクはハンモックから降りると、丸い窓から大海原を眺めながら話し始める。


 

 ボクがこの作戦を思いついたのは、看護師に化けた受付嬢がボクに注射をしてから後のことである。

 受付嬢の詳細なプロフィールと、ミナミのギルドマスターが取り調べた時の様子を、母ネコさんに通信魔法で伝えてもらった時に……ふとひらめいたアイディアが発端だ。

 

 まず1つは、この町から女性たちが攫われ連れ去られるのを防ぐのには限界があり、それよりも中継基地となっている「タヌが島」を抑える方が効率的だと判断したこと。

 それともう1つが、何らかの理由でボクをタヌが島へ送り届けようとする計画があるのであれば、逆にそれを利用して……この難攻不落の島に乗り込むことも可能なのではないか、ということである。


 そして、これを実行するためには……意識のないボクを上手に運んでくれるメンバーと、島へと乗り込んだ後に必要な「武器」をどう調達し運び込むか、がカギではあった。

 もちろん、明らかに戦力となるような屈強そうな剣士や、面が割れている魔導士たちを同行させることは出来ない。

 それに、この世界ではあまり知られていないとはいえ、魔導士が使いそうな「雷撃の杖」……つまりAKMをそのまま持ち込むのも、いかにも怪しい。

 そもそも発砲音の問題も大きいし、まず発掘したAKMだけでは……まるで数が足らない。

 だからと言って、隠密戦にマカロフだけというのも心許ないし、他のメンバーにそれを使わせるのにも問題がありそうだ。


 ……で、練りに練った挙句の人選と、偽装し運び込んてもらった大量の武器。

 そして、ボクの想定外だった……ネコ娘ミーナと、キツネ姉さんユカリの参戦。

 おかげで通信魔法が劇的に進化し、遠く離れた母ネコさんと通信できるだけではなく、視覚や聴覚の情報共有ですら可能になったのは大きなメリットだ。

 

 果たしてこれらの要因が今後、吉と出るか凶と出るかは……まだ分からない。

 あとは……タヌが島に隠されているであろう「綻び」を、いかに活用していけるかも大事なポイント。


 しかし、すでに賽は投げられた。

 さあ……これからが「勝負」の始まりだ。

 

 ――――――――――

 

 ※1 22〜23話参照のこと。ちなみに距離にして40〜50キロ沖になる。

 ※2 イメージとしては屋久島程度の規模。この島のスケール感を大きいと見るか小さいと見るかは……まぁ個人の自由ですw

 ※3 「親衛隊」や「督戦隊」ではなく、「特戦隊」です(キッパリ)w 大丈夫なのかコレ……。

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