表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

アダムとイブ

シンは目を覚ました。

見慣れた空間。OVER DOLLのコクピット内だ。


なぜか不思議な感覚がした。目の前に横向きとなったシートが見える。

そうだ、おかしい。コクピット内は重力がコントロールされていて、常に上下は決まっている。

反重力装置が故障でもしたのか? 


ふと手に触れている柔らかいものに気がついた。

それは羽月だった。羽月もシートから転げ落ちたようで、サイドモニターの上に寝転んでいる。


「羽月・・・。羽月。怪我は無いか?」


「・・・・んっ。・・・・シン。・・・・何があったの?」


「わからん。確か・・・隕石を消滅させた瞬間までは覚えているが・・・」


 シンは、目を開けた羽月の手を取り立ち上がらせた。


「ネロス君は? 元気無さそうだね?」


「OVER DOLLの全ての機能が停止している。困ったな・・・」


「外へ出てみる?」


「駄目だ。おそらく宇宙空間だろう。シールドが落ちている今外に出たら、一巻の終わりだ。センサーが死んでいるからどうしようも無いな・・・。レプリケーターも動かないだろうし、食べ物にもこのままでは困る」


「でも・・・何か鳥の鳴き声が聞こえるような・・・気がするよ」


 羽月はコクピット内の壁に耳を当てて目をつぶっている。


「なに・・・・。なんだそれは。そうやると外の音が聞こえるのか?」


 シンも羽月の真似をして耳を当ててみる。すると、確かに鳥の鳴き声のようなものが聞こえてくる。


「本当だ・・・。良くこんな知識を身に付けていたな。頻繁にやっているのか?」


「えっ! ・・・えへっ・・・。やった事・・・ないよ。学校で教えてもらったの・・・」


 地球人なら即座に嘘と見抜けるほど羽月の目は泳いでいたが、木星人のシンにはまったく分からなかった。


「このままでは飢え死にか凍死だ。一か八かでハッチを開けてみる。宇宙空間なら吸い出されるからしっかりとシートにつかまっていてくれ。その時はすぐに扉を閉める」


「う・・・うん」


 羽月が眉間にしわを寄せながら一生懸命シートに手をかけているのを確認すると、シンはハッチの扉を開けた。


「あ・・・」


「これは・・・」


 二人の目には青い空が映った。そして飛んでいる鳥も目に入った。


シンは顔を出してみる。あたりは草原で、遠くには木々が生い茂る。どう見てもどこかの星の地上だ。そして、ネロスは仰向けに倒れているという事にも気がついた。


「何ここ?」


 羽月もぴょこんとハッチから頭を出す。すると大きく息を吸い、深呼吸をした。


「うわぁ。空気すっごく美味しい。どこなのこれ?」


「おい・・・ちょっと」


 シンが止めるのも聞かず、羽月は外へ出た。ネロスから飛び降りると、草原の上を転がる。


「すっごーい。何の音もしなーい。車の音も、飛行機の音も。自然の音しか聞こえてこなーい」


「地上のどこかへ墜落してしまったのか?」


 シンもこわごわと外へ出ると、ネロスの胸の辺りに立ったまま周りを360度見回す。


「座標がわからなければ・・・どうしようも・・・。はっ・・・まさか・・・ここは・・・」


「何? 知っている星?」


 羽月は寝転んでいる状態から体を起こしてシンを見た。


「もしかして・・・地球・・・じゃないだろうか・・・?」


「なーんだ。地球かぁ。それじゃあ、早いところ帰らなくっちゃ。5時間目・・・。あっ。もう始まってるや。6時間目に間に合えばいいけど・・・。光美か美鈴にメールでもしておこうかな」


 羽月は腕時計を見て時間を確認すると、ポケットから携帯電話を取り出した。


「んー・・。んっ? あれっ? ここ圏外だ。田舎だからアンテナ無いのかな」


 羽月は携帯電話を上にあげて、ぶんぶんと振り回してみるがアンテナが立つ気配は無かった。


「羽月・・・」


 シンはネロスから飛び降りると、羽月の肩を抱き寄せた。


「ちょっ・・・ちょっとぉ。誰もいないからって変な事をすると大声をあげるからねっ! 大声をあげながら殴るからね!」


 羽月はこぶしを振り上げて怒る振りをしながら、少し首を傾けてシンの肩に頭を乗せた。


「もしかして・・・俺達は・・・。タイムワープを終えたんじゃないだろうか? 隕石を消し去って・・・その前後何かが原因で・・・。もしかして、反物質粒子砲や常温電磁加速砲などの巨大なエネルギー武器を撃ちまくったせいかもしれない・・・」


「ひえっ! む・・・昔の地球って・・・事? ・・・そう言えば・・・すっごくそんな気がしてきた・・・」


 そこで羽月は一呼吸置き、口を開く。


「直感だけど」

「直感か?」


 二人は言葉を重ね、笑顔になると見つめ合った。


「アダムと・・・イブって事?」


「そうみたいだ。この星で人間は俺達だけらしいな。これからどうやって人間を増やしていくのか・・・。そういえば、羽月は人間の増やし方を知っているって言ってたな?」


「えっ! ・・・ま・・・まだ心の準備が・・・。待って」


 羽月はシンから離れ、後ろ向きに歩いて行く。


「心の準備? なら俺がやってみるから方法を教えてくれ。おい? 羽月どこへ行くんだ?」


 羽月が下がるのを、シンは付いて行く。羽月は更に下がるが、何かに躓いて仰向けに倒れた。それと共にスカートがまくれ上がった。


「大丈夫か羽月?」

「ひっ! ダメっ! まだ早いっ!」


 羽月がスカートを押さえて下着を見えないように隠しているところに、シンの手が羽月の肩の上に置かれた。


「さあ、羽月。子供の作り方を・・・」

「きゃぁぁぁぁ!」


 シンは羽月に強烈なビンタをくらい、らせん状に回転をしながら空へ舞い上がった。


「ち・・・痴漢! 変態! 変質者! エロ! スケベ! ・・・えーと・・・。痴漢!」


 地面に伏したシンを、思いつく限りの言葉で羽月は罵倒した。


「もうやだぁ。怖いよぉ。誰か助けてぇ」


 誰もいない大地へ向かって羽月は大声を出した。すると、それに答えるかのように、声が返ってきた。


《大変ですね このアダムとイブは・・・・》

「ひゃぁ!」


 羽月は驚き、周りを見回す。しかし、誰の人影も見えない。


「だ・・・誰? ・・・ひょっとして・・・神様?」


《もうお忘れですか? 私の声を》


「えー・・・。・・・・あっ! ひょっとして、ネロス君!」


《正解です》


 すると、横たわっていたOVER DOLL が体を起こし、立ち上がった。


「え・・・ネロス?」


 シンもふらふらと立ち上がると、その巨人を見上げた。


「壊れたんじゃなかったのか?」


《原因は不明ですが しばらく停止していたのは事実のようですね とは言っても 少し前に起動していたのですが・・・ 気を利かせて黙っていたら・・・散々なアダムとイブを見てしまいました》


 シンは頬をさすり、羽月は顔を赤くした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ