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繋がる二人



 学校ではテレビとは別の話題で騒ぎが起こっていた。突然学校の真上で激しい発光現象が起こったのだ。その光は凄まじいスピードで空の彼方へ消えて行った。


「絶対あれUFOだよね!」


 彼女の何かを刺激したのか、それとも隠れた趣味でもあったのか、美鈴は興奮状態で飛び跳ねていた。


「確かに・・・私もUFOとしか思えないけど・・・。美鈴、喜びすぎじゃない?」


 光美がそのテンションの違いにあっけに取られている横で、大月は熱心に携帯電話のテレビを見ている。


「そのUFOはロボットをかすめて飛んで行きましたよ。すごい度胸というか・・・。というより、UFOとロボットってどちらが強いんでしょうか?」


「もちろんUFOだよー。絶対UFO!」


 美鈴はどうしてか怒ったような顔で頬を膨らまして大月を睨んでいる。


「終わったみたいだな。あの白いロボットも飛び去ったようだぜ。ニュースも「銃撃の音がやんだ」って言ってるぞ」


 本多が伝えてくる。光美達も携帯を見ると、テレビ局のカメラが徐々に戦場へ近づいて行くような映像が流れている。


「あれ・・・。そう言えば・・・羽月は?」


 4人が教室を見回しても、羽月の姿は無い。先ほどまで光美と美鈴と一緒にテレビを見ていたはずなのに、いつの間にか消えていた。


[ガラッ]


 教室の扉が開き、激しく不快な顔をしているミリンが入って来た。その腕には目をつぶってしがみついている羽月がいた。ミリンは4人の所に歩いて来ると、腕を突き出して眉間にしわを寄せながら言った。


「この女、何とかしてよ」


 それを聞き、パチッと目を開けた羽月は、あたりを見回して教室だとわかると手を離した。その二人の様子に、美鈴が驚いた顔で、


「・・・でもすっごーい。ミリンちゃんって、羽月ちゃんを腕にくっつけながら平然と歩いてきたよね。羽月ちゃん宙に浮いてたよ・・・」


 と言うと、みんなはうんうんとばかりに頭を振っている。


「でも羽月は何してたの?」


 不思議そうな顔をして言う光美に、羽月は目をそらしてぼそぼそと答えた。


「ベ・・・別に・・・。ちょっとシンがくれたメモに妙な事が書いてあったから・・・。ミリンがシンと変な事をしに行かないように・・・見張ってたの」


「はぁ・・・。メモ?」


「そういえばシンは? トイレの長いほうって行ってたけど・・・。ホントに長いな? もう30分以上経つぞ。大丈夫か?」


 本多がそう言うと、大月も黒板の上にかかっている時計を見た。


 噂をすれば何とかという奴なのか、その時教室の後ろの扉が開いてシンが入って来た。


「間に合ったか? 国語の授業は終わってないか?」


 そう言った瞬間、一時間目終了のチャイムが鳴った。




 一時間目が終了したところで学校は生徒達に帰宅を促した。あんな事があったというのに、高校生たちは深刻には受け止めず笑い声を上げながら帰る。シン達も、今日はどうしてかミリンの口数が少なかったおかげで揉める事無く家路に着いた。


 家に着くと、羽月は早速部屋の掃除と片づけをはじめる。ミリンをシンの部屋に置いておくのは不安なため、自分の部屋へ招き入れる用意だ。ケンカをしたとしてもすぐに気分を変えて仲良くしようとするのは、シンと初めて出会ったときにも発揮した、羽月の長所と言う所だ。


「んむ?」


 シンの部屋から声が聞こえてきた気がした。すぐに羽月は壁に耳をつけるが、いつものようにはっきりは聞こえない。しかし、恋人同士の会話のトーンではないので、一刻も早く部屋の模様替えを終わらせようと、また張り切って掃除を始めた。




「どうして助けてくれたんだ?」


「気まぐれよ。それに、他人に感心がない木星人とは言え、さすがに同胞が死にそうになってたら助けるよ。・・・シンは私にとって特別な人だし」


「確かに死んでいた所だった」


 二人はベッドと椅子に座って向き合っていた。ミリンはやはり昨日ほどのパワーがなく、うつむき気味で話をしている。


「どうして地球人相手にそこまでするの? しかも敵はOVER DOLL だったんでしょ。武器も持っていないシンに勝ち目あるはずないじゃない?」


「過信していた。まさかネロスの新型の部分はA・Iだったなんて・・」


「ねえ、木星に帰ろうよ。地球なんてどうでもいいじゃない?」


 ミリンは自分の手をシンの顔に添えながら言った。


「俺にもどうしてかわからない。だが、帰ることは出来ない」


「次あいつが来たらどうするの? 私はもう助けないよ! ただでさえ・・今日はOVER DOLLに乗ろうとしたら羽月がしつこく付いて来て、原始人を一緒に乗せることなんて嫌だからA・Iに攻撃させたんだから。もしあいつが気づいて接近してきていたらA・Iじゃやられてたかもなんだよ」


「武器があれば奴を破壊してみせる。俺の腕なら可能だ」


「その武器が無いじゃないの。それに操縦なら私のほうが上だったでしょ。シュミレーションで102戦54勝46敗、2引き分け。上には上がいるかもだよ!」


「実践ではお前の手に負えない任務を、俺は何度かやりとげている」


「そ・・・それはそうだけど・・・。でも武器は貸さないよ!」


「貸してくれないなら・・・。ミリンから奪うのが合理的だが・・・」


 ミリンが顔を上げると、シンはじっとその顔を真剣な表情で見つめていた。


「私とも戦う気? ・・・どうしてそこまで地球のためにするの? ・・・地球のためって言うか・・・あんな原始人のために・・・。羽月のためになんて・・・」


「・・・・別に羽月のためではない。・・・気まぐれだ」


「認めればいいじゃない! 伝えればいいじゃない! 俺は羽月が好きだって! 何意地はっているのよ! シンなんて・・・シンなんてもう木星人なんかじゃないよ! 原始人と恋すればいいじゃない! 地球人になっちゃえばいいじゃないっ!」


 ミリンは窓から飛び出そうとしたが、靴が無いことに気が付くと、ドアを開けて玄関から出て行った。


〈木星人がケンカをするところを見るなんて 希少な経験をさせてもらいました〉


 シンの頭の中にネロスの声が響く。


「あいつの言う通り、木星人なら帰るのが正しい。だが・・・、俺は・・・。ひょっとすると・・・、もしかして・・・、まさか・・・・、おそらく・・・、たぶん・・・・」


 シンは両手で頭を抱えるようにしながらうつむいた。


〈羽月が好きなんでしょう 私はずっと指摘していました〉


 それを聞いてシンは両手を頬に当てながら顔を上げる。


「しかし・・・相手は・・・。ち・・ち・・ち・・・地球人だぞ」


〈そんな 人が猿を相手にするような感じで言わないでください 同じ人間ですよ〉


「同じ人間? ・・・バカな。木星人と地球人は違う!」


〈ふう・・・ まだ謎が解けないので言わないで置こうと思いましたが・・・〉


「何だ?」


〈シン あなたと 羽月は・・・・・・・血がつながっています〉


「なっ・・・なにっ!」


 シンはベッドから立ち上がったが、その目は焦点が合わないまま宙を見ていた。

 そこへ、開きっぱなしの扉の影から、羽月がひょっこりと顔を出した。


「あのー。なんか・・・。ミリンとケンカしちゃった見たいだけど・・・。大丈夫?」


 シンはゆっくりと羽月の顔を見た。


「は・・・羽月・・・・」


「にへっ。仲が悪くなるのはいいけど、ケンカは良くないよ!」


 羽月の笑顔をシンはじっと見ていた。




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