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◆番外編:ある夜の黒猫の独白
少女が寝息を立て始めたのを確かめてから、黒猫はそっと寝台を抜け出し、窓辺に降り立った。
二つの月が、静かに地上を照らしている。かつて、幾度となく見上げた光景だ。もっとも、あの頃はこんな小さな体で見上げてはいなかったが。
(……ずいぶんと、ちっぽけになったものよ)
己の前脚を見下ろし、黒猫は小さく喉を鳴らした。自嘲じみた笑みのつもりだったが、猫の顔ではそれもうまく表現できているかどうか、怪しいものだった。
昼間、あの小僧――リアムといったか――の記憶に靄をかけたのは、大した力ではない。全盛期の己ならば、指先ひとつで国の一つも眠らせられただろう。今の自分にできるのは、たかだか数分の記憶を、少しぼかす程度のこと。
それでも、十分だった。あの程度の些事すら片付けられぬようでは、この子を守る資格などない。
(アリア……)
窓越しに、月明かりに照らされた少女の寝顔を見やる。無防備で、頼りなく、それでいてどこか凛とした横顔。




