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姫様の事情

『姫様は、あの少年のどこが好きなのですか?』


休日の昼下がり。午後のティータイムがもうすぐ終わるというタイミングで、侍女のマイカが聞いてきました。


『う〜ん、難しい質問ね』


好きなところと聞かれましたが、見た目とかの話ではないのでしょう。

このタイミングで聞いてくるということは、はぐらかしても問題ありませんという彼女なりの配慮なのでしょうが、なんだか答えた方が良さそうな気がするのでキチンと答えましょう。


『忖度しないところが好きです』


あれ?正直に答えたのに、なんだか微妙な顔をしています。


聡明な彼女ですが、分からないのでしょうか。


『あの方は、勝手に解釈しないんです』


更に分からないという顔をしていましたが、ようやく分かってくれたようで納得顔です。


『なるほど、確かにあの少年は噂を鵜呑みにしない、稀有な精神の持ち主ですね。』


『そうです。あの方だけが私の事を【厄災の魔女】と解釈しなかったんです』


王族だということを伏せて学園に入学してから、当たり障りなく静かに過ごしていただけの私の評価が【厄災の魔女】だと知ったのは、夏の休校期に入る少し前でした。


クラスメイトたちからの質問に答える度に、周りにいる人たちの様子が変わっていって、次第に教師すらも私を遠ざけるようになりました。

あの方だけを除いて。


『あの時、孤立していた私の側に居てくれたのは、あの方だけでした。あの方が居るから私はあの時、学園に通う事ができたんです』


誰の目にも明らかな差別意識が学園に蔓延していました。


無意識に異能が発動しないように私自身で掛けている制限の事を


『危険だから封印されてる』


と、訳知り顔で吹聴している人たちがいたのです。


【人は勝手に解釈する生き物】で、

私の異能について聞いてくるクラスメイトたちのことを私は『不安だから』だと解釈して制限していることを言い、彼らは『噂は本当だった』と解釈しました。


私はひたすら自身で制限していることを説明して、

彼らはひたすら噂通りに解釈するためのワード探しをしていました。


噂通りだと解釈した彼らは次に、噂通りの人物像を作り上げるための粗探しや捏造を始めました。


私の人物像の確認と称して、【厄災の魔女】という人物像を捏造するための、嘘の体験談を話しながら私からの同調を引き出そうとしてきました。


同調したら、私が言った体験談という事にし、同調しなくても粗探しをしている人たちに向けて別の捏造エピソードを広めていました。


反論したら『厄災の魔女が怒った』と言い、黙っていたら『本当のことだから反論出来ない』と解釈する。


そんな理不尽な仕打ちを受け続けて爆発寸前の私の前に現れたのがあの方です。


『君たち、異能がこわくないの?』


私の事を完全に侮っている彼らに、あの方が孤児院のシスターから聞いた異能によって引き起こされた甚大な厄災の歴史を語り聞かせていくことで、私に干渉してくる人が減っていきました。


『私の事を庇って下さったあの方は、とても凛々しかったのです』


私が物悲しくも、ささやかな幸せの思い出に浸っていると、すかさず


『姫様の思い出は少し美化されておいでです』


と突っ込まれるのでした。


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