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宰相の悩み

ところ変わって、宰相は困っていた。


愚か者たちによる婚約破棄ブームの話ではない。


『姫様はなぜ、あのような平民の少年に入れ込んでおられるのだ…』


女神様の覚えめでたく様々な異能にも恵まれ、皆から将来を有望視されている第一王女であらせられる姫様が、なぜあのような、うだつの上がらぬ平民の少年などに…。


しかし、答えなど本当は分かっている。


姫様は、王族として恥じない生活を送ってはいるが、元々、貴族的で華やかな生活が性に合わず、地味で目立たぬ質素な生活に憧れを持っておられるのだ。


姫様にとって、あの平民の少年は理想そのもので、

あの平民の少年を振り向かせるために、王族としての態度を取りながら慣れない「口説く」という行為をしているために、あらぬ噂が様々なところから聞こえてくる。

主に、あの平民の少年に対しての噂が。


正直に言うと、平民の少年のことはどうでもいい(いや、良くない)


問題なのは、婚約者候補の選出が難航している事についてだ。


動かせる影の者たちを総動員して国内外問わず婚約者候補になり得る者たちを徹底的に調べさせているが、国内外すべての候補者に問題が見つかって、このまま問題がない候補者を探し続けるのか、妥協して問題を許容するのか、いっそ、年齢の離れた候補者も含めるのか、苦しい選択を迫られている状態なのである。


『いっそ、少年を王配にする話を進めて貴族の養子にすれば話が早いのだがな…』


少年のことを調べ上げた影の者からの報告によれば、浮浪児更生施設である孤児院出身。

人との交流は少なく、寡黙で、勉強や仕事の出来は総合的には可もなく不可もなく。

部分的に飛び抜けて出来ることもあるのに、周りからの印象は何も出来ない木偶の坊。


実力を隠して潜入しているスパイの疑惑もあったが、姫様の侍女として同行している影の者からの話では『無欲で、うだつの上がらない、ただの平民』とのことだった。


姫様が女王となったときに王配となる人物は、野心が無く、優秀ではない方が都合がいいのは確かなのだが、少年の【うだつの上がらない平民】という評価と【元浮浪児】という経歴が国王陛下のお気に召さず、許可を得るには至らなかった。


宰相の苦悩はまだ続くのであった。



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