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少年から見た事実

僕は孤児院出身の平民で、王立統一学園の制服を着ている7歳の男だけど、取り敢えず僕の見た目と学園の制服を見れば【王立統一学園初等部の生徒】だってことは分かる。


男女の違いは、見れば分かる。


学園の中でスーツ姿の大人の人を見れば、先生かもと思うし、少なくとも生徒ではないと分かる。


学園の中で鎧を着込んで帯剣している人を見れば、学園内を巡回している警備騎士だと分かる。


学園の中で私服姿にエプロンをつけて掃除をしているおばさんを見れば、掃除婦の人だって分かる。


僕が孤児院出身の平民だからなのかも知れないけど、高貴な生まれの人は、見れば分かる。


そして、休日に街の中でこれらの人たちと会った時に、顔を見れば分かる。


同級生だって、よく知らない人も居るけど顔を見ればだいたい分かる。



じゃあ、目の前で起こってることが何なのかといえば、【イジメ】だってことは分かる。


見れば分かる。


でも、心底分からないのは、なんで誰も、イジメている人物が自国の王女様だってことが分かってないんだってこと。


身分を隠しているけど、見れば分かるはずでしょ。


正確には、王女様だって分かっててイジメている公爵令嬢や貴族たちと、


イジメのための嘘をついてると分かっていながら、遊び感覚でイジメに加担している嘘つきたちと、


何も分かってないのに、忖度で積極的にイジメに加担してる人たちと、


多数派意見を鵜呑みにして、正義感や道徳心でイジメに加担しているその他大勢と、


僕には本当に理解出来ない光景だよ。



【厄災の魔女】


彼女はそう呼ばれてイジメられているけど、なんで【異能を封印されてるから】なんて理由をみんな信じられるのかな?


前提として、異能を封印されるのは罪人だけだってみんな知ってるはずだけど、罪人とその子供は補助政策を受ける権利は無いし当然、王立統一学園に通う権利が無いってことは当たり前の常識じゃないか。


それに大前提として、どんな理由があってもイジメはダメなことのはずでしょ?


僕の道徳心が『イジメを仲裁しろ』と言い続けてるけど、

イジメをするための理由探しばかりしてる集団に挑む勇気がどうしても出ない。


日常と化したイジメをどう止めるかを考えていた僕は、ふと廊下にいる掃除婦と警備騎士が目に入ったとき衝動的に行動していた。



『ききき君たちぃ!いぃぃいい異能がこここ怖くないのかぁ!』


もう、なりふり構わず身振り手振りで廊下に視線が向くように動きながら、孤児院のシスターから聞いた厄災の話をまくし立てた。


最初は怪訝な顔で僕を見てた彼らだったが、次第に僕の意図に気がつく人が、公爵令嬢を中心とした貴族たちから距離を取り始めた。


訳が分からないと怪訝な顔で周りを見ていた貴族たちだったが、唐突に糸が切れた操り人形のように倒れて動かなくなり、公爵令嬢は金色に光るロープで腕と体がぐるぐる巻きになって床に転がった。


無表情で目を開けたまま力なく倒れている貴族たちはとても生きているようには見えず、状況が飲み込めずに狼狽えている公爵令嬢を残して、その場は静寂に包まれた。



『最初からこうしていれば良かったのです』



僕たちは、床に転がってる公爵令嬢と貴族たちを見おろす彼女を見て、まるで金縛りにでもなったかのように動けない。




『あなたは、最初からこの私のことを王女だと知っていながら、あえてこの様な仕打ちをしていたのですから、お覚悟は出来ているということですよね?』




いつも通りの静かな声のはずなのに、彼女が受けていた酷い仕打ちを思うと、息も出来ないほどの圧力を感じてしまっている。


周りのみんなは更に酷い有様で、彼女が王女様だと知って、滑稽なほど真っ青になって震えている。


王女様の言葉に、公爵令嬢は反抗的な態度で


『なによ!異能で私も殺すってこと?この、人殺し!』


公爵令嬢は王女様を睨みつけているが、当の王女様はどこ吹く風だった。


興味が無いとばかりに公爵令嬢から離れて、教室の扉を開けて、待機していた者たちを招き入れて色々と指示しだした。


数人の掃除婦たちが貴族たちを運び出して、

警備騎士2人が喚き暴れる公爵令嬢に猿ぐつわを噛ませて、手枷足枷をつけていく。


警備騎士の1人が公爵令嬢を物を扱うように担いだタイミングで王女様は警備騎士の1人を引き止めて指示を出した。


『公爵家に、異能申告義務違反の抗議及び余罪の追求をお願いします。彼女は、しばらくの間取り調べのために勾留しておいて下さい。』


掃除婦たちと警備騎士たちが教室から出て行ったと同時に彼女は僕たちの方に振り返って言った。


『皆さんは、彼女の【人心を操る異能】で操られていたという事にして無罪とします。


それと一応弁明しておきますが、彼らは異能の影響で心神喪失状態だったため異能を無効化した時に倒れただけで、死んでません』



無罪と聞いて安堵の空気が流れているが、僕は『という事にして』という言い方をしたのを聞き逃さなかったし、

僕は、あの掃除婦たちと警備騎士たちを【今まで学園の中で見たことがなかった】


『浄罪機関』


決して大きくはなかった僕のつぶやきに反応して、安堵感に包まれてた場の空気が一瞬で凍りついた。


公にはされてないが『女神様の教えに背いた者を独自の裁量で処罰している王国公認の集団』と噂されている、

商人、町人、農民、騎士、貴族、あらゆる姿で生活に馴染んでいて、

主に貴族が取り締まりを受けた噂を耳にしてるが、貴族の周りにいた平民も一緒に処罰されていて、快活で明るかった人が解放されたときには穏やかで大人しくなって帰ってくるって聞いたことがある。


『僕たちは処罰の対象にならないんですか?』


嬉々としてあんな仕打ちをしていた集団と、それを止めなかった僕が許されるはずがない。


周りから『余計なことをするな』という視線を浴びながら、自然と、僕は王女様の前に立ってそう聞いていた。


長い時間と思えるほど視線を合わせていたが、王女様は周りを見渡すとはっきりと言った。


『色々と誤解があるようですが、皆さんは無罪です』



無罪と聞いて、今度こそ歓声をあげて喜ぶ周りの奴らの精神性が心底気持ち悪い。


苦虫を潰したような気持ちでいると、『今回だけですけどね』と小さく付け加えたのが聞こえた。

周りの奴らには聞こえなかったようだけど。


しばらくして、『今日は休校になったから帰宅するように』と警備騎士に連れられた先生からから告げられて、その日は全員帰宅した。



それから1週間ほど休校になってから登校したら、教師や学園長、それから掃除婦や警備騎士に至るまですべて一新されていてすごく驚くことになったのだが、


更に驚くことに、僕は王女様から毎日昼食に誘われてご一緒する生活を送っている。


最初の頃は、僕の生い立ちや、趣味や好みを聞かれることが殆どだったけど、最近は王女様が政治的な話をされて僕は曖昧に答えるという事が続いてる。


『見れば分かる』と言ってきたけど、みんなが言ってるような、僕が王女様から好かれてるなんて勘違いも甚だしいし、いったいどう解釈したら良いのか分からない。


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