第八十九話
「心にぽっかりと穴が開いたようでさ・・・」
サノスは無言でジントの言葉に耳を傾けた。
「お前は凄い奴だよ。だから、俺が振られるのは仕方ない。ずっとそう思ってた」
「僕からしたらジントの方が凄い人だけどね」
「まぁ・・・。恥ずかしい話、この旅の間はずっと大人の店に通い続けてた」
責任の一端はサノス達にもあるのだろう。
「けど、体は満足しても心がな。満たされなかったんだよ」
一時の快楽は得られても失ったなにかは埋まらなかったのだろう。
「昨日も誘われて乗って・・・。けど、どうしても2人の顔がちらつくんだ。俺、どうしたらいいんだ?」
サノスはその言葉に答えることができなかった。
「なんか、ごめん・・・」
「謝るなよ。チャンスはいくらでもあったんだ。それを逃したのは俺自身だ」
しばらく無言の空間が広がった。
「わりぃ。こんなこと言っても困らせるだけだよな」
そう言ってジントは自嘲気味に笑う。
「僕が言うのもなんだけど新しい恋を探すしかないんじゃない?」
「そうか・・・。新しい恋か・・・」
「ウェイトレスの娘はどうだったの?」
「リーシャのことか・・・。悪い娘じゃないってのはわかる。けど、どこか怯えっていうか諦めっていうか本心からは楽しんでなさそうな感じを受けた」
きっかけを作る為にアマンダがお金を払ったのだ。
普通の状態なら断られてもおかしくない。
だというのに、乗ってきたということは何か事情があるのかもしれない。
「そこを聞き出すのはジントの役目じゃない?」
「そうだな。その通りだ」
「とりあえずは今日の謁見を乗り越えないとね」
「そうだな」
取りあえずは今日の謁見を無事に終わらせる。
行動を起こすのはそれからでも遅くはない。
「よし。飯でも食うか」
「そうだね。僕は2人を呼んでくるよ」
そう言ってサノスは自分の部屋に戻った。
2人はまだ眠そうだが起こして準備をさせる。
「おはよう」
朝食の席で挨拶を交わす。
「あれ?ジント。何かあった?」
カノンがそう聞く。
「おう。心の整理がついたからな」
「そう。ならいいわ」
あっさりしたやりとりではあるがジントは完全に吹っ切れたようだ。
この様子ならリーシャという娘ともうまくいくかもしれない。
朝食を食べサノス達はそのまま迎えの馬車が来るまで食堂で待機していた。
「お待たせしました」
そう言って御者の青年が声をかけてくる。
「王城までお願いね」
「はい」
サノス達は馬車に乗り込み平民街を抜け貴族街に入る。
確認の為に少し馬車は止められたがそのまま王城への道を進んでいった。
馬車は王城の門のところで停止する。
「到着しました」
馬車でこれるのはここまでだ。
後は歩いていくしかない。




