第八十八話
宿屋に戻り湯をもらって体を拭いて寝る準備をはじめる。
今日もサノスはアマンダとカノンと同じ部屋だった。
「アマンダ。どうしたの?」
「ちょっと待ってね。客人が来るはずだから」
そう言ってしばらく待っていると扉がノックされる。
アマンダが扉を開ければ食事処で見たウェイトレスの娘だった。
「来たわね。これ約束の・・・」
そう言ってアマンダがお金をウェイトレスの娘に渡す。
「それで・・・。私はどうしたら・・・?」
「隣の部屋にもう1人いるからどうするかは貴方に任せるわ」
「そうですか・・・」
そう言ってウェイトレスの娘は隣の部屋に向かっていった。
「今のは・・・?」
「もしかしてアマンダお金で買収した?」
「私はただきっかけを作っただけよ。どうなるかは2人次第ね」
あまり褒められたやり方ではない。
だが、きっかけを作っただけというのは本当なのだろう。
少々強引な気もするが接点を少しでも増やして仲を深めるという意味では成功していた。
3人は何となく隣の部屋に聞き耳を立てる。
2人がどういう関係になるか気になったからだ。
しばらく話声が聞こえていたが静かになる。
小声で「ダメだったのかしら?」と話し合う。
だが、ウェイトレスの娘が出ていく気配もなかった。
しばらくすると押し殺したような声が聞こえてくる。
「これって・・・」
「どうやら作戦は成功したようね」
「一安心かな?」
サノス達は壁から離れベッドに腰掛ける。
「向こうも盛り上がってるみたいだしこれで気にしなくていいわね」
「そうね」
「明日は謁見なんだけど?」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど・・・」
「ならいいじゃない」
そう言ってアマンダとカノンにサノスは押し倒された。
結局、朝方近くまで相手をさせられたサノスだったがそれは隣のジントも同じようだった。
その理由は隣からも声がずっと聞こえていたからだ。
寝ている2人を起こさないように部屋を出ると丁度、ウェイトレスの娘が出てきたところだった。
ウェイトレスの娘は気まずそうにしつつも会釈して去って行った。
少し遅れてジントが顔を出す。
ジントは気まずそうな顔をしていたが決意を固めるように言ってくる。
「少し話さないか?」
「そうだね」
サノスはジントの誘いに乗って宿屋の食堂に向かった。
お茶をもらってそれぞれ椅子に座る。
「俺はお前に言わなきゃいけないことがあるんだ」
そうジントが切り出してくる。
「実はずっとお前に嫉妬してた。2人の幸せを考えたら俺が引くべきなんだろうって」
サノスもジントが幼馴染である2人に未練があるのはわかっていた。
サノスがいなければ3人はくっついて幸せになっている未来もあっただろう。
だが、サノスは2人を手放すつもりはなかった。




