第七十六話
本調子でなかったサノスは宿で寝て過ごしていた。
アマンダとカノンに食事を食べさせてもらったりと色々お世話をしてくれる2人を見て幸せを実感していた。
起き上がれるぐらいになった頃にサノスは客人を迎えていた。
「調子が悪いのにすまないな」
「いえ。ネーネ師匠。僕も会いたかったですから」
「こちらの人はこの街の領主でフューゲル伯爵だ」
「君と会うのははじめてだね。色々、街の不祥事を解決してくれてありがとう。改めてお礼を言わせてもらうよ」
「そんな・・・。僕は自分の為に動いただけです。それに、実際に事件を解決したのはもう1人の僕ですよ」
「そうだが。君がいなければ事件が解決しなかったのも事実だ。誇っていい」
「ありがとうございます」
「体調が悪いところに言いにくいんだが・・・。もう1回、我々に力を貸してもらえないだろうか?」
「力をですか?」
「不死竜を討伐しなければ再びこの街を襲うだろう。だが、我々の持ちうる戦力では討伐は不可能だと判断された」
「唯一可能性があるのはサノス。君だ」
「ちょっと待ってください。酒を飲んだ状態のサノスに頼るとどうなるかお2人は知っているはずです」
「わかっている。わかっているが・・・。他に方法がないんだ」
ネーネとヒューゲルは苦痛に満ちた顔をしている。
大を生かすために小を犠牲にする。
それは為政者としては正しい判断だと言えるだろう。
「アマンダ。カノン。僕はこの話を受けようと思う」
「サノス?」
「僕が冒険者を目指したのはお爺ちゃんの話を聞いて誰かの力になれるような人物になりたかったからだよ。ここで引いたらずっと引け目を感じて生きていくと思う。それは嫌なんだ」
「わかったわ。サノスがそう決めたなら私はもう何も言わない。でも、絶対に無事に戻ってきてね」
「うん。ありがとう」
「我々にできるのは支援するぐらいだ。そこで、この剣を託したいと思う」
そう言ってヒューゲルは後ろに置いていた包みを渡してくる。
「これは・・・?」
「かつて英雄と言われた人物が使っていた愛剣だ。きっと力になってくれるはずだ」
サノスは受け取り包みを開けてみる。
その剣にサノスは見覚えがあった。
祖父であるアドルフが見せてくれた映像に何度も現れた剣だったからだ。
サノスは剣を握ってみる。
すると脳内に声が響く。
『作成者の一族と認証。剣のマスターとして登録します』
固まっているサノスにヒューゲルが話しかけてくる。
「何かあったかね?」
「この剣は意思を持っているのですか?」
「ほぅ。英雄殿からは剣が意思を持っていると聞いていたが君にも聞こえたのか。渡して正解だったようだ」
ヒューゲルは満足そうにそう言った。




