第七十五話
「くっ・・・。今世の俺も頑張って修行していたがやはり竜相手には厳しいか・・・」
前世のサノスが本気で動けば今世のサノスの魂を摩耗させ肉体にも致命的な損傷を与える。
だが、ここで不死竜を討伐しなければどちらにせよ街もろとも滅ぼそうとしてくるだろう。
「頼む。もう少しだけ持ってくれよ・・・」
前世のサノスは剣を強く握り聖水を追加して不死竜への攻撃を続ける。
「ぐっる・・・」
竜とは生命力の塊のような存在だ。
不死属性を持つ不死竜は他の竜より再生速度が遅いとはいえ、それでも人と比べれば頑丈で回復力も高い。
「ぐっらぁぁぁっ」
大きく咆哮をして不死竜が距離を取る。
「ちっ。気づかれたか」
サノスはついつい愚痴を言ってしまう。
もう少し深く傷をつけることもできた。
だが、あえて浅く傷をつけていたのには理由があった。
大したことのない傷を与えることで怪我が治らないことを気付かせたくなかったのだ。
ドラゴンキラーと聖水で傷をつけた部分は傷の再生を阻害する。
「ここで逃がせばより厄介なことになる」
そう言ってサノスは不死竜を追いかける。
だが、不死竜は冷静だった。
傷の再生を阻害するとはいえ、時間をかければ傷は治るのだ。
ならば、傷を治してから再び襲えばいい。
そう判断したのだろう。
森の奥へと逃げていく。
「ぐっ・・・。ダメか・・・。それに体と魂が限界か・・・」
前世のサノスは意識を素早く落とす。
今回は体と魂にかなりの負担をかけた。
下手をすると今世のサノスの魂が消滅してしまう。
それは前世のサノスとしても避けたかった。
サノスが目を覚ますと見慣れた宿屋の天上だった。
「あれ?どうなったんだっけ・・・?」
サノスは混乱している頭で状況を整理する。
「サノス・・・?」
「サノス。起きたの?」
「アマンダ・・・。カノン・・・。僕は一体・・・」
「不死竜を何とかしようとしたのは覚えてる?」
「うん。それで酒を飲んだ状態の僕を呼び出して・・・」
「酒を飲んだ状態のサノスは不死竜を追い払ったの。だけど、サノスはその後意識を失って・・・」
「そう。1週間も目を覚まさなかったの」
「そんなに・・・?」
「凄く心配したんだからね」
「ごめん・・・。でも、そうか。追い払っただけなんだね」
「まさか、もう1回、酒を飲んだ状態のサノスを呼び出すつもりじゃないでしょうね?」
「討伐できてないんだよね?竜は執念深いってお爺ちゃんがいってたんだ。プライドを傷つけられたならもう1回襲ってきてもおかしくないんだよ?」
「そうかもしれないけど私達にとってはサノス。貴方が大事なの」
「そうそう。それにギルドマスターや領主様が対応を検討してるからサノスが頑張る必要はないんだよ」
「そうなのかな・・・?」
「上が考えてるなら新人の私達に出番はないわよ」
「今はゆっくり体を休めよう?」
言われて気付いたが体中が熱を持ち痛みを訴えていた。




