第六十七話
「調査をするということなら役に立てるかもしれません」
「どういうことだい?」
「詳しくは酒を飲んだ状態の僕に聞いてください」
そう言ってサノスは酒を飲む。
「最近は頼ってこないと思ったらこれだ・・・」
「こっちのサノスは久しぶりね」
「そうね」
「話は聞いてたんだろ?」
「聞いてたよ。調査だけならなんとかなるだろ。早速動くぜ」
「ちょっと待った。前にも思ったけど酒を飲んだ状態の君は一体何者なんだい?」
「俺か?俺はこいつの前世って奴だな」
「前世って・・・。普通は死ねば魂が浄化されるはず。ここまで自由に動き回れるなんて聞いたこともない」
「だから、制約があるんだろ?俺の場合は酒を飲んだ時だけだ」
「君が規格外ってことだけわかったよ。悪いけど頼んでいいかい?」
「任せとけ」
そう言って酒を飲んだ状態のサノスは動き出した。
「ふぅん。1か月間、修行に明け暮れてただけあるな。これなら多少の無理も効きそうだ」
酒を飲んだ状態のサノスは状態を確かめつつ風魔法で擬態しつつ森の中を隠密行動していた。
「ふむ。やはり魔物の数はかなり多いな。浅い場所でこれだけいるってことは中層と深層はどうなっていることやら・・・」
サノスは素早く森の中を進む。
予想通り中層もかなりの数の魔物が生まれていた。
途中、野営している冒険者も見かけたがこれだけ魔物がいると野営も楽じゃないだろう。
いくら注意していても何度も魔物に襲われるはずだ。
ろくに休めないのだ。
調査が進まないはずである。
「とっ。ここからはもっと注意していかないとな」
サノスは深層に入り今まで以上に気配を消す。
瘴気が濃い方へ濃い方へ進んでいくと強者の気配を感じ取る。
「ふむ。今の俺じゃ討伐は難しいな。今回は調査ってだけだし気付かれないように動けばいいか」
異変の中心地にいたのは不死竜だった。
竜種というのはこの世界で最強の種族だ。
こんなのが居座れば魔物は危険を避けるために浅い層に逃げるだろう。
それに不死竜というのがまたまずい。
普通の竜種は自分の住みやすい環境に周辺を変えるだけだ。
だが、不死竜は自分の住みやすい環境にすると共に瘴気を周囲にばら撒く。
そうすれば魔物が生まれやすい環境が自然とできあがるわけだ。
「気付かれる前に撤収するか」
サノスは気配を殺したこの場を後にした。
途中、野営している冒険者が魔物に襲われていたがあの様子だと加勢する必要はないだろう。
今は原因である不死竜の情報を持ち帰るのが最優先だった。
討伐するとなればかなり大規模な戦力を展開するしかない。
酒を飲んだ状態のサノスも出番が増えそうだ。
それはあまり歓迎すべき出来事ではなかった。




