第六十三話
「ありがとうございます。ギルドマスター」
「あぁ・・・。そうか、まだ名乗ったことがなかったな。ネーネだ。ネーネと呼んでくれ」
「ネーネ師匠」
「師匠と言われるとなんだか恥ずかしいな。だが、悪くない響きだ」
「それで、ネーネ師匠。次は何を教えてくれるんですか?」
「そうだな。冒険者にとって一番大事なのは生き残ることだ。そこで、魔力を使った察知方法を教えてやろう」
「察知方法ですか?」
「そうだ。基本は習得させた体内に魔力を留まらせる方法と違いはない」
「では、すぐに覚えられそうですね」
「そうでもない。体外に出した魔力を留まらせるのは難しいんだ。そこで、少し裏技を使う」
「裏技ですか?」
「お前は風属性の魔法が得意だろう?魔力に風属性を混ぜて待機させる。やってみろ」
サノスは言われた通りに風が留まっているイメージで魔力を送り出す。
だが、風を留まらせるのは容易なことではなかった。
「これはまた、覚えるのに時間がかかりそうですね」
「そう簡単にできるならもっと広がっている技術だからな。だが、出来るようになればかなり役に立つはずだ。異物が入ってくれば察知できるようになる」
「なるほど・・・。確かに物にできれば大きな力になりそうですね」
「実際、私は先程の模擬戦でずっと使っていたからな」
どうやら攻撃を察知するのにこの技術を使っていたようだ。
「でも、察知できるようになっても迎撃は難しいんじゃ?」
「その通り。そちらも練習次第だが、まずは察知できるようになるのが先決だ」
「わかりました」
サノスは納得して練習を再開した。
ネーネは1人で魔法の練習をしているカノンの元に向かった。
「頑張っているな」
「私に出来るのは魔法ぐらいですから」
「そうか。だが、魔法を使える者は少ない。君がいることで大きな助けになっているはずだ」
「でも、サノスも魔法を使えますよ?」
「彼はどちらかというと剣士タイプだからな。しっかりと火力を出せる魔法使いとはまた少し違う」
「でも、酒を飲んだサノスは私なんかと比べ物にならないぐらい強いですよ」
「なるほど。性格だけでなく戦闘力もあがるわけか」
「そうなんですよね」
「だが、彼は酒を飲まない状態でも強くなろうとしているわけだ」
「努力家ですよね」
「努力しているのは間違いないな。だが、君も努力しているだろ?」
「そうですね。負けてはいられませんから」
「そういう気持ちが大事なんだ。実績ばかりを求めていると足元をすくわれるからな」
ネーネの言葉には重たい響きがあった。
実際、長命のエルフであるネーネは慢心から全滅したパーティーをいくつも知っているのであった。




